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2018年7月12日、メビウスがおくるニンテンドースイッチ向けホラーノベルゲーム『送り犬』がダウンロード専用タイトルとして発売されました。本作は、『学校であった怖い話』や『ONI 零~復活~』の作者でもある飯島多紀哉氏の短編小説を原作にしたホラーノベルゲームで、モバイル版をベースにグラフィックや演出がパワーアップしています。今回は、『送り犬』の魅力とプレイレポートを紹介します。
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『送り犬』は、小説のように物語を読み進め、状況に応じて現れる選択肢から主人公の行動や返事を決定。選んだ選択肢により、その後の物語が大きく変化していくノベルゲームです。ニンテンドースイッチ版では、飯島氏による新シナリオ2編が追加され、随所でタイミングよく挿入されるHD振動による臨場感ある演出も魅力です。
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本作の主人公は、女子大学生の「財部美穂」。彼女は、自宅のアパートのポストに毎日のように投函されている差出人不明の封筒に悩まされていました。そんな折、人数合わせで参加した合コンで、仙田という男性に出会います。同郷出身ということもあり、地元で語られる伝承の妖怪「送り犬」の話題で意気投合した2人。彼女たちの人間関係を中心にストーリーは進んでいきます。
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ここで、物語の中心となる妖怪「送り犬」について紹介します。送り犬は八ヶ岳に住む妖怪で、山の神さまとも言われています。旅人が夜の八ヶ岳を歩いていると、後ろからヒタヒタと足音が聞こえてくるのですが、これが送り犬です。もし送り犬が現れたら、絶対に振り返ってはいけません。なぜなら、振り返ると食べられてしまうからです。
しかし、そのまま振り返らずにいれば、家に着くまで狼や山に住む魔物から守ってくれるボディガードでもある送り犬。無事に家にたどり着いたら、何か食べるものをあげると喜んで帰っていきます。しかし、送り犬に出会ったら、振り返る以外にもうひとつ、転ばないように注意しなければいけません。もし転んでしまったら送り犬に襲われてしまうので、こう言うそうです。「どっこいしょ。一休みでございます」
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文章は主人公の一人称で語られるのでとても読みやすく、細かな心の変化も丁寧に描かれるので、物語に没入しながら読み進められました。この没入感により、和製ホラーの持つ独特の背筋がゾッとするような怖さや、伝承の持つ日常と非日常の境界の曖昧さなどがよりはっきりと感じられるのも魅力です。
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さらに、エンディングは30種類以上も用意されています。あるルートでは、送り犬の不気味さが強く強調され、ここぞというタイミングで発動するHD振動により、振り返る恐怖が掻き立てられました。一方、コミカルな要素が強いルートではぶっ飛んたキャラクターのリアクションが見られたり、別の人物の視点から語られる番外編のようなルートもあるので、繰り返しプレイしてすべての物語を堪能したいという気持ちにさせられました。
ゲームシステム面では、オプションから文字表示速度や早送りの範囲、HD振動の有無や各種音量の設定変更ができます。セーブスロットも多く、クイックセーブも可能。周回要素が必須の作品なので、セーブや早送りでさくさくと選択肢まで進められるのはとても便利でした。
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以上、ニンテンドースイッチ『送り犬』の魅力とプレイレポートをお届けしました。和製ホラーの持つ背筋がゾワッとするような恐怖だけでなく、時におもしろく時に切ないさまざまな物語が収録されたノベルゲーム作品でした。みなさんも送り犬とともに、暑い夏を涼しく過ごしてみませんか?