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こんにちは。6月10日~6月12日に米国ロサンゼルス市のLos Angeles Convention Center(LACC)で開催されたE3(Electronic Entertainment Expo)に取材に行ってきました。ここでは総括的な報告とさせて頂き、発表されたゲームソフトに関しては既に記事にされているものがたくさんありますのでそちらをご覧になってください。
■ E3(Electronic Entertainment Expo) ― その意義について復習してみます
米国ESA(The Entertainment Software Association:日本のCESAに匹敵)が運営する世界最大のゲーム見本市です。出展社約200社、100か国以上から48,900人が参加したとの発表がありました。東京ゲームショウやドイツのGamesConが25万人前後の入場者と考えると、E3は世界最大ではないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、E3は業界関係者しか入場できないという意味では世界最大の「ゲーム見本市」なのです。
宿泊していたホテルで朝の現地テレビニュースを見ると、「E3があるので渋滞に気をつけて」というアラートが出ていましたし、ロサンゼルス市にとっては大きなイベントであったことは間違いありません。一時ロサンゼルスからE3開催地を移転するのではという噂もあったのですが、ロサンゼルス市に与えるE3の経済効果は絶大で、市からこれからも続けてほしいと懇願されているという話を聴いたことがあります。
E3の目的は、ハードメーカーを含む北米のパブリッシャーが年末商戦に向けてメディア、リテイラー(小売店)などのバイヤーに対して商品をアピールするためのもので、これに合わせて各社が大きな発表を行います。ここで大体のリアクションが見られるのである意味「受注商談会」です。各社の大きなブースの中には商談スペースがあり、ここでコッソリ外には出していない映像やゲーム画面を見せることもあります。(こう言ったミーティング形式をクローズドアと言います。)
欧米の年末商戦が9月からと考えれば、9月または10月に行われる東京ゲームショウを全世界に向けて行う発表を行うにはタイミングが遅いというのも頷けます。「そもそもE3とは」という話が長くなってしまいました。それではE3 2014の私なりの総括をしたいと思います。
■ 各社のPress Conference
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ショー開幕前日の6月9日にはハードメーカーであるMicrosoft、SCEAのみならずUbisoft、EAのプレスカンファレンス(記者会見)がありました。昨年から任天堂はカンファレンス形式を取らず、動画による「Nintendo Digital Event」という形で発表を行っています。こちらはショー開幕当日10日朝9時から行われました。
私は今回プラットフォーマーのカンファレンスに行ってきたのでまとめてコンパクトに報告しますので情報が大枠である旨ご容赦ください。
(1) マイクロソフト ― E3 2014 Xbox Media Briefing
6月9日9時30分よりロサンゼルス市内The Galen Centerにて行われました。
定番シリーズの『Forza Horizon 2』、『Fable Legends』、そして過去の『Halo』シリーズのリマスターパックの『Halo: The Master Chief Collection』などの発表はもとよりサードパーティの主力ソフトも合わせて発表されました。
私が驚いたのは『SUNSET OVERDRIVE』で、『Ratchet & Clank』シリーズや『Resistance』シリーズを開発したInsomniac社がXbox Oneエクスクルーシブタイトルを制作していたというところで、Insomniac社はソニーのお抱えで、他のプラットフォームとは契約しないだろうという日本人的発想は固定概念を持っていたなと反省していたところです。マイクロソフトにはなかったポップな世界観を供給してくれるという意味ではマークすべきタイトルでしょう。
また、カプコンのXBLA向けタイトル『Super Ultra Dead Rising 3 Arcade Remix Hyper Edition EX Plus Alpha』の紹介のうまさは感心しました。世界観やゲームプレイに重きを置きがちな日本のメーカーですが、こういうアプローチはぜひ取り入れていきたいところです。
マイクロソフトのカンファレンスはいつものことながらプレゼンと発表の流れが非常にうまく、コンパクトに90分でいろいろな情報をまとめ上げていました。新ハードが発売された後のためそのハードに対するソフトウェアの発表に注力していましたね。
(2) SCEA ― Sony E3 Press Conference
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6月9日18時よりロサンゼルス市内Los Angeles Memorial Sports Arenaで行われました。
