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人気FPSシリーズ最新作『バトルフィールドV』が11月20日に発売を迎えました。2008年発売の『バトルフィールド1943』以来の第二次世界大戦を題材とした作品となります。
『1943』からの10年間で進歩したグラフィック技術によって「全く新しい第二次世界大戦の姿を見せる」という開発目標が掲げられていた本作ですが、作り込まれた最高級のグラフィックはまさに圧巻の一言。
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『バトルフィールド』シリーズらしい各種のビークル(乗り物)が入り乱れるマルチプレイヤー対戦の他にも、シングルプレイヤーモード「大戦の書」も完成度が高く、FPS好きには是非プレイして頂きたい作品です。
さて、本記事を執筆している筆者なのですが、過去に10年と少しの間、陸上自衛隊に勤務していた経験があります。最後に勤務していたのは防衛装備庁で、陸自装備品の新規開発に関する業務に携わっておりました。今回、「その経験を活かして『バトルフィールドV』の記事を書いて欲しい」とお話を頂いたのですが、当初は「そうは言っても戦争した経験は無いしな……」と尻込みをしておりました。ところが実際に本作をプレイしてみたところ、ゲーム中の体験とともに自衛官時代の様々な思い出が蘇ってまいりました……。そこで今回は、元陸自ならではの視点や体験を交えながら、『バトルフィールドV』というゲームをプレイしていきたいと思います。
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今回プレイしてみたのは、シングルプレイモードの「大戦の書」です。なにせ筆者はFPSゲームの素人でして、最初からマルチプレイの戦場に出ていくのは心細いのです。
「大戦の書」では現在3つのストーリーがプレイ可能です。
まずは、イギリス特殊舟艇部隊の兵士がドイツ軍の陣地に破壊工作を仕掛ける「旗なき戦い」をプレイしました。
旗なき戦い
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銀行強盗の罪で刑務所にぶち込まれた主人公ブリジャー。その爆発物を扱う才能を見込まれたのか、特殊部隊の兵士となってドイツ軍の陣地へと送り込まれます。
最初のミッションは敵の基地に一人で乗り込み、格納庫にあるシュツーカ(ドイツの急降下爆撃機)を爆破すること。いきなり無茶を言われてますね。
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基本的には見つからずに目的を果たすのが理想なのですが、色々試した結果、敵に見つかることは気にせず、邪魔者は全部片付けていく方針で進みます。見つからずにこっそり進んでも、一度見つかったら周囲を取り囲まれてしまうので全員倒してしまったほうが安全です(筆者にとっては)。
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しかし注意したいのは火炎放射器をもった兵士です。ボディアーマーでも着ているのか、他の敵兵士と比べてかなり頑丈。そして厄介なことに、自分の陣地内だというのに平気で炎を振りまいてくるのです……。
現実の第二次世界大戦でも広く用いられた火炎放射器ですが、実際には拠点防衛にはあまり使用されなかったと思います。自分の陣地が燃えてしまったら困りますからね……。敵の陣地、とくに兵士が立てこもる塹壕などに使用すると非常に有効だったそうです。日本軍が米軍に対して激しい抵抗を行ったことで有名な「硫黄島の戦い」でも使われました。
筆者は20年ほど前に硫黄島を訪れたことがあるのですが、米軍の火炎放射器が使用されたトーチカ跡の中には、ひん曲がった日本軍の機関銃の残骸が残っていました。鉄でできた銃身を熱で曲げてしまうほどの高熱が出るんですね……。人間が浴びたらまず助からないでしょう。
主人公ブリジャーはそんな火炎放射器にも負けずシュツーカに爆弾を設置するのですが……なんやかんやで爆破はうまくいかず、逆にシュツーカの空襲を受けることに。
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ここで新たなミッション、対空機関砲を使ってシュツーカを撃ち落せ!
敵陣地の各所に存在するFlak 38。20mmの対空機関砲で、実際には4名の兵士で運用する装備品です。
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現代の自衛隊も、VADSという20mm対空機関砲を保有しており、航空自衛隊の基地防空隊などに配備されています。筆者はシミュレーターによるVADSの射撃訓練をやらせてもらったことがあるのですが……素人が撃っても全然当たらないんですよね。なにせ相手は高速で飛ぶ航空機ですので、命中させるには弾が届くときに飛んでいるだろう位置を予測して撃つという高度な技術(偏差射撃)が必要となります。ぶっつけ本番で当てられる主人公ブリジャーは、爆弾より射撃の才能があるのかもしれません。
ただし、対空砲は下手な人が撃っても、撃たれる側のパイロットに対しては「対空砲が射撃している」ということ自体が大きなプレッシャーとなり、対地攻撃に集中できなくなる効果があるそうです。もし空襲を受ける機会があったら、下手でもいいので対空射撃はしたほうがいいでしょうね。
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シュツーカを撃墜した後も、次から次にこき使われます。一人で敵の拠点潰してこい、くらいの無茶苦茶を言われます。
そんな任務を生き延びるには戦場にあるあらゆるものを利用しなくてはならないのですが、特に使いやすいのがあちこちにある赤いドラム缶。
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これに向かって射撃すると、一瞬火を吹いた後に爆発します。多分、ガソリンが入っているのでしょう。ちなみに自衛隊でも、演習中の野営地には灯油やガソリンの入った缶がたくさんあります。暖を取るためのストーブも、トラックなどの車両も、燃料なしには動きませんからね。
でもこんな風にガソリン缶のそばで焚き火をしてはいけません……危険過ぎます。ドイツ軍、防火対策がだらしないぞ。
