2016年1月より放送がはじまるテレビアニメ『シュヴァルツェスマーケン』は『マブラヴ オルタネイティヴ』、『トータル・イクリプス』といった『マブラヴ』シリーズと同一の世界観を持った物語だ。原作シナリオは内田弘樹によるライトノベル。美少女が多く登場する一方、ハードでシリアスな世界観が多くのファンを生み出している。
2015年11月には先行する形でPCゲームの前編である『シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章』(全2作)がリリース。間を開けずにテレビアニメの放送がスタートとなる。
今回話を聞いたのは音楽を担当するEvan Callさん。2012年からElements Gardenで活動をはじめ、壮大なアレンジングやシンフォニックメタルサウンドで注目を集める作曲家の一人だ。『シュヴァルツェスマーケン』の世界観と高い親和性を持った彼の音楽のルーツなど、今までほとんど明かされてこなかったEvanさんの素顔に迫った、初の単独インタビューだ。
[取材・構成=細川洋平]
テレビアニメ『シュヴァルツェスマーケン』
http://schwarzesmarken-anime.jp/
2016年1月10日毎週日曜深夜1時5分テレビ東京ほかにて放送開始
■アメリカの大学卒業後、観光ビザで日本に来ました
ーまずはEvan Callさんがなぜ日本で音楽の仕事をするようになったのか伺いたいと思います。そもそも日本のアニメに興味を持つきっかけとなった作品は何だったのでしょうか。
Evan Callさん(以下、Evan)
子どもの頃は『ポケモン』とか『デジモン』とか、日本のアニメ好きの友だちから教えてもらって見ていました。最も影響を受けたのは『サムライ7』(2004年・GONZO)です。それにハマって日本のアニメが好きになりました。
ーElements Gardenに所属するに至った経緯は?
Evan
すごく偶然だったんです。アメリカでバークリー音楽大学を卒業した後、ハリウッドに行って映画音楽をやるか悩んだのですが、もともと好きだった日本のアニメやゲームはジャンルも豊富なので、成功できれば幅広く楽曲が作れるかなと思ったので、観光ビザで来ました。ただ3ヶ月間以内に仕事を見つけないと観光ビザは切れてしまうので、音楽の仕事にすぐつけなければ、英語教師をやろうと思っていました。
その頃、住んでいたシェアハウスのルームメイトからパーティーに誘われました。外国人の“ガチオタクパーティー”で、「なら行こうかな」って(笑)。そこでルームメイトの友人に「音楽がやりたい」と話したら、「じゃあ知り合いに連絡してみる」とElements Gardenの藤田淳平さん(サウンドプロデューサー・作編曲家)を紹介してくれました。すぐに連絡してデモを送って面接を受けて、入ることになりました。
ーElements Gardenの新人作家募集枠ではなく、面接とデモテープで入ったんですね。
Evan
その時は募集してなかったけど、外国人の応募は稀だったので面接をしてくれたんだと思います。
ーデモ曲はどのようなものを提出したのでしょうか。
Evan
いろいろです。大学で作った歌モノやオーケストラ系のサンプルとか。
ー面接はElements Garden代表の上松範康さんが?
Evan
上松さんをはじめいろんな人がいました。みんながこっちを見ていて緊張しました(笑)。
ー上松さんが2014年にTwitterでEvanさんについて言及していたのが印象的でした。「今、注目されている作曲家です」という言葉の最後に「実は彼は歌がものすごくうまい」と。
Evan
歌います(笑)。大学の入学試験に実技と面接があったんです。楽器にあまり自信がなかったので歌の実技を選択したくらいです。最近はロックが好きですがオペラなども歌います。
■シンフォニックメタルサウンドとデスヴォイス
ー18歳までメタルをよく聞いていたとおっしゃっていましたが、好きなアーティストはいますか?
