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2022年2月24日(PC版は2月25日)コーエーテクモゲームスよりPS4/ニンテンドースイッチ/PC向けに発売予定の『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~』。発売に先駆けてPS4版のプレイレポートをお届けします。
本作はその名の通り錬金術が物語の中心となるRPGです。今年25周年を迎える『アトリエ』シリーズの最新作で、2015年に発売された『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』(以下、前作)の続編にあたります。とはいえ、前作をプレイしていなくても心配ありません。本作は過去のストーリーを知らなくても楽しめる構成になっていますし、本編とは別に前作のあらすじを紹介するムービーも用意されています。
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筆者は前作の大ファンです。前作は満足のいくアイテムが完成するまで好きなだけ試行錯誤できるのが大きな魅力でした。その魅力は、錬金術のシステムがわかりやすく、ストーリーに時間制限がないことで生まれたと考えています。
筆者はその後『アトリエ』シリーズをプレイする機会に恵まれませんでした。久しぶりにプレイする『アトリエ』シリーズは果たしてどんな進化を遂げているのか。期待と不安に胸を膨らませながらプレイしたその内容を、前作のプレイヤーだけでなく前作を知らない方や『アトリエ』シリーズは初めてという方にもわかりやすくお伝えします。
◆迷い込んだ先は夢から生まれた世界
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主人公の名前はソフィー。錬金術士だった祖母にあこがれ、祖母のようにみんなを幸せにする錬金術士になることを夢見る少女です。初めは失敗して釜を爆発させていたソフィーでしたが、ふとしたきっかけで師匠のプラフタに出会いました。プラフタから錬金術を教わり、数々の冒険を経た彼女は、錬金術士として一人前に成長します。
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ソフィーは祖母と同じ公認錬金術士になることを決意し、家族同然のプラフタを連れて旅に出ました。しかし、旅の途中、二人は突然空中に現れた渦に飲み込まれ、離れ離れになってしまいます。
ソフィーが意識を取り戻すと、そこは見知らぬ町でした。一見普通の町に見えますが、人々はここが元の世界ではなく、夢から作り出された「異世界」だと主張します。半信半疑のソフィーでしたが、まずは行方不明のプラフタを探さなければなりません。不思議な夢の世界で錬金術士ソフィーの冒険が始まります。
◆そもそも錬金術ってなにができるの?
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『アトリエ』シリーズで錬金術と呼ばれるのは、採取した材料を調合してアイテムを作り出す技術です。一般的にクラフト機能と呼ばれるものと同じですね。錬金術士の拠点をアトリエと呼び、材料の採取は野外で、調合はアトリエ内の釜で行います。
この錬金術は一般的なクラフト機能と違い、プレイヤーの工夫しだいで完成品の質が大きく変わるのが特徴です。質の良いアイテムを作るには、レシピに合った材料を集めて、上手く調合しなければなりません。調合のルールはわかりやすく簡単に覚えられますが、極めれば極めるほどその奥の深さに驚かされるでしょう。
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錬金術ではありとあらゆるアイテムが作れます。戦闘中の攻撃や回復に使うアイテムだけでなく、武器や防具も作り出せます。強い魔物を倒せなくて困ったとき、普通のRPGなら弱い魔物を倒してレベルを上げますが、本作では錬金術でアイテムを強化して戦いを挑むのも立派な攻略法です。
錬金術の面白さは試行錯誤の面白さでもあります。材料をどのように調合すれば理想のアイテムが作り出せるのか。それを試行錯誤していると、楽しくてあっという間に現実世界の時間が過ぎてしまうほどです。
◆プラフタだけどプラフタじゃない
ここでは序盤のストーリーを紹介します。物語の核心には触れませんが、新鮮な気持ちでプレイしたい方は次の章まで読み飛ばしてください。
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異世界に迷い込んだソフィーは、商人兼調達屋のアレットと用心棒のオリアスに出会います。彼女たちによれば、この世界は「夢の神エルヴィーラ」によって創られ、そこに住む人々はすべてソフィーと同じ世界からエルヴィーラに導かれて来たとのこと。
エルヴィーラに導かれるのは強く叶えたい夢を持っていて、エルヴィーラ自身がその夢を気に入った人です。この世界に来た人々は自分の夢が満たされると元の世界に戻りますが、それまではどれだけ時間が経っても歳を取ることがありません。
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ソフィーは行方不明のプラフタが気がかりです。そんなソフィーに、オリアスはプラフタという名前の錬金術士なら町はずれのアトリエに住んでいると教えます。
三人はプラフタが住むアトリエを訪れましたが、そこにいたのはソフィーの知るプラフタ(人形)とは別の小柄な少女でした。ところが、ソフィーには彼女がまったくの別人とは思えません。
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この世界のプラフタはソフィーが本当に錬金術士なのか疑います。しかし、ソフィーが見事な錬金術を披露すると、謝罪してアトリエの提供を約束しました。そして、ソフィーが探す本来のプラフタ(人形)についての仮説を語り始めます。
「この世界には様々な時代の人間が集まっています。現在の人間だけでなく、過去の人物も未来の人物もいるのです。もし、ソフィーの探すプラフタと自分が本当に同一人物なら、それは成長した自分の姿かもしれません……。」
粘液状の愛らしい魔物。色によって強さが変わり、倒すと材料となるプニプニ玉を落とす。スライムでも、ぷよでもない。
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◆広大なマップで錬金術の材料採取
錬金術ではなにを作るにも材料が必要です。材料となる素材はマップ上の決まった場所で採取でき、簡単な材料ならアトリエの周辺や町の中でも採取できます。ゲームを進めるにつれて移動できるマップが増え、珍しい材料や高い品質の材料が手に入るようになります。
