※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
6月!今年もいよいよ夏到来です。もちろん「あつまれどうぶつの森(以下、あつ森)」の世界にも(北半球設定プレイの場合)。
陸上にはニジイロクワガタなど夏を感じさせる虫が出現しはじめ、水辺では熱帯産の魚たちが釣れるようになってきます。
特に、今月の目玉となる魚といえばやはりこれでしょう。
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アロワナ!!
魚にあまり詳しくなくとも、なんとなく名前は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
『あつ森』のアロワナは「アジアアロワナ」!
なお、アロワナの仲間は東南アジア、オーストラリア、南米に数種類が生息しています。『あつ森』に登場する「アロワナ」は真っ赤なボディーと大きなヒレから、特に希少で高価な「アジアアロワナ」だと判断することができます。
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アロワナは容姿の美しさから、いずれの種も観賞魚として養殖、販売されています。その中でもアジアアロワナは特に希少かつ人気が高く、まさに高級観賞魚の頂点ともいうべき存在なのです。
その価格たるや、安価なものでも1匹あたり数万円という高値。高価なものでは実に数十万、数百万円の値がつくこともあるとか…!
というのも、アジアアロワナは産地によって色彩の変異が大きく、発色の具合やサイズによって値段に大きく差がつくのです。
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『あつ森』のアロワナのように真っ赤なタイプはそれらの中でも特に高価な部類。しかもかなり大きな個体のようですから、値付けをするとすれば相当なお値段になるものと思われます(※現実にはワシントン条約などの法によって流通が養殖された個体のみに制限されており、野生の個体を捕獲して販売することは不可能です)。『あつ森』内でも売値は10,000ベルと川魚の中ではドラドに次ぐ高額だったりします。
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ちなみに彼らは太古の昔からその姿をほとんど変えていない、いわゆる「古代魚」のひとつだと言われています。
美しさもさることながら、そうしたロマンに想いを馳せさせてくれるあたりも人気の秘訣なのかもしれません。
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独特の顔つきは水面(水上)のエサを食べるため!
アロワナ類の特徴はなんといってもその独特な顔つきでしょう。大きく裂けた口は受け口で、クリッとした丸い目は顔の先端近くについています。
この面差しがなんともカッコいいような、かわいらしいような…?
僕は小学生当時にペットショップでこの魚を初めて見た際、「なんて間抜けな顔をした魚がいるんだ……。」と思ったことをはっきり覚えています。
今ではこの顔つきこそがアロワナのチャームポイントだ!と考えをあらためてはいますがね。
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ところで、この顔つきはちゃんと彼らの生態を反映したある種の「機能美」なのです。
アロワナ類はいずれも肉食ですが、水中の小魚よりむしろ昆虫など水面、あるいは水上の獲物を意識した生活を送っています。
上向きの口や目はそうした獲物を水中から確実に捕らえるためのものなのです。
なお、水上のエサを捕食する際は激しいジャンプをしてみせます。
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アロワナはこのように視覚に頼ってエサを探すため、たいへん優れた視力を備えています。
ゆえに実際に釣りで狙う際はふとしたことで仕掛けを見切られるので苦労するものです。しかも、口周りの骨格がとても硬いので、食いついても釣り針がなかなか掛からないという……。
というわけで、いろいろと個性的な魚なのです。アロワナは。
みなさんも『あつ森』でアロワナが釣れたら、すぐ売りさばくのではなく、ちょっとその造形美を観察してみてください。
グラフィックの再現度も、淡水魚の中では指折りのクオリティーですしね!
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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