今回は、1995年に任天堂からスーパーファミコンで発売されたアクションゲーム『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』の音楽についてご紹介します。
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『スーパードンキーコング』シリーズの2作目となるこの作品は、主人公のディディーコングとディクシーコングが、さらわれたドンキーコングを助けだすため、クレムリン島を舞台に大冒険を繰り広げます。『スーパードンキーコング』シリーズは、スーパーファミコンとは思えないほどリアルで美しいグラフィックが当時大きな注目を集め、人気を博しましたが、音楽も非常に美しいものが多いです。
『スーパードンキーコング2』の全作曲を担当したのはDavid Wise(デビッド・ワイズ)氏で、彼の才能が遺憾なく発揮された名曲群が詰まっています。僕がこの作品の音楽を素晴らしいと思う理由は、とにかくどの楽曲も、雄大な自然を描いたステージに驚くほどぴったりマッチしていて、情景を豊かに彩っているという点です。かつ、どの楽曲もメロディアスなものが多く、耳に気持ちよく馴染み、ゲームを盛り上げてくれます。
また、本作の音楽で特徴的なのは、「自然の環境音を楽曲の中に入れている」という点です。海賊船の甲板がきしむ音、吹きすさぶ雨風の音、溶岩が煮え立つ音、鳥のさえずりなど、雄大な自然に存在するさまざまな環境音を楽曲の中に織り交ぜることで、臨場感を高めているのです。
僕は今まで色々なゲームをプレイしてきましたが、これほどまでに心に刺さる名曲が多い作品もなかなか無かった気がします。メロディも、数回聴くだけで口ずさめてしまうほどよく出来ていますよ。では、『スーパードンキーコング2』で僕がおすすめな楽曲を、いくつかご紹介したいと思います。
■Flight of the Zinger
まずは、蜂の巣の中を冒険する「ハニーアドベンチャー」ステージの「Flight of the Zinger」。重厚なベースラインと、アップテンポに奏でられるピアノのハーモニーが気持ちいい1曲です。
■Disco Train
続いては「コースター レース」ステージの「Disco Train」。トロッコに乗って夜の遊園地を駆け抜けていくというステージなのですが、シチュエーションにぴったりの疾走感があります。楽曲の中には、絶叫コースターに乗っているような女性の叫び声がサンプリングされて入っているというのも面白いですね。
■Forest Interlude
次は、「きりのもり」ステージなどの森ステージで流れる楽曲「Forest Interlude」。ふわふわした幻想的かつ美しいメロディが堪能できますよ。鳥のさえずりが断続的に入っているのも特徴的です。
では続いて、本作の中でも僕が特に好きな3曲をランキング形式でご紹介したいと思います。(あくまでも僕の主観によるランキングになりますので、ご了承ください)
■第3位:Mining Melancholy
まず第3位は、「タルタルこうざん」ステージをはじめとした、鉱山ステージの楽曲「Mining Melancholy」です。鉱石を採掘するかのように規則的に響く、透明感のあるパーカッションがとても心地いいです! ちなみに、『スーパードンキーコング2』のサントラにはなぜか未収録となっています。残念無念。
■第2位:Hot-Head Bop
続いては第2位!「ようがんクロコジャンプ」ステージの「Hot-Head Bop」です。ストリングス調の音色とピアノで織りなされる、美しくもせつない旋律がとても耳に残ります。ボコボコという、溶岩が沸き起こる音が曲中に入っているのも印象深いですね。
■第1位:Stickerbrush Symphony
そして第1位!「とげとげタルめいろ」ステージの「Stickerbrush Symphony」。イバラでおおわれた迷路ステージで流れる楽曲ですね。これは『大乱闘スマッシュブラザーズX』で、なるけみちこ氏によってアレンジされていましたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。切なげに響く木琴のリズムや、ピアノとサックス調の音色で奏でられる神秘的なハーモニーが印象深いです。「とげとげタルめいろ」はわりと難易度の高いステージなのですが、美しい音楽のおかげで、諦めずに何度でもチャレンジすることができました(笑)。
あと、『スーパードンキーコング2』のサウンドについてぜひ書いておきたいことがあります。それは「敵にやられた時に流れるジングルは、各ステージごとにアレンジが全て違う」ということです。
『スーパードンキーコング』1作目では、敵にやられた時のジングルはどのステージでも同じだったのですが、本作では、各ステージの楽曲の雰囲気にあわせて、敵にやられた時のジングルが個別に作られているのです。テンポの早い楽曲の時はテンポの早いジングルに。ゆったりした楽曲の時はゆったりしたジングルに…という風に変化するのです。あまりにも自然すぎて気づきづらいんですけど、この芸の細かさは本当にすごいと思います! デビッド・ワイズ氏のこだわりは半端じゃないですね。この仕様によって、ゲームへの没入感がより一層高まります。
『スーパードンキーコング』シリーズは3作目まで出ていますが、すべてWiiおよびWiiUのバーチャルコンソールで配信されています。20年前の作品とはとても思えない、まったく色あせない面白さがありますよ。僕は発売当時に3作品とも相当ハマって、コンプリートクリアしましたが、今でもふと思い返した時に遊びたくなるんです(笑)。デビッド・ワイズ氏による数々の名曲群もたっぷり味わえますので、未プレイの方は、ぜひ遊んでみてくださいね。
ちなみに、任天堂公式サイトに掲載されている社長が訊く『ドンキーコング リターンズ』によると、任天堂社長の岩田聡氏も『スーパードンキーコング』の音楽は印象深いものだったそうで、iPodに同作のサントラを入れ、よく聴いているのだそうです。ある意味、『スーパードンキーコング』の音楽の良さは、岩田社長のお墨付きだと思いますね(笑)。
連載第2回でも少し触れましたが、『スーパードンキーコング』シリーズのサントラはどれも数万円のプレミアがついていて、とても残念に思います。せっかく素晴らしい音楽がたくさんあるゲームなのに、もったいないです…! 願わくば、適正な価格でサントラが再販されるか、ダウンロード配信されるといいですね。その際、できれば『2』のサントラには、なぜか未収録だった「タルタルこうざん」の音楽を追加してもらえたら嬉しく思います。
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hide / 永芳 英敬
ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。最近WiiUを購入して、惑星ミラを調査中!
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