この一連のツイートの発端は、有名な映画監督であるヒッチコックの作品について話し始めたことでした。
ヒッチコックは英国での後期と米国でのサスペンスもので「巻き込まれ型」のドラマ展開を採用した。それは観客と主人公との距離感を近づけて、共感させる為である。プロの刑事や訓練されたスパイではなく、観客と同じ一般人がある日、大きな事件に巻き込まれる。だからこそ、観客は感情移入できる。続く
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
ヒッチコックが制作した巻き込まれ型のドラマというのは、観客に共感をさせるためだと氏は考えています。自分で操作できるゲームはそういった共感において有利なものの、しかし『メタルギアソリッド』シリーズの主人公であるスネークは歴戦の英雄であり大きな設定や複雑な過去があるため、プレイヤーとキャラクターの間に大きな溝ができてしまいます。
ゲームで言うなら、常にカメラが自分視点である「FPS」がそれに当たる。ゲームは映画とは違い、自分で行動が可能。だから主人公に得意な設定や複雑な過去がある程、プレイヤーとの距離は開く。スネークの様な歴戦の英雄も然りである。その水と油様なプレイヤーと主人公の距離を如何に埋めるか?続く
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
その水と油のような間柄をどうするべきか。小島氏は、「主人公の感情にプレイヤーを同じ位置に持ってくる」ようにし解決を試みているとのことです。
主人公の感情にプレイヤーを同じ位置に持ってくる。「MGS」ではいつもそこに拘っている。「MGS2」で雷電が現れたのもそれ。「PW」で自分が創ったMBが「GZ」で悉く破壊され「TPP」で復讐を使うのもそれ。ゲームを通して、プレイヤーの記憶と主人公の経験、記憶を重なるようにしている。
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
どういうことかというと、プレイヤーが見て感じたものとゲーム主人公の心境がリンクする状況を作り出すということでした。たとえ大きな設定を背負った主人公だとしても、プレイヤーが同じ感情を抱けば、その間にある溝が埋まる。そういった試みを過去作で行ってきたそうです。
逆に過去の作品を経験していない、あるいは主人公の過去を詳しく知らないプレイヤーの為に「TPP」では9年間の昏睡ラグが用意されている。「PW」での事や「GZ」の事を知らなくても自然とゲームに入れるはず。「スナッチャー」のギリアンは記憶喪失、「ポリスノーツ」は浦島太郎状態なのもそれ。
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
もちろん、過去の作品を経験していないプレイヤーのための設定(「TPP」においてスネークが9年間も昏睡していたという設定)も用意されており、初心者でも自然とゲームに入れるはずとも語っています。
ただし、「MGS」ユーザーは特別でもある。27年に及ぶスネーク達の苦難の旅路をリアルタイムにプレイヤーが追体験しているところ。「MGS」を数作プレイしたことのあるプレイヤーはスネーク達と共に歳を重ね、既にスネークの記憶と感情を共有しているはずだ。そこが長寿シリーズの強みでもある。
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
とはいえ、『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』においてはその今までの積み重ねを最大限に活かす考えのようです。プレイヤーはスネークたちに共感し、作品が出るたびに同じく歳を重ね、もはや同じ場所に立っていると言えるのでしょう。
そんなスネーク達が大好きで堪らないファンたちに、英雄である我らがスネークに、「TPP」ではゲームを通じて、プレイヤーと共に納得して「墜ちて貰う」。物語の未来(終焉)は決まっているのでそこに向かうしかない。ここが最も難しいところだが、悪人を描くのではない、悪に墜ちる英雄を描くのだ。
小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2014, 6月 16
その共感を活かし、『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』ではゲームを通じて、プレイヤーとスネークが共に、納得して「墜ちて貰う」そうです。
今回の作品は、過去作の設定によって既に結末の大筋は決まっています。それがプレイヤーやスネークにとって悲しい結末になるのはまず間違いないため、今まで培ってきた共感の力を駆使し、納得できる形で悪に堕ちることを描く。小島氏が『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』において尽力したことのひとつが、その結末なのです。