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現在も「シミュレーションゲーム」というジャンルには、様々な人気シリーズなどが展開しています。経営や街作り、また恋愛をモチーフとしたものなど、広がりも実に多彩ですが、その中でも特に欠かせないのは、戦いを軸とするウォー・シミュレーションでしょう。
ウォー・シミュレーションの代表作と言えば、『三國志』シリーズや『信長の野望』シリーズ、『大戦略』シリーズなどがありますが、コンシューマーゲームの黎明期にウォー・シミュレーションを広めた立役者のひとり『ファミコンウォーズ』シリーズも忘れられません。
「『ファミコンウォーズ』が出ーるぞ! 母ちゃんたちには内緒だぞ!」と歌われたCMでも有名な一作目は、ユニットの生産や運用といったウォー・シミュレーションの醍醐味を味わえる一方で、親しみやすいグラフィックやゲームシステムのスリム化などを行い、より広いユーザーが楽しめる作品として登場しました。
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その間口の広さが受け入れられたほか、実際に遊んで気付く奥深さも相まって、多くのファミコンユーザーがウォー・シミュレーションの魅力を知り、ジャンル自体も盛り上がりを見せ始めました。『ファミコンウォーズ』自体も根強いファンに支持され、後にシリーズ化を果たします。
本シリーズは、2013年に登場した『ファミコンウォーズDS 失われた光』に至るまで数々の作品を展開し、本日でちょうどリリースから20周年を迎える『スーパーファミコンウォーズ』もそのひとつ。シリーズの2作目に当たり、プラットフォームはスーパーファミコン。ですが、そのリリース形態にちょっとした特徴があるため、当時のユーザーの中には、その存在も知らないという方も。
そこで今回は、『スーパーファミコンウォーズ』20周年を記念し、本作の魅力や特徴、またシリーズ展開などを振り返ってみたいと思います。
◆ニンテンドウパワーとして登場した『スーパーファミコンウォーズ』
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『スーパーファミコンウォーズ』のプラットフォームは間違いなくスーパーファミコンですが、一般的なゲーム小売店などでの取り扱いはなく、ローソンに設置されておる端末「Loppi(ロッピー)」を通してSFメモリカセット(またはGBメモリカートリッジ)に書き込むという、時代に先駆けた販売方式でした。
この新たなサービス「ニンテンドウパワー」で提供されるソフトは、パッケージソフトと比べるとかなり安価で、高くても3,000円で新作ゲームが入手できました。当時はまだ、個人単位のインターネット環境が今ほど整っていなかったため、間接的なダウンロード販売とも言えます。
新作として、『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』や『ファミコン探偵倶楽部 PartII うしろに立つ少女』といったファミコン時代のリメイク作品も登場したほか、『ファミコン文庫 はじまりの森』や『ファイアーエムブレムトラキア776』といった完全新作もリリース。また新作だけでなく、スーパーファミコンのパッケージソフトとして発売済みのタイトルも扱っており、選べる作品数はかなりのものでした。
ですが、このサービスを利用するには、書き込みをするためのベースとなるSFメモリカセット(3,980円)やGBメモリカートリッジ(2,500円)を購入する必要があり、新作ソフトと比べると安いながらも、初期費用はそれなりにかかってしまいます。また、当時はまだ馴染みのない販売形式だったため、ニンテンドウパワーで新作が出てもカジュアルなユーザーには認知されにくいといった問題もありました。
様々な事情から、ニンテンドウパワーでリリースされた『スーパーファミコンウォーズ』は、1作目『ファミコンウォーズ』ほどの注目を集めるには至りません。しかし、ゲームとしての出来映えは決して劣るものではなく、期待に応える正当進化を果たしました。
◆延々と遊んでしまう!『スーパーファミコンウォーズ』の魅力
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『ファミコンウォーズ』の基本的な特徴を受け継いだ『スーパーファミコンウォーズ』。当時は、マスが6角の「ヘックス」を用いたウォー・シミュレーションが多くありましたが、本シリーズは分かりやすい4角の「マス」を採用。ユニットの見た目もデフォルメされており、ユニット名も「軽戦車」「中戦車」「偵察車」など、性能や用途が一目で分かるものばかり。
史実に登場した実際の車両や戦闘機などを運用するウォー・シミュレーションもあり、こだわり派のユーザーから根強い支持を受けていますが、専門的な要素が増えると初心者が入りにくいのもまた事実。その点『ファミコンウォーズ』シリーズは、分かりやすさと遊びやすさを重視しており、その快適性は『スーパーファミコンウォーズ』でさらに進化しました。
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遊ぶ上で特に大きな変化は、コンピュータ側の思考時間の短縮と、指揮官である「将軍」に思考ルーチンが用意され、それぞれに異なる戦略や戦い方を挑んでくる点です。中には、“質より量”とばかりに歩兵や戦闘工兵を大量に投入する将軍もおり、同じマップでも将軍が変わることで様々な戦局を楽しむことができます。
また前作と比較すると、ユニットは8種類追加の24種類と増加。プレイ人数も最大4人となり、マップ数は前作の2倍以上となる全44面に。さらに「索敵モード」も加わり、その手応えやボリュームが一気に増加しています。多様性が増し、それでいて思考時間は短縮されてるので、より快適に楽しめる一作として好評を博しました。
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敵と同じ条件でスタートし、時に硬直状態に陥るも、ユニットの有用性や戦術を駆使して状況を打破。相手の都市を少しずつ占領して資金源を奪うと共に、豊かな資金で新たなユニットを投入し、一気に戦況をひっくり返す。小さな判断の積み重ねで、大きな勝利に繋がるウォー・シミュレーションの醍醐味が、分かりやすく高品質に詰め込まれているのが、『スーパーファミコンウォーズ』です。
◆『ファミコンウォーズ』シリーズの展開を紹介─今、『スーパーファミコンウォーズ』を遊ぶには?
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1988年に発売された『ファミコンウォーズ』から始まった本シリーズは、2作目となった本作『スーパーファミコンウォーズ』を経て、『ゲームボーイウォーズ』シリーズや『突撃!! ファミコンウォーズ』などに展開。場所を選ばず遊べる『ゲームボーイウォーズ』は、攻略に時間がかかるウォー・シミュレーションと相性がよく、のちに『ファミコンウォーズDS』にも繋がります。
『突撃!! ファミコンウォーズ』は大きく方向性を変え、戦闘をTPSで表現。ユニットごとの相性は健在なので、腕前だけで全ての状況をひっくり返すことはできませんが、戦い方次第で戦闘結果は大きく変わるので、これまでのシリーズ作とはまた趣が異なる手応えを楽しむことができます。
このように様々な展開を遂げた『ファミコンウォーズ』シリーズですが、その最新作となる『ファミコンウォーズDS 失われた光』が3DS専用となるDSiウェアでリリースされて以降、大きな動きはありません。シリーズファンとしては寂しいところですが、新たな展開が訪れることを期待したいばかりです。
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なお、「ニンテンドウパワー」のサービス終了以降、プレイするのがかなり難しかった『スーパーファミコンウォーズ』ですが、今はWii UやNew 3DS向けのバーチャルコンソールソフトとして配信中です。一時期と比べると格段に遊びやすい環境となっているので、興味が湧いた方やもう一度遊びたい人は、そちらを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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