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スマートフォン用ゲームアプリでおなじみのコロプラが開催した「コロプラフェス2018」席上にて、スマートフォンタイトル本格JRPG『Project Babel』が発表されました。
『Project Babel』は野島一成氏・崎元仁氏といった有名クリエイターがタッグを組み、王道のファンタジーJRPGタイトルとして制作が続けられています。コロプラフェス2018特設ステージでは、キャラクタービジュアルの公開や、クリエイタートークセッションが行われました。本稿ではその模様をお届けします。
『Project Babel』は王道ファンタジーJRPG
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ステージにはまず、プロデューサーの森先一哲氏、メインプランナーの芳賀氏、アートディレクター尾崎氏が登壇。大きな場で話をする経験がない、と緊張を露わにしながらも、それぞれの意気込みを語り、PVの紹介へと移りました。
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続けてプロデューサー森先氏が解説を行います。キービジュアルには謎の塔をバックに主人公達の寄り添う姿が映し出され、二人の物語が紡がれていくと説明しました。
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本作は、「街が死んでしまう」というキーワードから物語がスタート。パーティメンバーはエンディングまで統一されるので、愛着をもって関わってほしいとのことでした。スマートフォン用タイトルでありながら、戦闘システムなどコンシューマータイトルに負けないものを目指しているようです。
王道かつ特異性のあるキャラクター設定
ここで尾崎氏によるメインキャラクターの解説が行われます。主要なキャラクターはライ、マイリージャ、ポッケ、イタク、トノトの5名。それぞれの姿も初公開となりますので是非チェックしましょう!
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◆ライ:自分の部屋に閉じ込められて育った少年
17歳の少年ライは、自分の部屋の外を知らずに育ったという設定を持ちます。これだけを聞けば鬱屈したものを想像しがちですが、周囲には大切に育てられたので明るい性格を持っているとのこと。森先氏によれば、一見苦しい設定で可哀そうだと思えるが、その性格に矛盾しない構成を実現できたと、ご都合主義ではない自信を覗かせます。
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◆マイリージャ:鳥かごの中で育てられた少女
ライと同様にして、鳥かごの中で育った彼女ですが、こちらは心に少し重いものを抱えているかのような描写となっています。ただし、感情を表に出す方ではないものの、キャラクター達との関りによって、その表情が豊かになっていくのだそうです。
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◆ポッケ:ライが寂しくならないよう関わり続けてきた幼馴染の少女
ライの幼馴染として、おせっかいが過ぎるほどの元気さのあるキャラクター。ライの性格が明るいものとなったのも、後述するイタクと彼女によるものが大きいようです。お嬢様的な世間知らずな面もあるようですが、周囲を慮る真っすぐさを持っているのです。
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◆イタク:幼馴染であり年上の親友
ライより1歳年上の、良き相談役として関わってきた真面目な兄貴分。人当たりの良さを特徴とし、周囲との調和を取れる性質を持ちますが、その心には熱いものを秘めた存在として描かれます。
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◆トノト:自分の事をほとんど話さない屈強な男性
33歳の頼れる男!ライを守る為に行動を共にすることとなります。しかし、本人は過去の記憶を失っており、彼の寡黙さの理由にもなっているのだとか。しかしながら、ただ気難しいだけといった人物ではなく、旅の中で見せる意外な一面が魅力なのだそうです。
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続けて芳賀氏によるデモプレイ。イベント会場内でも来場者に向けた体験版が設置されていました。今回の体験版では、街の人から問題を依頼され、5人で魔物を倒しに行く場面が描かれます。
