『あつまれ どうぶつの森(※以下『あつ森』)』では水辺で“つりざお”系のアイテムを使用することでいろいろ魚を捕獲することができます。
その中にはフナやアジといった慣れ親しんだ魚から、ドラドにパイク、エンドリケリーにイエローパーチといったあまり聞き慣れない横文字の名前、つまり「外国の魚」も多数含まれます。
しかし、そんなカタカナっぽい響きの魚名でありながらも聞き覚えのある魚がいますよね…。
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そう、川で小さめの魚影を狙うとよく釣れる「ブルーギル」です。
アメリカから来た淡水魚!
ブルーギルはその英語の名前からも察しがつくとおり、北米原産の淡水魚です。
ブルーは青、ギルは鰓(えら)を指す語で、成魚は鰓蓋の後部が群青~紺色に染まることからこの名が与えられています。
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たまにボディー自体がほんのり青い個体もいるため誤解されやすいですが、実はそちらは名前の由来ではないんです(特に『あつ森』で釣れるブルーギルは青味が強くてキレイですよね)。
大きさは成魚でも手のひら大が基本。20センチを超えればかなりの大物と言えます。
で、なんでそんなアメリカンフィッシュが日本にいるのか。それは1960年代に食用魚として研究する目的で持ち込まれたものが野外に放たれたためだとされています。
その後、放流が繰り返された結果、今となっては日本各地でごく当たり前に、ひょっとするとフナやウグイなどよりも頻繁に見かける魚になってしまっています。
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このように凄まじい生命力と繁殖力ですが、日本の気候が原産地である北米に近いこと、天敵となる生物がほとんどいないことも彼らの繁栄を手伝っています。
……もっとも、原産地における天敵であるブラックバス(オオクチバス、コクチバス)も同様に広がってしまっているので、その点ではブルーギルも「こっちでもこいつらと戦わないといかんのか…」と、さぞうんざりしていることでしょう。
あ、そうそう。実は分類上もブルーギルとブラックバスは近縁(ともにサンフィッシュ科)なんですよ~。
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リアルでは飼っちゃダメ!!
ブルーギルはその生命力ゆえ在来の生態系を脅かす可能性があるとして、ブラックバスと同じく法律で飼育や輸入、生きた状態での国内輸送が禁じられる「特定外来生物」に指定されています。
よく見るとなかなかキレイでかわいい魚ですが、飼うのは『あつ森』の中だけにしておきましょう。
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近年では駆除を推進する活動も見られ、かなりブルーギルにとって風当たりの強い世の中になってきています。
とはいえもはや日本国内へあまりに広く、多く殖えすぎているため、もはや根絶は不可能に近い状態です。滅ぼすというより、これ以上の拡散を防止するのが重要と言えるでしょう。
おいしい?マズい?
なお、ブルーギルは原産地であるアメリカでは一部の地域(特に歴史的にシーフードが手に入りにくかった内陸部)で食用にされています。
大型の個体はちょうどフライパンにすっぽりおさまる大きさと形をしているため「パンフィッシュ」と呼ばれ、丸ごとムニエルやバターソテー、あるいはフライなどにして食されます。
ただ、やはり海産魚食文化が色濃い日本ではイマイチ受け入れられなかったようなのは現在の惨状を見ても明らかですね…。
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味については清浄な水で育ったものはあっさりした柔らかな白身でなかなか悪くないものです。
ただし、排水が流れ込んでいるような河川や淀んだ池で捕獲されたものは泥臭いことが多く、食用には向きません。
また、雑食性なので食べているエサによっても味が変わってきます。エビや小魚ばかり食べているものは比較的美味ですが、藻類を多く食べている個体はちょっとクセが出やすいように思います(経験談)。
あ、そうそう。でもブルーギルはリアルでも簡単に釣れて、これがけっこう楽しいんですよ(釣れすぎるので目の敵にする釣り人もいますが)。
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アメリカでも親が子どもたちに釣りを教える際に真っ先に立ち向かわせる相手なんだとか。チュートリアルの材料になってるわけですね。
『あつ森』で釣りに興味を持った方はブルーギル釣りにチャレンジしてみてはいかがでしょう?
『あつ森』博物誌バックナンバー
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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