Oink Games Inc.『Takeshi and Hiroshi』
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『Takeshi and Hiroshi』は兄弟の関係性を、ゲーム制作というテーマに乗せて描き出した、RPG要素のあるアドベンチャーゲームです。
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タイトル画面の印象とは裏腹に、カットシーン部分は精巧なクレイアニメとして手間の掛かったものとなっています。主人公は兄であるタケシと弟のヒロシ。タケシはゲームクリエイターに憧れる中学二年生で、根拠のない自信はあるものの、実際に何かを作り上げた実績はありません。
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弟のヒロシは年が離れており、タケシにとってもかわいい存在です。ヒロシは兄が作っている(とされる)ゲームを楽しみにしており、遊びたいと日々お願いしますが、実際に遊べるものを作れていない兄タケシは何かと理由をつけてはぐらかしてしまいます。
しかしそんなごまかしが長く続くわけもなく、ついにヒロシへ「遊べるぞ」と言ってしまうことに。なんとかしなければ……と考えた兄タケシの作戦は「さもゲームを遊んでいるかのように振舞うこと」、つまり弟の操作を横目に見ながら、画面だけであるハリボテをリモートで動かしてリアルタイムに演出しようというものでした。
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ゲームは「弟ヒロシが楽しいと思える演出」を上手に繰り出していくというシミュレーション型のシステムです。ヒロシに適切な量のモンスターなどを登場させることで、ギリギリの勝利を与えられれば、ドキドキ値とたのしさ値を大きくゲットできます。
言わば、画面を通じて兄弟だけのTRPGをやっているような感じでしょうか。しかしながら、弟ヒロシにとってみれば兄が作ったゲームを遊んでいるのと変わりません。兄タケシにしてみれば、自分の見栄を繕うための地道な言い訳なのですが……。
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このようにして兄弟の関係性が描かれていきます。兄タケシはゲームクリエイターとして、何を学んでいくのでしょうか。ゲームを作ることとはどういうことか、何のためにクリエイターを目指すのか、そうしたテーマが少しずつ開かれていきます。
しっかりとエンディングまで用意された本作は、アプリアイコンやタイトル画面から想像できないほどストーリーが組み込まれています。手軽さが中心となりがちな「Apple Arcade」のタイトルの中では、メッセージ性の強い手応えのある体験ができるでしょう。
Sirvo Studios『Guildlings』
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現代とファンタジーが合わさったような、不思議なRPGを体験したいなら『Guildlings』はいかがでしょうか?戦闘システムからアドベンチャー要素まで全てが個性的、現代っ子の姿がどこか懐かしい絵柄で描かれます。
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主人公コーダはケータイをいまだに与えられていませんでしたが、姉のシヴから古いスマホをプレゼントされました。ゲームはここから始まりますが、スマホはiPhoneの初期設定をもじったようなスタイルで遊び心があります。
ちょっと魔法的なデザインのスマホを起動すると、突如不思議な空間に飛ばされ、紫色のクリスタルとして動くことに。スマホのシステムは「世界を救うクエストをこなせ」と言ってきますが、何のことかわかりません。不思議な空間の奥まで進むと、やたらと長い利用規約にサインさせられてしまいます。
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現実世界に戻ってくると、ベッドの上で身動きがとれない状態に。姉のシヴによれば、スマホの魔力でコーダがギルドマスターになってしまったのだとか。ギルドマスターは体が固定される代わりに、現実世界をクリスタルとして移動でき、様々な物体に魔力で干渉できるようになります。
更に、世界を救うために必要なクエストを(どうにかして)設定することで、様々な人をギルドメンバーに、つまり仲間として迎え入れることができるのです。
まずは同じ部屋にいる父親から外出禁止で閉じ込められた姉のシヴをギルドメンバーにします。クエスト内容は「外出禁止令でシヴのデートが中止になってしまうという差し迫った危機を防ぐ」です!
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戦闘システムはかなり個性的で、いわゆるターン制ではあるのですが、基本的には「最後まで敵の攻撃を防ぎ切れば勝ち」といったものになります。敵の攻撃には回数が設定されており、それらを全てやりすごせれば戦闘終了という訳です。
また、その攻撃方法もバリエーション豊かで、単なるダメージの攻撃という訳ではありません。むしろ、こちらの体力となる数値は「スマホの充電量」であり、ダメージによって充電切れが近づくといった体裁です。
更に仲間には「気分」の要素があり、戦闘以外のアドベンチャー・インタラクトでも上下します。気分が悪いと適切にスキルを発動できなかったりとデメリットが大きくなるので、そうした管理も必要になってくるのです。
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スマホが登場するので、現代を舞台にした作品かと思いきや、魔法的な要素は何もコーダが持つスマホだけの特別なモノではない様子。姉のシヴはスタートアップというクラスとなっていて、「モノに命を宿す」という能力を使役します。
父親が風呂に入っている間に玄関から脱出を狙いますが、監視カメラが邪魔となり正攻法では抜け出せません。そこで、冷蔵庫の裏から出られる勝手口を開放するため「冷蔵庫に命を与える」ことになります。
しかしながら、冷蔵庫は「どうして自分が横に動けると思った?」などと言ってきます。車輪がついてるわけでもないので「そりゃそうだ」という感じですが、なぜかこのまま戦闘に。チュートリアルも兼ねて戦闘に勝利すると、冷蔵庫は小刻みに跳ねて横にどいてくれました。動けるじゃねーか!
と、こんな感じの緩いスタートで描かれる『Guildlings』ですが、アートワークは素晴らしく、アドベンチャーパートのインタラクト部分も小ネタが効いていて飽きさせません。はじめは自宅からの脱出という小さな動きではありますが、物語が進むにつれて広く大きな世界を歩む冒険となっていくでしょう。
2019年9月からサービス開始となった「Apple Arcade」の注目タイトルと、リリース目前のタイトルを紹介しました。「Apple Arcade」は月額600円のサブスクリプションサービスで、家族6人まで利用可能です。