デフォルメされたキャラをスワイプで操作しフィールドを探索していきます。ランダムエンカウント方式でモンスターと遭遇し、戦闘は4人まで出撃できます。事前に戦闘時の陣形を整えることで、攻撃を受けるダメージの割合や、敵から狙われる確率を調整し、自分のプレイスタイルやキャラクターの特徴を活かして戦うシステムとなるようです。
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全員の行動を指定し「攻撃開始」ボタンでターンを進める王道の戦闘システム。通常攻撃の他に、様々なスキルを活用して状況を打開していきます。まずはモンスターを討伐してクエストを報告……しかしながら依頼主は釈然としない様子。新たな脅威の情報を得て、更に討伐へと赴きます。
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ボス戦では各キャラクターのスキルも披露。戦闘時には、攻撃によって敵キャラクターへブレイクという状態異常を引き起こすポイントを与え、必要な値に達するとより一層ダメージを通せるようになります。
スキルの中にはブレイクさせやすい技などがあり、これらが戦闘中の駆け引きとなりそうです。更に「ブレイク中にブレイクさせる」とダウン状態となり、敵の身動きを抑えて大きなチャンスを獲得できます。
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見事大型モンスターを撃破した主人公たち……マイリージャによる「崖の向こう側を知りたい」というセリフをキーワードに、この後の物語が展開していくようです。
注目のクリエイタートークセッション
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ここで『Project Babel』のアピールポイントでもある「有名クリエイター」として、野島一成氏と崎元仁氏が登壇。野島氏は『ファイナルファンタジーVII』をはじめ数々のシナリオを手掛けています。崎元氏は『ファイナルファンタジーXII』『タクティクスオウガ』など多数の作品で活躍。両名共にゲーム業界の草創期とも言える時期から現在に至るまで精力的に活動を続けられています。
特に筆者のような30代40代の世代には直撃のクリエイターであり、取材も緊張が走ります。イベントではいくつかのトークテーマに沿って、それぞれの想いが語られていきました。
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トークテーマ1:『Project Babel』の依頼を受けてどう感じたか
野島氏
これまでモバイルでの仕事を受けてこられなかったようですが……との司会の導入に対して、モバイルの仕事を受けないというスタンスを取っていた訳ではなく、これまでそのタイミングがなかったと、その素直な理由を吐露。また、画面が大きいか小さいかで、ゲーム制作の作法のようなものが異なると考えていた部分もあったようです。
数多く携わってこられたゲームシナリオの制作を通して、はじめて関わる人達との仕事は「新たなものを引き出してもらえるのでは」という思いがあるとしながらも、仕事のやり方が変わった訳ではなかったと振り返りました。
森先氏はこれを受けて「引き出せるお役に立てたでしょうか」と恐縮してしまいますが、野島氏は「もちろんです」とにこやかに答え、和やかな雰囲気となりました。
崎元氏
野島氏が言われたことは良い点を突いた……と崎元氏が続きます。崎元氏は、常に何か新しいことをしたい、前と同じようなことはしたくない、という思いがあるようです。イメージイラストやストーリープロットを見た時に、ひとりのプレイヤーとしてやってみたいなと感じることが、仕事を請ける判断基準の一つになるとし、そのように思える資料は、見た時から既に「こんな感じになっていくだろうか」と考えはじめているのだとか。
はじめに見ることになる企画書の中で、まず目に入るのは絵であり、特にスライド(本記事の前半:キャラクター紹介の項)にあった森先氏の描かれたキャラクターの絵は魅力的だと感じられたそうです。森先氏はスライド上にある、顔のラフイラストを描かれています。
森先氏はこれを受けて、自分も同様に……はじめはプロデューサーとして色々な注文を付けてしまっていたが、野島氏から提出されたプロットを見て、これは自分も描かねばならないと強く感じたというエピソードを告白。
崎元氏は、こうした制作活動の醍醐味だと思うと総括。誰かが起こしたアクションに対して「俺もやってやろう」というものがつながっていく──絵には発火点になり得るものがあると想いを続けます。制作物の中には人の心を揺さぶる何かを持っているものがあり、そうしたものに関われるのは幸せで、できるだけそういうところにいたいと、クリエイターとしてのスタンスを語りました。
これには森先氏も泣きそうだと感動を隠しません。芳賀氏や尾崎氏もこの話には強く反応し、スタジオに二人のデータが届くや否や、スタッフたちは非常に盛り上がった……芳賀氏は、まだ誰も出社していないスタジオで一人何度も曲を聴いて泣いてしまったと、その状況を更に告白しました。
