『あつまれ どうぶつの森(※以下、『あつ森』)」といえば野生の虫や魚を捕まえることが大きなプレイ要素となっています。
さらに、ただ捕まえてコレクションするだけでなく、売却してお金に換えられるシステムまであります。
それぞれの生物は値が決まっているのですが、単に捕獲の難易度に比例して高値がつくというものでもないのが面白いところです。
中にはそこそこイージーに捕まえられる割に高値で売れるハイコストパフォーマンスなものも!
その際たる例が年間を通じて釣ることのできる「タイ」です。
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出現率も低くない上に売値は3,000ベルとお高め。図鑑に登録済み、博物館に寄贈済みでも釣れると嬉しい魚です。
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なお、あつ森で釣れるタイはその立派な魚体からして、おそらくリアルの世界でいうところの「マダイ」でしょう。
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マダイとは漢字で書くと「真鯛」。タイと名のつく魚は多数存在するため、その中でもオリジナルたる存在、タイ・オブ・タイであることをわかりやすくするため「真」の字をあてたものと考えられます。
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タイの仲間にはクロダイ、キダイ、ヘダイなどがおり、いずれも体型や顔つきはよく似ています。
マダイよりは安値がつくことが多いですが、基本的にどれも食用されます。
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ただし、ゲーム内でフータさんが話してくれるように世の中にはタイに縁もゆかりも無いのに「○○ダイ」と名付けられている魚がたくさんいます。
いわゆるタイの値打ちと評判に「あやかりタイ」という魚たちです。
……あやかりたいのはそれを売る人間なんですけどね。
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たとえば『あつ森』にも登場する「イシダイ」もそう。マダイがタイ科であるのに対してイシダイはイシダイ科に属し、さほど近縁というわけではありません。
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ほかにも有名どころだとフエダイとかコブダイとか、いろんな「あやかりタイ」が存在します。
どうやらタイを名乗る条件としては「赤っぽい」「平べったくて体高がある」「白身」このうちのどれか複数を満たしていればOKなようです。思ったよりザルですね……。
その証拠に、「これのどこがタイなの!?」という魚もちらほら。
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キンメダイのようにマダイに負けじと高価なものもあれば、値がつかないような下魚もおり、もはや玉石混交な有様なのです。
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でもまぁ名前なんて人間が人間の都合で勝手につけたものですからね。
それによってその魚自体の魅力が変動するものではありません。
名前に惑わされず、いろんな魚を見て食べてみると世界が広がるかもしれませんよ!
そしてその時「ああ、タイってやっぱりすごいんだなぁ…。」とマダイの魅力を再発見できることでしょう!
そういえばもうすぐお正月、タイを食べる機会を得やすい頃ですね。
それではみなさん、めでタイ気持ちで新年をお迎えください!
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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