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冬が旬?『あつまれどうぶつの森』で釣れる「フグ」について【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第34回は「タイ」です。

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冬が旬?『あつまれどうぶつの森』で釣れる「フグ」について【平坂寛の『あつ森』博物誌】
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※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
早いものでもう年の瀬です。
慌ただしさとともに寒さも本格化してきましたが、それにともない「あつまれどうぶつの森(※以下『あつ森』)でも、北半球設定ではこれまで見かけなかった生物が登場にするようになってきました。

たとえば海で釣れる「フグ」なんかもそうですね。


フグ系の魚としては夏季にハリセンボンやマンボウが出現していましたが、彼らと入れ替わりに「ふつうのフグ」が顔を出したかたちになります。

▲ハリセンボンも毒はないけれどフグの仲間

『あつ森』のフグは「クサフグ」!


…ところで、フグとひとくちに言っても実際のところはマフグ、トラフグ、ショウサイフグなど、とてもたくさんの種が存在しているわけです。
では『あつ森』で釣ることができるあのフグの正体は一体何者なのか?


グラフィックをよく見ると、灰色っぽいボディーに白いスポットが散りばめられており、胸びれの後ろあたりと背びれの付け根あたりに大きな黒い斑紋もあります。
さらに背びれとしりびれは黄色っぽく、目はオレンジ色…。


こうした特徴から、おそらくこのフグは「クサフグ」という種だと推察できます。
クサフグは全国各地の沿岸、あるいは河川の汽水域(海水と真水が混じり合う場所)に見られる小型のフグです。

▲本物のクサフグ。配色を見るかぎりたぶんコイツだよね。

なお、クサフグは毒素(テトロドトキシン)を含む部位が多い上に体そのものが小さいため可食部が非常に少なく、一般に食用とされることはほぼありません。
そのくせ魚釣りをしていると、やっかいなほどよく釣れるので釣り人からは嫌われがちです。よく見るととてもかわいい魚なんですが…。

フグの旬は冬?


ところで、『あつ森』においてフグは冬に限って現れますが、リアルのクサフグは一年中その姿を見せてくれます。むしろ、夏や秋の水温が高い時期の方がより活発なような…。

ひょっとするとこの設定は「フグの旬は冬」という通説に由来しているのかもしれません。

食材としてのフグの旬については諸説あります。たとえば食用に供されるフグの代表格であるトラフグやマフグの産卵期が春先から梅雨時であるため、冬のうちに栄養を蓄える=身が太り、味が良くなるとするもの。
あるいは春の産卵期に突入すると卵巣の毒性が強まり中毒を起こしやすく、それを避けるために冬に食すことに起因するものなどいろいろです。

▲冬といえば、フグといえばてっちり鍋!

個人的には「冬になると熱々のてっちり鍋がよく売れるから」という商売人目線のご都合も関わっているように思いますが……。

なお、関西方面ではフグのちり鍋を「てっちり」、刺身を「てっさ」と呼びますが、この「てっ」と「てっぽう」の「てっ」だと言われています。「あたれば死んでしまう」という共通点に由来するようですが……。

▲「てっさ」ことフグの刺身

漢字で書くと「河豚」


なんにせよ、『あつ森』のあのフグを見てみたい!という人はべつに冬でなくとも良いので手頃な漁港を川の河口、汽水域を覗いてみるとよいでしょう。
川にフグがいるの?海の魚でしょ?と思われるかもしれませんが、クサフグをはじめ一部のフグは真水への耐性を備えているのです。

▲こちらは淀川で釣れたシマフグ。フグが川に入り込むのは日本でもそう珍しいことではないのです。

その証拠にフグは漢字で書くと「河豚」です、川に棲むブタのように丸っこくてブーブー鳴く魚という意味なのでしょう。
なお、海外には汽水はおろか完全な淡水域に生息するフグも見られますから、いよいよ川魚の一角として扱うにふさわしい存在と言えるでしょう。

楽器にもニッパーにもなる歯


……さらっと流しましたが、フグは鳴きます。
身に危険が迫ると水や空気を吸い込んで膨らむとともに、上下の歯を擦ってグッグッ、ギッギッと鳴いてこちらを威嚇してきます。

フグは上下左右4枚の歯を持ち、これらが癒合して大きなクチバシ状になっています。
貝やカニなどの硬いエサを好んで食べるため、顎の力も強靭!歯ぎしりで敵を威嚇するなど簡単なわけですね。
人間からすれば、そんな仕草が余計にかわいらしく見えてしまうんですが…。


あ!そうそう。フグはその毒ばかりを警戒されますが、釣れた際などに扱い方を間違うと指先を噛まれて怪我をすることがあります。
特に大型のトラフグなどはいよいよニッパー顔負けの切断力を備えていますので、みなさんどうぞフグの扱いには気をつけましょう。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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