Evan
ヨーロッパのパワーメタル(※1)が好きで「ブラインド・ガーディアン」(※2)とか「ラプソディー・オブ・ファイアー」(※3)とか。それこそシンフォニックパワーメタルですね。あとは北欧のブラックメタルも好きでした。デスヴォイス(※4)なやつとか。『シュヴァルツェスマーケン』の劇伴でも私がデスヴォイスで歌っています(笑)。
※1メタルの1ジャンル ※2 ドイツのパワーメタルバンド ※3 イタリアのパワーメタルバンド
※4 ダミ声やガナリ声
ーEvanさんの楽曲もシンフォニックメタルサウンドが非常に印象的なことが多く、なるほど、と納得しました。PCゲーム版『シュヴァルツェスマーケン』でまさにそのような曲が流れているなと思ったのですが、ゲーム版にも関わられているのでしょうか?
Evan
はい、どちらも担当しています。アニメとゲームはBGMがリンクしているので、ゲームのためだけの曲もいくつかありますが、同じ楽曲が流れることもあると思います。
ー歌モノのボーカルはもちろんEvanさんが?
Evan
はい。中盤にメインテーマのモチーフがあってその上にデスヴォイスを乗せています。
ーデスヴォイスも?
Evan
僕です(笑)。その時、喉を痛めてしまって、しばらく声が「ボォ~~ボォ~、ヴェ~ヴェ~」としか出なくてメチャクチャでした(笑)。
ーこれまでも、水樹奈々さんの『アヴァロンの王冠』や茅原実里さんの『ありがとう、だいすき』のアレンジや、ほかにも作曲などを手がけていますが、こだわりなど教えていただけますか?
Evan
基本はプロデューサーのオーダーに答える、というところですが、いつも出来る限り求められている以上の物を出そうとしています。自分の持っているオリジナリティも入れ込みながら、あまりプロデューサーの希望から離れすぎると良くないので、その範囲以内でストライクが出来たらベストです。例えば水樹さんの『アヴァロンの王冠』では、最初にコンペがあってデモを出したんです。最終的に藤田淳平さんのキャッチーでポップスなメロディーに決まりました。そのうえで「編曲はEvanにデモみたいな感じでやってほしい」と言っていただけました。思いっきりオーケストラ調にしました。
■『シュヴァルツェスマーケン』はどうしてもやりたかった
ー『シュヴァルツェスマーケン』に参加が決まった経緯を教えていただけますか?
Evan
まずオファーが会社に来ました。ロボットアニメにすごく興味があったし「自分の曲調に合ってるんじゃ?!」という思いもあって、どうしてもやりたかったんです。デモと、馬に乗っている写真付きのプロフィールを送りました。
ー馬……?
Evan
いや……(笑)、あまり自分の写真を持ってなくて、どうせだったら目立つものがいいだろうって送っちゃったんです(笑)。そうしたら「いいね!」って思っていただけたみたいで(笑)。
ーデモ音楽と馬上のEvanさんの写真を見て決まったんですね。「どうしてもやりたい」と思われた理由は「ロボットもの」だからですか?
Evan
そうです。ロボット的なものが出てくるし内容も聞いておもしろいと確信しました。全力でやりたい! と思えるものでした。担当させていただけたのはすごくうれしいです。
ー『マブラヴ』シリーズは今までにもいくつかあると思いますが、『シュヴァルツェスマーケン』のBGMのイメージはどう掴んでいったのでしょうか。
Evan
楽曲制作にかかる前に『マブラヴ』シリーズの全てのサントラをいただいて全曲聴きました。ただ「今まではこんなBGMでしたけど、意識しなくていいです」とは言っていただきました。
ー『シュヴァルツェスマーケン』の楽曲イメージをどうお考えでしょうか。
Evan
『シュヴァルツェスマーケン』は他の『マブラヴ オルタネイティヴ』シリーズ同様とてもダークです。最初の打ち合わせで「シリアスなものを作って欲しい」と言われました。
実は前のサントラ(『マブラヴ オルタネイティヴ』)は岩崎琢さん。実は、僕がすごく影響を受けた方です。彼がやった作品を引き継ぐのはすごく光栄なことだと思いました。岩崎さんが手がけた『るろうに剣心』の音楽を聴いて、感動しました。作曲家を志すきっかけになった方なんです。
■絶望感の中にも希望が宿るメインテーマ
ー本作の作曲制作に入るにあたって渡邊監督や本山哲音響監督とはどんな打ち合わせをされたのでしょうか。印象に残っている言葉はありますか。
Evan 最初にメニュー表をもらった時には戦闘曲がめちゃくちゃ多くて(笑)。
ー何曲くらいあったんですか?