すでに定番のシリーズ最新作『Little Big Planet 3』や、『Uncharted 4』はもちろん、『The Order: 1866』、フロム・ソフトウェアの開発する『Bloodborne』などのファーストパーティタイトルに加え、グラスホッパー・マニファクチュア&ガンホー・オンライン・エンターテイメントの『LET IT DIE』などPS4でしかプレイできない独占タイトルの紹介がありました。
ちなみに、Warner Bros. Entertainmentの『MORTAL KOMBAT X』の映像プレゼンは振り切ったバイオレンスというものが如実に衝撃的か思い知りました。GTAを最初に見た時もそうでしたが、振り切るということがエンターテインメントの醍醐味なのだと考える反面、日本開発はここを目指しても文化的に限界があると感じました。
また、ソニーは「PS Now」サービスのアップデートをしてくれました。7月31日のβ開始時には『God of War Ascension』、『Metal Gear Solid V Ground Zero』、『Ratchet&Clank Into the Nexus』などのタイトルがプレイできるとのことでした。北米のインフラでどれだけクラウドゲーミングが動くのか私も興味があります。
残念ながら、期待した「Project Morpheus」の価格や発売日などはアップデートがなかったのですが、日本で発売されている「PlayStation Vita TV」が「PlayStation TV」という名前で北米発売と発表がありました。価格は99ドルです。
ソニーはいつもながらカンファレンスが長いです。時差ボケのせいもあるかもしれませんが、中だるみを否めません。マイクロソフト同様ハードローンチ後なのでソフトに注力していたのは既定路線としても、このカンファレンスの長さが圧倒的なタイトル群と印象付けたとすれば戦略の勝利と言えます。
(3)プラットフォーマーカンファレンスの総括
ソフトウェアフォーカスのカンファレンスだったとの評価がたくさん聴かれます。これは当たり前の話で、ハードを発売した直後にプッシュするのはソフトウェアでしかありません。ただ、近年のオンライン機能の複雑化に伴い、セットトップボックス的な要素やソーシャル性サービスにも焦点を置いてきた各ハードメーカーだったので、とても新鮮な気がしました。
任天堂がNintendo Digital Eventでたくさんのソフトを紹介していたのは業界的にもユーザー的にも好意的にとらえられています。任天堂はハードメーカーである前に優良ソフトメーカーであるという定評があるからです。ゲームハードはゲームソフトウェアがあっての箱で、遊びたいソフトがあれば出回るという当たり前の話です。北米では、カジュアルに寄りすぎて(ゲームの中身は決してカジュアルすぎてはいないのですが)ユーザー流出の歯止めが利かないと評価されている任天堂ですが、『Devil’s Third』や『BAYONETTA 2』などハードコアの回帰もきちんと押さえていましたね。
いずれにしても、私の知っている正常進化版E3でした。ソフトウェアがプッシュされてこそのゲーム業界です。ただ、過去と違うのは、任天堂を除く日本のソフトメーカーのプレゼンスの低さでしょうか。
■ Expo会場: 各社展示ブース
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ソニー、マイクロソフト、任天堂はさすがのソフトウェアラインナップで会場をにぎわせていましたが、もちろんソフトウェアメーカーもEA、Activision、Ubisoftを始め抜群のタイトル数でごった返していました。
日本のメーカーは「元気がない」のではなく「タイトルがない」と感じました。モノを作って発売しなければ勝負になりません。また、E3でブースを構えるには莫大な費用がかかります。この莫大な広告宣伝費を使って回収できるほどのタイトル群を持っていなければブース自体貧相なものになってしまいます。
ちなみに、E3会場での大きなブースを持つためのコストは、日本の皆さんが思っている金額ときっと桁が違います。3日間でコンソールタイトル1本を開発できるくらいの金額を投じなければいけないのです。それならば、その金額でタイトルを一本作った方がいいと感じてしまうのは私だけではないはずです。
今年Bandai Namcoはショー会場でブースを出しませんでした。ショー会場の2階に商談用およびデモプレイ用のミーティングブースを出していて、私にはとても好印象でした。
そう、E3はある意味「見栄」でもあるのです。しかしながら、飾るものが少ないショウケースも結構寂しいものです。来年のE3は怒涛の日本ソフトラッシュであって欲しいと強く感じました。
■ 最後に ―来年のE3は?
E3は「北米のゲーム市場が一目でわかる展示会」だというのはもはや当てはまらなくなりました。最近の北米市場を物語るMMOやFree to Playの展示がほとんど見られなくなったからです。
オンラインで逐次リリースしたりプロモーションしたりできるパブリッシャーにとっては、小売店に対するアピールは必要ないですし、メディア向けの発表の場所だとしてもE3はお金がかかるだけで費用対効果は見込めないのです。
従って、小売店に売ってある程度の開発回収が見込める「コンソール」特化型展示会になりつつあります。
E3 2015 は今年同様で米国ロサンゼルス市のLos Angeles Convention Center(LACC)で6月16日~6月18日に開催が決定しています。コンソール特化型だからこそ来年は日本メーカーに奮起して戴かないといけません。