アトリエの外ではアイテムを持てる量に限りがあります。本作は最初から持てる量が多く、プレイ中に持ちきれなくなることはありませんでした。また、一度でも入手した素材は、採取場所に立つだけで採れるものが表示されます。
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世界は複数のマップが相互につながった形をしており、ゲームが進むとワールドマップからの移動や、行ったことのある場所へのショートカット移動が可能になります。一つのマップは前作に比べてかなり広く、ゲーム序盤は世界の広さを存分に実感できました。
本作の天候はランダムに変わるものではなく、マップごとに固定されています。あるアイテムを使用すると天候を変えられますが、天候が変わると採取できる素材だけでなく、マップの地形そのものがガラリと変わります。例えば、雨の天候から晴れの天候に変えると、川が干上がって通れるようになるのです。マップ全体が天候を利用した巨大なパズルになっていると言っても良いでしょう。
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今回のプレイでは確認できませんでしたが、錬金術で作った道具を使った採取や、ミニゲームを通じて行う「大採取」というシステムも存在します。
びっしりとトゲの生えた丸い木の実。木を揺すると落ちてきて痛いが、材料としても役立つ。栗ではない。
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◆納得のいくまでやり直せる調合
材料となる素材が採取できたら次はそれを調合してアイテムを作ります。調合するにはまずレシピの修得が必要です。前作にあった「レシピ発想」システムは健在で、プレイ中に特定の条件を満たすと、それがきっかけで新しいレシピを思いつきます。
調合はパズル仕掛けです。それぞれの材料は色のついたパネルを持っているので、このパネルを重ならないように並べていきます。パネルには様々な形があり、移動や回転をしながら最適な配置を探す必要があります。言葉で説明するとわかりにくいですが、パズルは視覚的に表現されているので、実際にプレイすればすぐに覚えられるでしょう。
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同じ色のパネルを一定数置くと、アイテムに特別な効果が現れます。例えば、回復薬の回復量が上昇したり、状態異常が治せるようになったりします。前作は効果が現れる基準がややわかりにくかったのですが、本作ではあと何個パネルを置けば次の効果が現れるのかが、見た目ではっきりわかるようになりました。
筆者が一番嬉しかったのは、材料の配置を好きな手順まで戻ってやり直せる機能(いわゆるアンドゥ、リドゥ)や、調合の途中で材料を選び直す機能が追加されたことです。材料を自動で配置してくれる機能もあり、さらに試行錯誤が楽しくなりました。
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調合は簡単になっただけではありません。パネルを上手くつなげることで強力な効果が生まれる「リンク」や、特定の条件がそろうと仲間が調合を助けてくれる「協力スキル」といった新要素も追加され、さらに奥が深くなっています。
また、ゲームを進めるとソフィーだけでなくプラフタでも調合できるようになります。レシピは別々になっており、ソフィーにしか作れないアイテムやプラフタにしか作れないアイテムが存在します。
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全体的に見て、前作の調合のわかりやすい部分はさらにわかりやすく、奥の深い部分はさらに深く掘り下げられた印象を受けました。特に、試行錯誤を助けてくれる機能が大幅に強化されたのは嬉しい悲鳴です。
魔物に投げつけて使う攻撃用アイテムの総称。普通の攻撃よりはるかに強力。様々な種類があり、相手の弱点に応じて使い分ける。
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◆みんなを幸せにする錬金術士
主人公のソフィーをはじめ、個性あふれる性格と魅力的な容姿のキャラクターが多数登場するのも本作の特徴です。ゲーム中は頻繁にイベントシーンが挿入され、キャラクターがフルボイスで会話します。キャラクターは採取や調合、戦闘といった場面でも多彩なセリフで語りかけてくるので、知らずしらずのうちに親しみを感じることでしょう。
キャラクターには友好度というパラメーターがあり、キャラクターごとのストーリーを進行させると上昇します。友好度が高まると調合で発動する協力スキルが増えていきます。
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ソフィーは前作と変わらず、純粋にみんなを幸せにしたい思いから行動します。ストーリーの冒頭で異世界に飛ばされてしまったのも、渦に吸い込まれそうになったプラフタ(人形)を助けようとしたからです。冷静なプラフタ(人形)は、このままでは二人とも渦に飲み込まれるとソフィーに警告しますが、ソフィーはプラフタ(人形)の手を離しませんでした。
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他人の幸せを願うと言ってもソフィーは決して聖人君子ではありません。人並みの欲もありますし、怒ることも悩むこともあります。筆者はそういう人間味のあるところがソフィーの魅力だと感じています。
前作の冒険を経てソフィーは精神的に成長しました。そのためか、天然ボケらしい行動はあまり見られませんでした。錬金術や戦闘の腕前も上がっていて、ゲームはある程度レベルが高い状態から始まります。
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今回、戦闘の新要素は十分に評価できませんでした。今回のプレイではボスバトルまでたどりつけず、強い魔物と戦う機会がほとんどなかったためです。
本作には時間経過の概念はありますが、依頼の達成期限以外に時間制限らしきものはありませんでした。前作のように心ゆくまでアトリエにこもって錬金術に没頭できそうです。
主人公が特定の樽を調べたときに発するセリフ。本作では町中に大量の樽が並んでいるので、このセリフを探すのは大変かも。
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◆シリーズ未経験者にもお勧めできる正統進化形
本作は前作『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』の正統な進化形です。前作で評判の良かった要素をそのまま発展させ、気になっていた要素は改善されています。
前作がそうであったように『アトリエ』シリーズの入門としてもお勧めできる作品です。