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5月20日・21日の2日間に渡り、京都のみやこめっせにて行われた「A 5th Of Bitsummit」に、バンダイナムコエンターテインメントの「VR ZONE Project i can」の仕掛け人コヤ所長(小山順一朗氏)&タミヤ室長(タミヤ幸春氏)が登壇しました。オリジナルのVRコンテンツはもちろん、『ガンダムVR ダイバ強襲』や『装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎』に加え、現在は『エヴァンゲリオンVR The 魂の座』を開発中と、様々なアニメをテーマにしたVRコンテンツも手がけているコヤ所長&タミヤ室長。今回は、その開発の裏側が語られました。
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「Project i Can」では、「さぁ、取り乱せ。」というキャッチコピーの元に、本能に訴えかける最高の実在感を伴うVRエンタメを追求しています。前述の通り、アニメIPのコンテンツも多く手がけているのですが、その場合はオリジナルコンテンツとは作り方が違ってくるそうです。
オリジナルコンテンツであれば、高所にいるという感覚を味わせるために、「ビルの上にかけられた板の先に猫がいて、助けなければならない」というありえない世界を簡単に作れてしまいます。しかし、アニメIPの場合、既に世界が設定されていて、その中から驚いてもらうポイントを切り出していかなければならないのです。
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さらに、アニメや漫画では、「見せない」ことで都合よく描いている部分もあります。この部分をしっかり考えて設定していかないと、VRコンテンツにしたときに現実感がなくなってしまいます。そのため、コンテンツを成立させるために「現実への超解釈」という困難な作業をしなければならなかったとのこと。
例えば、『戦場の絆』を開発した際、ガンダムのカメラアイにプレイヤーの目を設定すると18mの巨大ロボットに見えなくなってしまう。きぐるみを着た自分と、きぐるみを着た会社の友達のような感覚になってしまったのだとか。その状態で1/1サイズのホワイトベースを見ると、まるで公園の遊具みたいに見えてしまったそうです。そこで、『戦場の絆』の場合は「超解釈」としてホワイトベースのサイズを3倍まで大きくし、巨大感を出しているとのこと。
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他にも、「エヴァ」の身長や「どこでもドア」の寸法など、劇中では曖昧になっている部分も設定しなければならないため、解釈にかなり苦労したようです。原作側に解釈したものを納得させるのも苦労したようですが、この部分を突破すると、プレイヤーからは「こうなっていたのか!」という感動・リアクションが返ってくるので、頑張りどころだと語っていました。
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VR企画のブレストを行うと、どうしても奇をてらったものが多くなってしまうと、タミヤ室長は語ります。実際、バンダイナムコエンターテインメントでも、「ドラゴンボール」の企画を話し合った際「桃白白のように、自分の投げた柱に乗りたい」という意見が出てきたとのこと。「たしかに飛んでみたい!」とタミヤ室長は言いつつも、「その世界観ならお客さんが何をしたいかを、ストレートに考えることが大事」と語ります。
今までにできなかったシチュエーションが、VRならできる。そのような企画者的な考えはもちろんありますが、それが本当に望まれているのか。作り手側は何度も使われてきた王道から逃げたくなりますが、VRコンテンツでは、例え王道であっても必ず今までにないものになります。なので、王道から逃げずに、どうなるかを追求してほしいと、タミヤ室長は語っていました。
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VRはいろいろなことができます。しかし、いざ作ってみると「あれ?」と感じることがある、とタミヤ室長は語ります。自分がヒーロー、例えば『エヴァVR』であればシンジとしてその世界に入っても、与えられた力を原作のように使えず、実在感が崩壊してしまうとのことです。
そこで、『エヴァVR』では、「シンジたち不在の中選ばれた臨時パイロット」という設定が採用されています。「夢見た世界に自分自身として参加する」ことで、エヴァに乗ってるという感覚は強くなり、たとえ使徒にやられてしまっても「シンジじゃないからしかたない」と納得できるとのことです。
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タミヤ室長は「多くの人がまずやりたいことを、想像力豊かに現実解釈する。これによって期待を超えというギャップを作らないといけない」とまとめます。そのようにして作られたアニメVRコンテンツを体験すると、プレイヤーは自身の夢をかなえられるとともに「こうだったのか!」と感じます。結果、コヤ所長とタミヤ室長が目指している「期待通りだったけど、予想を遥かに上回っていた!」という新鮮な驚きを持った体験ができるとのことです。
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最後に両氏は、内容はまだ話せないものの「VR ZONE 新宿」では上記のようなネタをたんまりと用意しているので、期待してほしいと語り、講演を締めくくりました。