それは『バハムート ラグーン』。いたいけな少年であったプレイヤーの夢をことごとく打ち砕いた前代未聞のゲームです。当時女子学生であった筆者も衝撃を受けました。このたびWii Uのバーチャルコンソールで配信されたということで、あのトラウマを再び味わうべくプレイしました。
本作はスクウェア(現スクウェア・エニックス)が1996年2月にリリースしたスーパーファミコン用ソフト。NINTENDO64が1996年6月に発売されたので、スーパーファミコンの終焉期に出た作品となります。これまでのスクウェアのドット絵技術の粋が詰まった作品といっても過言ではなく、キャラクターのデフォルメとモンスターのリアルが融合した一種のアートとも呼べる作品だと筆者は捉えています。
■独特のシステムが採用されたシミュレーションRPG
本作はざっくり言うとシミュレーションRPGにドラゴンの育成がプラスされたゲーム。タイトルに「バハムート」とあるぐらいですから、それはもうドラゴンのオンパレード。とにかくドット絵で描かれたドラゴンがかっこいい!
シュミレーションRPGでありながら1つのユニットが4人パーティになっており、直接戦闘はコマンド入力でキャラクターの行動を指定できます。RPGをプレイする人なら馴染み深いシステムです。
パーティキャラもファンタジーRPGの鉄板ジョブが揃っていて、しかもそれぞれ立ちポーズが違い、デザインにはかなり気合が入っています。
■難易度は低め
パーティ内のユニットが戦闘不能になったらメニュー画面からアイテム等で復活させることも可能。メニュー画面での回復は何度でもOKなのでめったなことでは全滅しません。ドラゴンも強いので序盤はサクサク進みます。一般的に難しいと言われるシミュレーションRPGですが、本作はドラゴンの強化とユニット編成さえ間違えなければ比較的難易度は低め。シミュレーションが苦手な人の入門ゲームとしてオススメです。
■目指せドラゴンマスター
本作の最大の魅力はドラゴン育成。ドラゴンは手持ちのアイテムを食べさせて能力をアップさせていきます。基本的になんでも食べる!武器・防具・アイテム・本・なんかよくわからないもの…アイテム欄にあるものならどんなものでもエサにできます。成長にともなうグラフィックの変化も見ものです。
■ドラゴンと戯れる
優等生プレイするのもアリですが、パラメーター「?」をわざとアップさせて「うにうに」という謎の形態に変形させたり、一定のアイテムを与えて言葉どおりの「正体不明」なドラゴンにしたり、親しさを0にして「さびしいドラゴン」にすることも可能。主人公の愛竜サラマンダーを正統派に、サンダーホークやツインヘッドを異端派にするのが主流ではなでしょうか?
ドラゴンは個々の性格によって攻撃方法が変化し、好戦的なドラゴンなら直接攻撃が、慎重なドラゴンなら間接攻撃がメインになります。人間ユニットの攻撃ターンに協力してくれる時もあれば、無視したり、応援だけしたりと非常に人間臭く、見た目に反してとても愛らしいです。
戦闘中の行動はオート。「こい!」「いけ!」「まて!」のざっくりとした指示しか出せません。ドラゴンの意図せぬ行動に「ちがーう!」と叫びたくなることもしばしば。そんなままならぬところもカワイイ!そう思い始めたら立派なドラゴンマスターです。
■もはや公式が病気
本作は正統派ファンタジーでありながらホモキャラがいたり(しかもジイさん)、病弱で薬漬けのプリーストがいたり、心の中で意中の相手にストーカーじみた妄想をするウィザードがいたり、常に身体を掻いている(どこかはあえて詮索しない)ヘビーアーマーがいたり、公式が病気といわざるを得ない個性的なキャラクターのオンパレード。「こんな人が世の中にはいるのか…」と当時の少年少女に強烈な印象を残してくれました。まぁ最強(凶?)のキャラクターはシナリオにも関係してくるヨヨ王女だと思いますが…
■主軸は正統派、でも!
そして最後にシナリオです。シナリオ自体は竜の伝説を主軸とした正統派ファンタジー。しかし!主人公に感情移入した少年の夢を打ち砕く展開が待っています。ええ、プレイヤーは夢見ていたのです。戦竜隊の隊長として大空を駆け、世界を救い、美しい王女とラブロマンスを展開することを…!
筆者は女なのでさほどの被害を受けずに済みましたが、それでも主人公・ビュウの境遇に同情せざるを得ません。しかもビュウとヨヨの名前だけが変更可能という悪意アリアリなシステム!!ビュウを自分の名前に、ヨヨを好きな女の子の名前にしてプレイした男性は再起不能に陥ったことでしょう…。
でもそういうシチュエーションがお好みの方にはご褒美だったかもしれません。むしろ目覚めてしまった人がいないか心配でもあります。キャラクター付けといいシナリオといい、本作は時代が早すぎたと思います(笑)
そして子供にはわからない「大人なネタ」もちらほら。仲間うちでもおっとりしたヤツが既に「大人」だったとか、「たんすのアレ」とか「王女の???」とか、当時はかわいい想像をしていました、ええ。今やすっかり意味が分かる年になってしまいました。「おとなになるってかなしいことなの(byヨヨ)」
・スーパーファミコンにおけるドット絵の最高峰。
・シミュレーションRPGにドラゴンの育成がプラスされた独自システム。
・1つのユニットが4人パーティ。直接戦闘もコマンド入力でRPGっぽい。
・難易度は低め。シミュレーション入門としてオススメ。
・ドラゴンはエサを食べさせることで育成可能。いろんな形態に変化。
・ドラゴンにも個性がある!
・公式が病気を言わざるを得ない魅力的で個性的なキャラクターたち。
・そしてトラウマ展開。子供の頃にはわからなかった大人なネタもちらほら。
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かつて少年少女だったプレイヤーは『バハムート ラグーン』というゲームから多くのことを学びました。主人公がモテモテなのはギャルゲーだけ。人の心は流転する。一見おっとりしたタイプこそ進んでいる。自分に好意を寄せる女子力高めのジイさんと動物(竜)は裏切らない…etc.
シナリオ展開があまりにも衝撃過ぎてそこにばかり目がいきがちですが、ドラゴン育成やRPG寄りのシミュレーション、デザインの秀逸さも一見の価値アリの名作。Wii U VC化を機にプレイしてみてはいかがでしょうか?
Wii U バーチャルコンソール『バハムート ラグーン』はニンテンドーeショップにて800円(税込)で配信中です。
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■著者紹介
みかめゆきよみ
ゲーム好き、日本史好きの漫画家兼フリーライター。
ゲームはジャンル問わずなんでもござれ。難しければ難しいほど燃えるドMゲーマーです。
歴史・ホラー漫画、歴史コラム、イラストなど雑多に活動しています。
サイト「車輪の真上」
http://zwei.lomo.jp/syarin/
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