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『夏空のモノローグ』は、2010年7月29日にアイディアファクトリーからプレイステーション2で発売された恋愛アドベンチャーゲームです。2013年3月20日には、プレイステーション・ポータブル版『夏空のモノローグportable』が発売されました。
『夏空のモノローグ』の舞台は、海に近い田舎町・土岐島(ときしま)市。この街で、主人公の女の子、小川葵(おがわ・あおい)を中心にした物語が展開されていきます。
葵が所属する土岐島高校の科学部。そのメンバーたちが、ひょんなことから、「7月29日」という1日をループすることに。無限にループし続ける時間の中で、メンバーそれぞれが自らの抱える課題や問題に向き合い、悩み、苦しみながらも成長していく過程が丁寧に描かれています。
そして、この作品の魅力を更に高めている要素が音楽になります。僕はこれまでいろんなゲームに触れてきましたが、この作品の音楽の良さには正直言って驚きました。僕の今までの人生の中でも特にお気に入りの、心に残っている作品です!
本作の音楽は、全体的にピアノの繊細な音色を主体とした、あたたかみと切なさを帯びたサウンドになっています。音楽だけでも素敵なのですが、ゲームをプレイしながら聴くと、より心にじんわり沁み渡ってくるので、ぜひゲームをプレイしながら聴くことをおすすめしますよ。
それでは、『夏空のモノローグ』の楽曲の中で、オススメなものをいくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います。
■「ナツソラ」
作曲家・安瀬聖氏と歌手・mao氏のユニット、cocua(コキュ)が手掛ける、オープニングムービーで流れる歌です。夏の青空のようにさわやかな、アップテンポな歌で、とても元気をもらえますよ。僕は、このゲームをプレイするたびに、毎回必ずオープニングムービーをスキップせずに観て、歌を聴いていたくらいお気に入りの楽曲です。
■「夏空」
タイトル画面で流れる、しっとりしたやさしいピアノ曲です。ちなみに、タイトル画面にはとあるステキな仕掛けがあるのですが、それはゲームを進めていくとお分かりになることでしょう…!
■「涼風吹く通学路」
タイトル通り、通学路のシーンで流れます。フルートの音色がさわやかな風のように響く、心地よい1曲です。
■「茜の坂道」
夕焼けの景色が目に見えるかのような、穏やかな楽曲。ゆったりしたフルートの音色と、落ちついたギターのハーモニーがやさしく奏でられます。
■「月明かりを抱いて」
個人的には、『夏空のモノローグ』の楽曲の中で一番のオススメです!! 夜のシーンでよく流れますよ。月夜の下で、ゆっくり時間が流れていくかのように響く、穏やかでやさしいピアノが印象的な1曲です。個人的には、寝る前にこの曲をサントラで聴くと、とても心地よく眠れます(笑)。
■「科学部カプリッチオ」
個性的すぎる科学部の部長・沢野井の暴走シーンなどで主に流れる楽曲。ビッグバンドのような賑やかな曲調が、楽しい雰囲気を盛り上げてくれます。
■「閉ざされた心」
主にシリアスなシーンや哀しいシーンで流れる楽曲です。ピアノと木管が儚げに響き、心をきゅっと締め付けてくるような切ない感情を、音楽で雄弁に演出します。
■「止まない雨」
葵が不安になってしまう時などに流れるピアノの楽曲。途中から入ってくるチェロの重々しい響きが、葵のつらい感情をうまく表現しています。
■「想いを重ねて」
想い人への告白など、大事なシーンで流れます。あふれ出す想いを応援するかのように響く、ピアノと弦のハーモニーがとても綺麗で美しい楽曲です。
■「夏空のモノローグ」
エンドロールで流れるしっとりしたバラードです。オープニング曲「ナツソラ」と同じcocuaが手掛けているこの楽曲は、愛しさあふれる想い人への恋心を、まっすぐ高らかに歌い上げています。
『夏空のモノローグ』の音楽は、今回ご紹介した以外の楽曲も含めて全体的にクオリティが高く、ゲームクリア後、普段の生活でも繰り返し聴きたくなるほど耳になじむものが多いです。
本作は、ジャンルとしては「乙女ゲーム」にあたり、主人公キャラクターは女の子で、恋愛対象になるのは男性キャラクターになります。しかし過度に甘々なシーンはなく、一般ゲームと同じ感覚で遊べるので、ぜひ男性も偏見を持たずにプレイしてみてもらえたらと思いますね。僕は友人の女性から勧められてプレイしたのですが、”人のあたたかさ”がとても丁寧に描かれていて、素晴らしい作品でした。今も深く心に残っています。
この作品は、「人生にちょっと疲れてしまった」という方に特におすすめです。長い人生、時にはちょっと疲れてしまうときもあるでしょう。イヤになってしまうこともあるでしょう。僕は数年前、人生に少し疲れてしまった時があったのですが、そんな時にこの作品と出会って、「ああ、やっぱり人のあたたかさっていいよな」と再認識することができました。心に溜まったモヤモヤを、すーっと洗い流してくれるような素敵な作品でしたね。
魅力的なキャラクターやシナリオもさることながら、人の感情に寄り添った、丁寧で心に響く音楽が物語を盛り上げてくれます。ご興味をお持ちの方は、ぜひ触れてみてくださいね!
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【演奏会のおしらせ】
『夏空のモノローグ』の演奏会、「Concert under the Summer Sky」が、2015年8月1日(土)に開催されます!
この演奏会では、今回ご紹介した『夏空のモノローグ』の全楽曲と、スペシャルアレンジメドレーが演奏されるそうです。『夏空』ファンの方はもちろん、ゲームは未プレイだけどちょっと気になる!という方も、ご興味をお持ちの方は足を運んでみてくださいね。僕も会場にお伺いする予定です。詳しい公演情報は、「Concert under the Summer Sky」の公式サイトをご覧ください。
<概要>
■日時 2015年8月1日(土) 13時半開場、14時開演予定
■場所 小松川さくらホール 多目的ホール
■入場料 無料(全席自由)
■プログラム
『夏空のモノローグ』作中で使用された19曲(OP・ED含む)
+スペシャルアレンジメドレー 全20曲演奏予定
※本企画は有志ファンによる非公式のイベントです。
演奏に際しては権利者より許諾を得た上で実施されます。
※本演奏会は事前および当日のチケット、整理券の配布等は行いません。
当日、指定時刻以降にご来場の方から順に列を作り、入場して頂く形となります。
会場は300席以上が用意されていますが、万が一満席となった場合はご入場頂けません。
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hide / 永芳 英敬
ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会レポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『夏空』で一番好きなキャラは部長!
[Twitter] @hide_gm
[ブログ] Gamemusic Garden