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千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2019」では、豪華なスタッフ陣営が発表。原作・シナリオは『賭ケグルイ』の原作者・河本ほむらさん、キャラクターデザインは『蒼き革命のヴァルキュリア』や『万能鑑定士Q』シリーズで知られる清原紘さん、BGMは『モンスターハンター』シリーズの作曲家・小見山優子さん、シューティングパートはシューティングゲームの老舗メーカー「グレフ」が担当します。
同作のテーマは「冤罪」で、6人の犯罪者「囚人」と5人の被害者「執行人」がそれぞれペアを組んでアトラクションに挑みます。囚人は勝てば無罪を勝ち取ることができ、執行人は恨みを晴らすことができます。
各章では囚人が自分が犯人ではない証拠を集める前半のアドペンチャーパート、仮想空間内で無実を信じてもらうために執行人の心の壁を壊す後半のシューティングパートに分かれています。
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重厚な世界観とワクワクするようなシナリオに、シューティング要素をなぜ加えるに至ったのか、イザナギゲームズ代表取締役であり、本作のプロデューサーである梅田慎介氏に開発秘話を訊きました。
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――そもそも、どんな着想から始まったゲームなのでしょうか?
梅田慎介(以下、梅田)イザナギゲームズが立ち上がった2018年1月頃には、弊社の第1作目である『デスマーチクラブ』と並行してプロジェクトが進んできました。河本ほむら先生と、「『賭ケグルイ』の次のIPを一緒にゲームから発信できないか?」と話す機会があったんです。
――その時点ではシューティングの要素を入れるアイデアはまだなかった?
梅田そうですね。シナリオは河本先生、キャラクターデザインは清原紘先生に決まった時点で、どういうシナリオにするのかミーティングを重ねました。それで僕が固まったシナリオやキャラクターデザインを持ち帰り、「ゲームにするならこうしたら面白いんじゃないか?」と時間をかけて案を練ったんです。
そこから生まれたアイディアが「シューティングパートを作り、アドベンチャーパートで得た証拠を囚人が執行人につきつける」でした。お二人に提案して、色々シミュレーションしたらいけそうだなと思ったわけです。
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――まずは、河本先生のシナリオありきだったと?
梅田作品の世界観やコアな部分は河本先生から出てきたものですね。それを元に僕らがゲーム化する上ではこうしたいと伝え、それを受けて河本先生がシナリオに反映させながら一緒に作り上げました。
――犯罪者と被害者のタッグを組むというのは、かなりインパクトありますよね。
梅田そこは河本先生が最初から出されたアイデアでした。冤罪で捕まっている主人公が冤罪を晴らすためのストーリーにしたいというのは、河本先生の中でずっと練られていたようでした。
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――実際に今回シューティング要素を加えたことで、手応えは大きいですか?
梅田正直、本作はかなり攻めたジャンルじゃないですか。だから完成形としてどんなものになるかは何度もシミュレーションしたり、話し合ったりしながら作り上げました。形になって初めて、これなら面白いゲームになるという確信がある程度持てましたね。
――トークショーでは、シューティングゲームのファンが満足する作品にしたいと仰っていました。それだけアドペンチャーパートには自信がおありなのだなと感じました。
梅田仰る通りです。河本先生の発想やキャラクターの描き方、清原先生の造形デザインに対しては、きっと楽しんでいただける手応えは当初からありました。
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なので、シューティングパートがある以上は、「シューティングの要素が入っているアドベンチャーゲームではなく、シューティングの新たな形」として見せたいんです。このゲームがユーザーにとって面白くなるためには、本当のコアなシューティングファンが、「このゲームはシューティングとしても面白いよ」と言ってくれないと無理だなと思うんです。
僕らがおまけに入れている程度の認識だったり、ほんの少しの妥協でもあったりしたら、面白くなくなっちゃう。シューティングゲームの老舗メーカー「グレフ」がシューティングパートを担当してくれるので、2020年のグレフ新作としてコアなシューティングファンが「面白い」と言ってくれたら成功だと思っています。だからシューティングだけで遊べるモードも用意しているんですよ。
――キャラクターの要素もシューティングに落とし込まないといけない部分で、ここは特に難しかったという部分はありましたか?
梅田実はやってみたらキャラクター性とシューティングの両立はそんなに苦労しなかったんですよ。なぜかと言ったら、最初のアドベンチャーパートで、キャラクター性やストーリーに関して十分触れてもらった後に、VR椅子に乗せられてシューティングモードに突入する流れだからです。ユーザーとしては十分ストーリーやキャラクター性を見た後に、純粋にシューティングゲームとして楽しめる。
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――普段、シューティングゲームを遊ばない方に遊んで欲しい部分も大きいですか?
