『ニンジャガイデン』シリーズといえば、繊細な操作技術を要求される高いアクション性と硬派な難易度設定で、幅広いアクションゲームファンから支持を得ている作品。本作『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』は、そんなシリーズのスピンオフにあたるもので、これまでの世界観を一新するアメコミライクな世界観が舞台。本編の主人公リュウ・ハヤブサを宿敵と狙うカミカゼ・ヤイバを主役に据え、次々現れるゾンビの群れを駆逐するぶっ飛んだ展開が繰り広げられていきます。
ヤイバはスラッシュ・パンチ・フレイルをつかったコンボ攻撃と掴み攻撃、ダッシュ(回避)、ブロック、カウンター攻撃を駆使した、スピード感ある荒々しい戦闘スタイルの持ち主。スラッシュアクションの名のとおり斬って斬って斬りまくり、ゾンビを圧倒していきます。また、ヤイバは特定の収集アイテムおよび、レベルアップで得られるポイントの分配でより強く成長、更なる攻撃技を習得できます。
回避やカウンターなども交えつつ、基本的にはボタン連打で攻撃を当て続け、瀕死の敵から「エグゼキュート」で処刑執行!アップグレードすれば連続で繰り出すことも可能で、タイミングよくボタンを押せば1体、2体、3体、4体と次々トドメをさせて気持ちがいいです。無敵状態になる技「ブラッドラスト」の使用に必要なゲージも溜まり、回復アイテムもドロップするので、より優位に戦闘を運べます。
全体の操作感覚は、「ニンジャガイデン」シリーズにあるような細やかで繊細な駆け引きとは異なる荒っぽさがあります。暴れ馬を制御するような、といえばいいのか、戸惑いを覚える人も少なくないかもしれません。
ヤイバのキャラクターと同じく、挙動は豪快で大胆、ロックオン機能がない代わりに自動追尾がキツく、クセがあります。その分画面全体を使って暴れまわることが可能で、そこが面白くもあるのですが、残念なことにズームアウトとズームアップの2種類から設定できるカメラアングルは自分で操作することができず、エフェクトの派手さや敵の数の多さ、スピードの速さ、攻撃時の予期せぬ追尾といったことから、自キャラを見失いやすいのが珠にキズ。場面によっては、画面の遠い距離で小さいヤイバが小さいゾンビとチマチマ戦わざるを得なかったり、アクションゲームでは重要な情報であるお互いの挙動や距離感がよく判断できないことも多く、もどかしさを感じてしまいました。
ステージの要所要所では足場を渡るパルクールアクション「トラバース」が発生します。QTEと一般的なパルクールを足して割ったような印象で、ジャンプや掴みなどの操作を要求されつつも半自動化で進むのが特徴的。自分のタイミングでじっくり足場を進んでいくことができない点は人を選ぶかもしれませんが、緩急があり、カッコイイ演出を見ることができます。
本作で特徴的なのは、ゾンビの体を武器化する「ゾンビ武器」と、属性概念を用いた強力な攻撃の数々です。中型クラスなどの一部ゾンビに対して掴み攻撃をおこなえば、体の一部を引きちぎって即席の武器にすることができます。これら「ゾンビ武器」は、耐久度こそ低いものの威力は強力で、通常攻撃では怯ませることができない相手も怯ませることができるうえ、「炎」「胆汁」「雷」のいずれかの属性が備わっている場合は、相手との属性相性によって非常に強力な属性ダメージを与えることも可能となります。
例えば、炎属性の攻撃で雷属性の敵や物体を攻撃すれば火柱が立ち登り、激しい落雷が周辺一帯のゾンビたちに襲い掛かったり、雷属性と胆汁属性の組み合わせでは殴った相手や物体が瞬時に結晶化し、パンチで軽々と粉砕できるようになります。威力に違わず絵面もド派手なため、超必殺技でも放っているかのような気持ちよさがあります。
純粋な攻撃・防御といったアクションそのものも勿論大切なのですが、本作で何より大切なのは、属性攻撃のできるゾンビ武器を、どこで手に入れて、如何に最適な場面で使用できるかにあると感じます。というのも、本作では、何十体と群がって押し寄せるザコゾンビに加え、打たれ強く攻撃力も高い、危険な中型ゾンビの両方が同時に出現するのが普通です。できるだけ早く中型ゾンビに集中できる環境を生み出す必要があるのですが、通常攻撃だけでは間引くにも時間がかかり、ふと気づけば防戦一方で立ち行かなくなる事も少なくないため、ともすれば即死級の威力をもつゾンビ武器・属性攻撃の有用性は計り知れないのです。それさえ出来れば、多少操作が暴れてしまってもフォローが効くほど進行が楽になります。
筆者は難易度ハードでゲームをはじめたのですが、素の状態では何度も苦汁を舐めさせられた相手も、属性攻撃を使用すればボタン連打だけで倒せてしまった経験があります。ゾンビ武器を手に入れてもすぐに使わず、然るべき時まで温存する戦略も時には必要といえます。逆に、力押しする場合はかなりの腕が求められます。自信のある方は、あえて茨の道を進むのも面白いかもしれませんよ。
細かい点で気になる箇所はあるものの、ハック&スラッシュ型のわらわら感と、緊張感あるスリリングなバトルの両方を兼ね備え、「ゾンビ×忍者」、「アメコミ」、「やりたい放題」といったポイントはガッチリと押さえたユニークなアクションゲームです。
難易度は複数から選択できますが、総じて難しいタイトルであるため、自信のない方は迷わずイージーモードの選択がオススメ!システムの異なるアーケードスタイルの横スクロールアクション「NINJA GAIDEN Zモード」も搭載しているので、本編クリア後も引き続き遊ぶことができるのは嬉しいところ。「ニンジャガイデン」シリーズとはまた一線を画したタイトルなので、シリーズ未経験であっても問題なく楽しめます。気になる方は遊んでみてください。
★こんな人にプッシュ★
・ゾンビやアメコミの雰囲気が好きな人
・アクションゲームが得意な人
・細かいことを気にしない人
★その他備考★
・お茶目なゾンビたちがどこか憎めない
スラッシュアクション『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』はPS3とXbox 360で現在好評配信中。価格は7,800円(税抜き)。ダウンロード版はPS3版が6,762円(税抜き)で、Xbox 360版が6,800円(税抜き)です。
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Ami
元・ゲームグラフィッカーのボス戦好きなアマゾネス。ヤイバの刀、ものすごい切れ味だ……。
国産から海外、RPGからFPSまでなんでもござれの雑食系。とりあえず、ゲームができてればそれで幸せ。
ブログ:http://blog.livedoor.jp/xxxplus/