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60cm大サイズの人形「スマートドール」。そのスマートドールと伊勢丹がコラボした企画コーナー「みらい百貨店」が、9月20日まで新宿伊勢丹本館5Fで開催されていました。その模様のレポートと、生みの親ダニー・チュー氏へのインタビューをお送りします。
「リカちゃん」や「バービー」。着せ替え人形は何時の世も親しまれているものですが、更に近年“ドール"として、非常に繊細な耽美さも持つものや、見事にアニメやゲームの存在を現実に再現したものなどの、フィギュアだけでなく芸術品の流れも汲む、精巧で高級な着せ替え人形が国内のメーカーを中心に世界で数多くリリースされ、密かなブームの兆しを見せ始めています。
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そんな中、日本の文化やコンテンツを海外へ紹介する有名サイト「カルチャージャパン」の企画制作運営や、クールジャパン戦略推進会議の委員で知られる、ダニー・チュー氏が手がける新興メーカーの送る、新たな“ドール"として注目を集めているのが、「スマートドール」です。“日本産”を全面に打ち出した、このドールは海外を中心に様々なコラボレーションを進行中です。
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今回した伊勢丹と言えば、歴史ある高級百貨店。サブカルチャー要素の強いドールとは一見相容れないような気もしてしまいますが、実際には一体どのような雰囲気になっているのでしょう。開催場所である5Fへのエレベーターを登ると、「みらい百貨店」はまさに目の前に展開されていました。
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全体を一覧した印象としては、そのまま企画コーナーと言った趣で決して広いわけではありませんが、スマートドールの公式サイトなどと同様に、清潔感のある白を基調にまとめられた展示デザインは洗練されており、辺りのまさに高級百貨店と言った品物が並ぶ趣の店内とも溶け合っています。
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コーナー内では、スマートドールの概要を示した文字展示に加えて、様々な衣装を身に着けた、“末永みらい”を始めとする現行モデルのスマートドールが多数展示されており、その魅力を示していました。また、スマートドール用の通常商品に加え、伊勢丹の商品や制服、様々な作家とコラボしたグッズも展示・販売されていましたが、残念ですがコラボ品の殆どは既に売り切れとのこと。
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アニメ的な印象を強く持つスマートドールであるだけに、「みらい百貨店」に訪れているお客さんはある程度年の行った男性が多いだろうと予想していましたが、その予想に反して、やはり伊勢丹というその場所柄か、訪れるお客さんは老若男女幅広く、上品なご年配の方や、海外からのお客さんが次々と足を止めて展示を見ているのも印象的でした。
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おおよそ60cmというその大きく、精巧な“ドール”を初めて目の当たりにした反応も多く、つい手を触れられるお客さんも数少なくないとのことで、ダニー・チュー氏自らが、乱れてしまった展示のスマートドールのポーズや髪などを直す姿も度々見受けられました。展示物へ触れることが推奨こそされていないものの、明確に禁止もされていないのは、興味を持った方への配慮が感じられます。
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次々と訪れるお客さんへ、引っ切り無しに応対されていたダニー・チュー氏ですが、インタビューを実施することができました。
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――まず、「スマートドール」というものはどういった商品であるのでしょうか?
