※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
読者のみなさまこんにちは!生物ライターの平坂です。
最近、PCとニンテンドースイッチへ向かいすぎていたため肩こりがひどく…、運動不足解消のため虫捕りに行ってきました!夏だし!
ただ、僕が住んでいる沖縄ではクワガタがたくさん採れるかわりに、本土でおなじみの「あの虫」はいないんです…。その虫とは……。
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カナブン!
実はこのカナブン、日本では本州・四国・九州やその周辺離島にしかいないのです。北海道や沖縄では見られないんですよ。
夏の虫たちの中では決して花形ではないんですが、姿形や名前の響き、簡単に出会える身近さなどもあり、カブトムシやクワガタ、タマムシなどにはない独特の親しみを覚える甲虫です。
いざ会えなくなると寂しいので、かわりに「あつまれどうぶつの森(※以下『あつ森』)」内で捕まえてきた次第です。
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ブンブン飛ぶからカナブン!
カナブンといえば誰もがその名を聞いたことのあるメジャーな昆虫です。しかし、彼らは雑木林の多く残る里山を好む虫であるため、都会に暮らしている方の中にはその姿を見たことがないという人も多いはずです。
「えっ、カナブンなんてどこでもいるじゃん?公園の灯りとかに飛んでくる緑色のあれじゃん?」と考えているあなた!それ、本当にカナブンですか?要精査ですよ。
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一般的に、「カナブン」という名はコガネムシの仲間の総称として用いられることも多いのです。特に全国の都市部から山地まで広く見られる「アオドウガネ」あたりはよくカナブン呼ばわりされますね。それ、誤カナブンです。
ちゃーんと日本には「カナブン」という標準和名をもつ甲虫がいるのです。
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真の「カナブン」はクワガタやカブトムシと同様にクヌギやコナラなどの広葉樹の樹液や腐った果実に集まる甲虫で、やはりコガネムシの仲間ですが、とりわけ角ばった体型が特徴です。頭部なんかほぼ四角形ですからね。
体色はなんとも表現しにくく、強いていうならば「光沢をともない、緑色の混じる真鍮色」という、シックながらも美しいものです。
また、体長は大きなもので3センチほどとコガネムシの仲間にしてはやや大きめ。そしてこのサイズの甲虫にしては盛んに飛びまわります。
「ブンブン飛ぶ」「金色(かないろ)の虫」であることから「カナブン」という名がついた、というわけです。
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『あつ森』のカナブン は「アオカナブン」
しかし、『あつ森』に登場する「カナブン」は「ちょっと緑色がかっている」なんて程度ではないほど鮮やかな緑色をしています。
これはおそらく、「アオカナブン」というよりメタリックグリーンが強く発色する種をモデルにしているためでしょう。「カナブン」は一種類ではなく、アオカナブンをはじめ漆黒のクロカナブン、メタリックブルーのフクエアオカナブンなど日本国内でも複数種が分布しているのです。
もちろんカナブンの名をもつ種は海外にもいます。中には日本のものよりも鮮やかな体色をもつものや、ツノが生えたものなどバリエーションはさまざま。カナブンって実は奥の深い虫なんです。
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2011年まで幼虫が見つからなかった!
奥が深いといえば、実は日本産のカナブンもその生活史が近年まで謎に包まれていました。
成虫は雑木林へ行けばたくさん見つかるのですが、その幼虫はずっと自然下で見つかっていなかったのだそうです。
それが2011年になってようやく、クズという植物の群落下に生息し、積もった腐植物を食べていることが昆虫写真家の鈴木知之氏によって明らかにされました。
身近かつ古くから知られていた生物にも、つい最近まで人間がたどり着けない大きな謎が残っていたというのはなんともロマンを感じる話です。
さて、『あつ森』では北半球設定の場合、出現期間は6~8月です。これは現実の日本における成虫の活動時期にも一致します。みなさん、採り逃がしのないようお気をつけください!
『あつ森』博物誌バックナンバー■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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