■アルザック・メビウス(ジャン・アンリ・ガストン・ジロー)
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言わずと知れたフランスのバンド・デシネの巨匠。宮崎駿や大友克洋も影響を受けており、日本の漫画、アニメシーンへの影響は計り知れません。緻密な描写、気温をも感じさせる空間感覚、どれをとっても熱い! 飛行シーンは宮崎駿を唸らせ、その影響は「風の谷のナウシカ」のメーヴェの飛行シーンに見る事ができます。アルザックの影響は漫画やアニメだけでなく、ゲームの世界にまで広がり、1995年にセガサターン用ソフトとして発売された『パンツァードラグーン』はその影響下で作られた…というかメビウスがパッケージイラストで参加しています。ファンタジーゲームが好きな方はまず本作を押さえましょう!(少々値は張るけど…)
■ファンタスティックワールド(ひらのりょう)
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タイトル通り、ファンタスティックな世界とキャラクター、鮮やかな色彩と圧倒的なパース、今にも動き出しそうなスピード感溢れるコマ割が魅力の作品。第18回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 審査委員会推薦作品でもあります。ゲームにおけるファンタジーといえは「剣と魔法」がつきものですが、それらがなくてもワクワクドキドキの冒険物語は紡げるのだなと感じさせてくれます。RPGのアンチテーゼとして作られた『moon』を代表とする不思議系ファンタジーゲームに通じる世界観。可愛い見た目に反して現実世界を暗喩したシビアな描写も多く、大人でも楽しめる作品です。
■ファイブスター物語(永野護)
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ザックリ説明すると、ロボット、ロボットの操縦者、ロボットのブレーン部分である人造人間が5つの星を巡って活躍する物語。細い線画は好みが分かれそうですが、人造人間(オートマチック・フラワーズ)が可愛いのでロボットものが苦手な女性にも人気の作品です。すでに星団年表が作られているので歴史オタクの筆者は「歴史漫画を読んでいる」感覚で接しており、最新13巻においてロボットのデザインや名称がリニューアルされた際には「新たな史料が発見されて教科書が変わった」と認識し衝撃を和らげています(笑) 作者がゲーマーで有名。『PSO』の武器デザインや『鉄拳』のコスチュームデザインなども手がけています。
■ドリフターズ(平野耕太)
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「大乱闘歴史上の英雄オールスターズ」な作品。歴史上で活躍した英雄達が中世ファンタジー風の世界に召喚されて戦います。歴史もののゲームに親しんだ方なら、「もし彼らが異世界に呼び出され共闘または対立したらどんな戦いをするだろう?」という妄想をしたことがあるはず。そんな妄想が形になった作品といえるでしょう。時代や場所問わず様々な英雄が登場するので、戦国ファンだけでなく、源平ファン、幕末ファン、西洋史ファン、近代史ファンにもグッとくる作品です。歴史もののクロスオーバーゲームと言えば『無双OROCHI』ですが、この世界をもっと広げてみたらこんな感じになるのかも!?
■アンゴルモア(たかぎ七彦)
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日本中世史を扱った漫画の大半が平安末期(源平合戦)か戦国時代ですが、本作は鎌倉時代の元寇を題材にした作品。流罪となった鎌倉武士・朽井迅三郎が対馬において蒙古・高麗軍の大軍と戦います。「義経」や「弁慶」などといったイメージが固定された英雄が不在の時代だからこそ、漫画という視覚的なメディアは効果的。馴染みのない人物もキャラクターとして覚えてしまえばすんなり頭に入ってきます。また、「義経流」等の源平時代の延長を匂わせるキーワードも随所にちりばめられており、親しみやすさに一役買っています。年表では伝わらない臨場感をぜひ! 宝島社「このマンガがすごい!2016」オトコ編14位も納得の作品です。
■暗黒神話(諸星大二郎)
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日本神話に登場する「タケミナカタ」や「オオナムチ」が異形として登場する『暗黒神話』。週刊少年ジャンプに1975年に掲載された作品です。ヤマトタケルの伝説を軸に、遺跡、神仏など様々な要素がこれでもかと盛り込まれています。RPGで日本の神様がモチーフのモンスターは数多く登場すれど、これほどDNAレベルで恐怖を感じるデザインは見た事がありません。これがジャンプで連載していたなんて…! 2015年に「暗黒神話 完全版」が完全予約生産で発売されました。余談ですが『刀剣乱舞-ONLINE-』で広く認知されるようになった「審神者」という言葉も登場しますよ。
■血まみれスケバンチェーンソー(三家本礼)
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セーラー服とゾンビとチェーンソー…こんなにもゾンビ・スプラッターファンを喜ばせるモチーフはないんじゃってくらい全てが盛り込まれているホラー漫画。フンドシとゲタを履いてチェーンソーをぶん回すスケバン・ギーコのアクションが爽快です。いろんな意味で過激な表現が多いので苦手な方はご注意を。ゾンビものがお好きな方、特に角川ゲームスの『ロリポップチェーンソー』のような世界がお好きな方はいかがでしょう? 2016年2月に映画公開も決まっており、ますます目が離せない一作です。
■2DK(竹内 佐千子)
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POPな色彩とシンプルな線が魅力的な漫画。若手俳優の「おっかけ」女子であるこむぎときなりのルームシェアを描いたお話。共通の趣味で繋がった女の子たちがルームシェアをしながら、互いの仕事の合間をぬっておっかけをする様子に「あるある」と首を振らずにはいられません。2015年のエンタメ業界の総まとめして「若い女性のオタク化が進んでいる」という記事が発表されましたが、これは今に始まったことではなく、昔から趣味に時間とお金を投じる女性は沢山いました。本作の主人公も、そんなありふれた女の子たち。POPな雰囲気に反して、社会人オタクのリアルな問題にも触れているので、思わずドキッとさせられる漫画です。
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というわけで新旧タイトルが入り混じるチョイスとなりました。30年のゲームの歴史に寄り添ってきた良作の数々、ぜひこの機会にお手に取ってみてはいかがでしょうか。