Evan 全体で60曲近く。戦闘曲では15曲くらいです。メインテーマも雰囲気としては戦闘曲ですし、多かったですね。
ーどのようなイメージをもって作っていったのでしょうか。
Evan
何より「絶望感」です。メインテーマは3分ちょっとあるのですが、最初の打ち合わせでセクション毎にいろんな展開をしてほしいと言われたんです。最初のセクションはメインテーマのモチーフを薄く入れて、中盤のセクションには切なさの中に少しだけ希望を感じさせて、最後のセクションは“メインテーマ!”という作り方にしてほしいと。その指示に沿って伝わるように意識して作りました。
ーなるほど。ちなみに約60曲というのはアニメとゲームを合わせた曲ということですね。
Evan
そうです。1クールアニメには多すぎますからね。
ーメニュー表は本山音響監督の方から出てきたのでしょうか。渡邊監督から何か言葉はありましたか?
Evan
基本的には本山音響監督と話をしました。あと最初の内はゲームの発売が先ということもあったのでゲームの監督のタシロハヤトさんと打ち合わせることが多かったですね。
ー苦労した曲はありますか?
Evan
メインテーマですね。長い曲だし、オーケストレーションを可能な限り細かくやったので。あと歌モノもがんばりました。ボーカルもやりましたから。どれも楽しかったですね。
ーデスヴォイスを入れるというのはオーダーにあったのですか?
Evan
何も言われてなかったです。勝手にやりました。自己満足です(笑)。
ーどなたか、感想を聞きましたか?
Evan
タシロハヤトさんから「おっ、おもしろいね」って言っていただきました。60曲近くもあるなら自己満足の曲があってもいいのでは?と思って(笑)。もちろん作品に合っている前提でのことですけど。
ー自分が満足できる曲が、作品にもピッタリ合うというのは改めていい出会いですね。
Evan
そうですね、『シュヴァルツェスマーケン』は自分でもすごく好きな作品なので、曲作りはおもしろかったし楽しかったです。
■苦しい時もあったけど、やっぱり好きな作品の音楽を作るのは楽しかった
ー『シュヴァルツェスマーケン』の中で「これはぜひ聞いてほしい!」という曲を教えてください。
Evan
歌モノをぜひ聞いてほしいです! まだTVアニメで使われるか聞いてないんですが、ぜひ使ってほしいですね。
ー『シュヴァルツェスマーケン』はどんな作品だと思いますか?
Evan
絶望の中で人々が希望を掴もうとしている物語です。自分はシナリオを読んで、泣きそうになりました。本当にすばらしいシナリオだと思います。
ー曲を作り終えての感想はいかがでしょうか。
Evan
たまに自分でも移動中に聞いたりしてます。「あ、結構いいねえ!」と思いながら(笑)。苦しかった時もありますが、やっぱり好きな作品ということもあって、すごく楽しかったです。
ー今後はどういう方向で曲作りをしていきたいと考えていますか?
Evan
こういう作品が好きなので、この方向性で行けたらうれしいですね。もちろん日常系とかも好きですし、明るい系もやりたいと思いますが、今の自分に合っているのは『シュヴァルツェスマーケン』のような世界観の音楽かなと思います。
ーありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。
Evan
『シュヴァルツェスマーケン』の劇伴、一生懸命がんばって作りました。作品と一緒に音楽でも感動していただけたらと思います。ぜひ曲と作品とのリンクを楽しんでほしいです!
ーありがとうございました!
TVアニメ「シュヴァルツェスマーケン」放送直前特番
1月9日(土) 21:00~
出演:田中美海、山本希望、安野希世乃、安済知佳、加藤英美里、村瀬 迪与
http://live.nicovideo.jp/gate/lv246308107
壮大な音楽を生み出す作曲家Evan Callがヴェールを脱ぐー『シュヴァルツェスマーケン』インタビュー
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