なお、自衛隊でも極まれに新人隊員なんかが灯油とガソリンを間違えた結果、最終的に◯◯◯が炎上するといった事故が発生することがあります。本当に、火の元には気をつけましょうね。
また、戦車部隊に襲撃された時に重要なのが、こちらのダイナマイト。
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L2で投げつけると目標にくっつき、R2を押すと爆発します。側面のシュルツェン(増加装甲)部分に取り付けてもあまりダメージが無いようですが、正面などに取り付けるとご覧の通り、戦車も吹き飛ばせます(マルチの場合は数発取り付けないと倒せないみたいです)。
実際の第二次世界大戦で対戦車攻撃にダイナマイトなどの梱包爆薬が使われたときは、ほとんど自決攻撃に近い捨て身の戦法だったようです。現代の戦車はダイナマイト程度ではびくともせず、せいぜい履帯が壊れる程度のダメージしかないので、おすすめできません。
最終的に大部隊から追いかけることになったブリジャーたちですが、決して投降などしません。陣地に立てこもって徹底的に戦うブリジャー達に業を煮やしたドイツ軍はついに中隊規模の戦車部隊を送り込んできますが……続きはぜひ実際にプレイして確かめてみて下さい。
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北極光
続いて、雪に閉ざされたノルウェーを部隊にレジスタンスの女性兵士の戦いを描く「北極光」。こちらはできるだけ敵に見つからずに進むステルスプレイが推奨されているようで、投げナイフを使って音を立てずに敵兵を倒すということも可能になっています。
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主人公の女性兵士・ソルヴェーグは、結構可愛い顔立ち。しかしその戦いぶりは凄まじく、ムービーシーンでは素手で敵兵士を始末する姿も。
「北極光」で特徴的なのが装備としてスキーが使用できることです。雪上での長距離移動時には非常に役立ってくれます。
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筆者は北の方で勤務していた時代にスキー訓練の経験もあるのですが、あれは本当に思い出したくない記憶です。スキーとはいっても、平地でも上り坂でも進んでいくクロスカントリースキー、しかもカービングスキーなんてない時代のストレートな板です。一般的なアルペンスキーと違って、ちょっと曲がるのにも相当な努力が必要です。
もちろんソルヴェーグは見事なスキーの腕前で、山道も難なく進んでいきます。それは本当に凄いことなんですよ……。
そしてなんやかんやで、技術者である主人公の母から、重要な機密情報の詰まった書類を託されることになります。母が「制御不能のモンスター」と呼ぶそれは、ドイツ軍が開発している原子爆弾に使用される重水。
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書類を運ぶ途中、猛吹雪となってしまいます。定期的に焚き火に当たらないと低体温症で死んでしまうのですが、各所でドイツ軍兵士が焚き火をしていてくれるので助かります。排除して焚き火にあたりましょう。
さらに追い詰められて、川に落ちてしまうソルヴェーグ。常人ならこの時点で心臓麻痺するところですが、それでも彼女の心は折れません。
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最終的に重水生成装置やタンクを破壊して、ドイツ軍の原子爆弾開発を阻止することが目標となります。ちなみに実際の歴史でもドイツはノルウェーを占領し、ノルスク・ハイドロという企業の工場で重水を製造、連合国側がこれに対して特殊部隊による破壊工作を実行しています。
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シナリオ最後では既に輸送が始まってしまった重水を、スノーモービルで追いかけます。果たして、彼女は原子爆弾の開発を阻止することができるのでしょうか…。
ティライユール
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「大戦の書」のもう一つ、フランスの植民地セネガルから派遣された黒人兵士たちの戦いを描く「ティライユール」。こちらのストーリーでは、ほとんどの戦いを部隊のメンバーと一緒に進めていきます。マルチプレイヤー対戦に近い、歩兵部隊同士の激しい戦いが味わえます。
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トラックでの移動中に空襲を受け、全員降車して戦闘が開始されます。なお実際に空襲を受けた場合にはもっと車両を散開させてから停車してください。まとまっていると爆弾の一発で全滅してしまいますから。
ところで、集積物資などの上に掛けられているこちらの偽装網。
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自衛隊でも使用されており、「バラキューダ」という名前でも知られています。こんな網でも上空から見ると、結構な迷彩効果があります。ただし本当はもっとしっかり張って自然な形をつくらないと迷彩効果が落ちるとされています。写真のようにたるんでしまっていると怒られるので、自分が張るときは注意して下さい!
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さて、黒人兵士の主人公ディームは功名心からか、それとも人種差別意識への対抗心からか、命令の範疇を超えて敵を追いかけ、ドイツ軍の拠点を攻撃します。彼の戦意に他の兵士たちも共鳴し、死地へと進んでいきます。彼のように、他人を熱狂させ戦いへと向かわせる才覚こそが、ディームの英雄たる資質なのでしょう。
その戦いの果てに、ディームは何を見ることになるのか……。
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3つのストーリー、それぞれの戦士たちの不屈の闘志が描かれ、ゲームとしても戦場の様々なシチュエーションが体験できる大変満足の行くものでした。これで筆者のFPSゲームへの入門もバッチリだと思います(難易度EASYでしかクリアしていませんが)。
というわけで次回はいよいよ、マルチプレイヤー対戦の戦場へと向かいたいと思います!