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トークテーマ2:『Project Babel』の世界観を通して伝えたかったことやテーマ
野島氏
続いては野島氏に向けられたトークテーマです。90年代で制作していたシナリオは「大きなものに立ち向かう若者」を描くのが当たり前のような状況だったと振り返ります。最近では「自分がいる世界を守ろうとするシナリオ」が主流の様に感じているようです。今回はその両方を同時にやれないかと考えて『Project Babel』冒頭の、街が壊れそうだが自分は出たいというものに繋がったと解説します。
野島氏は自身が作られるシナリオには故郷がテーマになることが多いと解説し、敢えて故郷に思い入れの無い主人公にしてみたら面白いのではないかと発案。故郷を愛する人々と一緒に旅をしたらどうなるのだろう、と言う風に考えていったのだそうです。一見相反する人達の旅……昔であればそれを敵と味方として描いたところを、今回は自身に課した挑戦のテーマとして臨まれていったようです。
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トークテーマ3:『Project Babel』の曲を通して伝えたかったことやテーマ
崎元氏
今度は崎元氏へのトークテーマ。崎元氏は退廃的な古典SFがお好きのようで、制作の場ではSFの要素を入れられないかといつも挑んでいるのだとか。『Project Babel』はSF的な要素があるとし、森先氏にも伝えていなかった(!?)が、今回はこっそりSF的なものを入れているとのことでした。
『Project Babel』の話を聞いた当初は全体像が分からない中でも、世界の広がりがありそうだという印象を受けたようです。特徴的な導入のプロットであることと、人のつながりの話であることとを伺って、その部分を描きたいと考えたと力説します。
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トークテーマ4:どんな人に『Project Babel』をやってもらいたいか
野島氏
ゲーム・マンガ・アニメ・小説……といったものを忙しい中で楽しみたいと考えていると思うのならば、このゲームはそうしたものが含まれているので、何か一つでもくいつけるところがあればやってみてほしい、と「まず遊んでみてほしい」点を強調しました。
更に、最近はキャラクターは愛されているが、物語は必要ないのかなと考えてしまうことが……と憂う場面も。野島氏の息子さんがある大作ゲームを遊んでいる時に、初めて見るはずのムービーをすぐにスキップしてしまったエピソードを通して、最近はそういう人も多いのかなと感じているそうです。そうした人達にもじっくり見てもらえるものを作っていきたいと決意を込められました。
崎元氏
崎元氏も同様にして、PVなどを見て「自分に合いそうだな」と感じてもらえたならやってみてほしいと、やはり「まず触って貰う」点に言及。曲に関しては全体の方向性を出せたという手ごたえがあるようです。
プロデューサーの森先氏も続けて「JPRG黄金期」を遊んでいた世代にはオススメできるとしながら、まだそうしたタイトルを遊んだことのない若い世代の人達にも、はじめてのタイトルとしてハマれると思うと自信を見せました。
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トークテーマ5:今後挑戦したいこと
野島氏
最後のトークテーマとして野島氏から。少し悩んだ後に、仕事を長く続けていきたいと一言。それがこの『Project Babel』であれば、とてもいいことだと述べました。
崎元氏
アップデートをし続けるスマホのタイトルという形は良いものだと感じられているようです。『Project Babel』での仕事を続けていけるのならば、少しずつスケール感も大きくしていけたら、音の方でその手助けができたら、と改めて決意を述べられました。
森先氏
森先氏は、スマホ発のIPでありながら、何十年も語り継がれるような作品にしたいという、プロデューサーとしての想いを語りました。
最後に森先氏から『Project Babel』の魅力と題しアピールが語られ、イベントの閉幕となりました。森崎氏は、有名なクリエイターが創り出すシナリオとサウンドを、魅力的なキャラクターを通して体験する正統派RPGであるとし、ゲームでしか味わえない体験ができるよう制作を続けているので、楽しみにして欲しいと締めくくりました。
『Project Babel』は2018年12月15日12時より、事前登録の受付を開始しています。
『Project Babel』公式サイト
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