ダニー・チュー氏(以下 ダニー):“末永みらい”というキャラクター、これは昔からの弊社のマスコットキャラクターなんですけど、ずっと平面の世界で生きてまして、リアルの世界にも行けたほうが面白いことができるかなと思って、みらいちゃんのお人形のバージョンを作って世の中にリリースしました。
――日本で一般的な“人形”というともっと小さいものが一般的だとは思うのですが、こういった大サイズの人形として「スマートドール」を作った理由についてお聞かせください。
ダニー氏:いままで小さくて可愛い人形が存在していましたが、より大きい、スマートドールのサイズですと服の表現であったり、髪の流れであったりを、よりリアルに再現できて、色々な所ともコラボしやすい形になるのではないかと思いました。最近は、色々な、宝石のメーカーさんからもコラボレーションの話はかかっているのですけれども、例えば、彼らが作る指輪がうちのドールのブレスレットにもなるのですね。
――「スマートドール」の特徴についてお聞かせいただければと思います。
ダニー氏:いままでのドールの趣味と言いますと、結構閉鎖的な環境下でマーケティングされてきた商品ではないかなと思うのですが、うちの商品は、よりたくさんの方々に知ってもらうような市場向け。こういう商品をまだ見たことがない方々が、世の中に沢山いらしていて、このように伊勢丹とコラボすることによって、このような人形を見たことない人たちがほとんどの場所で、見ていただいて、買っていただいたりとかしている状況になっているのが、まさに僕が狙っている新世界です。
――今回、高級百貨店である伊勢丹とのコラボとなった理由についてお聞かせください。
ダニー氏:僕が今年の4月、ペナン島のほうでやったファッションショー、人間のファッションショーなんだけれども、モデルさんがうちのドールを持ってキャットウォークで歩くというのをやってたんですけれども。僕は元々ファッションの靴職人で、そういう世界のほうで仕事してきて、父親(筆注:世界的靴デザイナー、ジミー・チュー氏のこと)も靴を作ってたんですけれど、僕の方は人形へ。靴は違う形で作るようになって。それでファッション業界の色んな所とコラボしたかったんですね。去年伊勢丹さんから話が来ていて、「一緒に面白いことやりませんか」というのがあったので、ぼくも、伊勢丹さん、1886年創業の日本のデパートとコラボレーションができるのは非常に光栄に思い、是非と。
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――「スマートドール」は“国産”の人形というのを全面に押し出していますが、この“国産”というのはどういう意味なのでしょうか?
ダニー氏:スマートドールの中に骨格があって、それが山形の新庄市。ソフビ(筆注:肌にあたる部分)が葛飾区。目玉は埼玉かな、のほう。服は一部海外の方で作られてるんですけれど、殆どは国内のほうで作られていて九州だったりとか群馬とか、東京の中野とか。他のドールメーカーさんの服はベトナムとか中国で作られてるんですけれども、うちの方はなるべく沢山国内の方で作りたいなと思っています。みらいちゃんも山形のふるさと納税の返礼品にもなっていて、地域活性化にも貢献してます。
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――最後に、今後の「スマートドール」の展開について、例えばコラボなどについて教えていただければ。
ダニー氏:僕がやりたいのはみらいちゃん、スマートドールを沢山の人に知ってもらうために、いろんな普段スマートドールを見ることのない人たちに見てもらうに、色んな所とコラボレーションしていきます。例えば航空会社だったりとか飲料会社だったりとかテーマパークだったりとか。色んな話が今もう進んでいます。今は秘密保持契約などで中々言えないんですけど、その時になったら、特に来年みらいちゃんも日本国内だけじゃなくて海外にも一気に渡っていくようになります。
――コラボ内容でアニメとかそういったものとの予定はないのでしょうか?
ダニー氏:そうですね、多分11月ぐらいには何かしらの発表があると思います。時期が来れば色んな情報が公開できると思います、製作の工程であったりとか。いま公開できるのは、今の伊勢丹の制服、ジュン アシダという有名なブランドの服の量産を手がける所、国内なんですが、そこでも作って頂いています。なので制服は特にこだわってバッチリ国内で作って。かなり凄いクオリティです。
――ありがとうございました。
「ドールを知らない方に見て買って頂いて欲しい」氏の言葉まさにその通りであった、この「みらい百貨店」で見られた光景は、ダニー・チュー氏がスマートドールで目指す、ドールの“未来”の姿を体現しているのかも知れません。
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伊勢丹 X 末永みらい「みらい百貨店」は9月20日まで、新宿伊勢丹本館5Fにて開催です。