梅田そこは本当に大きいです。シューティングゲームは、レガシーなジャンルになって敷居が高くなっていますけど、やってみると適度な緊張感も相まって面白さが詰まっているんですよね。
ただ、シューティング要素のみだと、すでにシューティングの面白さを知っている人に向けて出すことになってしまう。新規層のファン獲得が難しく、コアなシューティングファンがすごく楽しめるゲームだとしても、なかなかセールスには繋がらない背景があります。せっかくなら、新規層も開拓できるような形を考えて作っているのが本作です。
きっかけが河本先生のシナリオ目当てに本作を始めたユーザーであっても、シューティングパートを遊んで頂くことで、シューティングゲームの面白さに気付いていただけると手応えを感じています。
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――シナリオ、デザイン、音楽と担当するスタッフ陣がかなり豪華ですが・・・
梅田誤解のないようにお伝えしておくと、ゲーム開発の中である程度コストが高そうに見えるクリエイターを起用したとしても、そこは限定的な部分に過ぎないんです。全体としてのバジェット(予算)はそこまで多いわけではありません。クリエイターコストは費用対効果が非常に高い部分だと思っていて、要となるクリエイションの部分でコストをケチってもしょうがないんです。
そのクリエイターが一生かけて培ってきた才能やノウハウについてのコストですから。かかっている価格より価値があると考えているんですよ。河本先生のシナリオとなれば一定水準以上がファンに期待されるし、きっと河本先生はその期待を超えてくる。
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――イザナギゲームズは日本のクリエイターの一番の持ち味を出していきたいという方向性が根底にありますものね。
梅田今のゲーム市場を見ると、巨大なバジェットを使ったAAAタイトルが目に留まりやすく、売れている部分は確かにあります。けれど、PC/Steam上などで、きちんと利益を出している低予算のゲームは多いんです。僕らはAAタイトルと呼んでいますけど、ランクを落としたバジェット感でも、日本のクリエイターの良さが詰まったゲームを作れば世界でヒットする勝算があると思っています。
なぜかと言うと、UnityやUnreal Engineといったゲーム製作するためのソフトウェアの発達に加え、パブリッシングの面でも流通経路としてPC/Steamのように接触しやすい環境があるからです。
――その思想を体現したのが『ユルキル』であり、今後のゲーム開発においても続けていくと?
梅田そうですね。今後もその方向性でいきたいと思っています。僕自身が日本の優秀なクリエイターや熱量の高いデベロッパーと一緒に仕事することにワクワクするんです。
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――今後、『ユルキル』に関してはどのようにPRや宣伝をやっていこうとお考えですか?
梅田言える部分とまだ言えない部分がありまして(笑)。言える部分では、本作はフルボイスにしようと思っているんですよ。キャラクターにしっかりとした声が当たってくるところは一つの訴求ポイントです。プロモーションとしては、ユーザーに触れていただける機会を多く設けたいなとは思っています。ユーザーの意見を吸収して、より良いゲームにしていきたいです。
――最後にユーザーに向けて、『ユルキル』のアピールポイントをお願いします。
梅田まず『賭ケグルイ』の河本ほむら先生の重厚な世界観、そしてストーリー。「東京ゲームショウ2019」においては、春秋千石と莇リナ、狂言回しのびん子の3キャラクターしか出てないですが、実際はかなりの数の執行人と囚人の組み合わせがあります。各章ごとに執行人と囚人たちのやり取りが見られますし、章を進めるごとに冤罪の裏に隠された人間関係や過去のしがらみも明らかにされ、彼らは何故、「ユルキルランド」に送り込まれたのかも明らかになっていきます。その過程はとても面白いと思います。
あとは、清原紘先生がデザインした耽美で繊細なキャラクターがシナリオとすごく合っているのも見所です。
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シューティングパートにおいても、2020年の「グレフ」新作として通用するものを作っています。「グレフ」であっても本格シューティングだけでマーケットで勝負するのはなかなか難しい現代において、僕らがどうすれば彼らの開発への熱い想いや、シューティングの面白さをユーザーに伝えることができるのかを考えた形が本作です。
なので、超本格的なシューティング、キャラクターの魅力、重厚な世界観、それが全て詰まったゲームだと思って発売を楽しみにお待ち頂けたらと思います。
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