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対戦格闘ゲームブームの火付け役となった、カプコンによる1991年稼働のアーケードゲーム『ストリートファイターII』。そのラスボスとして登場したベガは、悪の秘密結社シャドルーの総帥です。
下部組織や部下を操って暗躍しつつ自身も優れた格闘家であるベガは、当初はCPU専用キャラとしてプレイヤーの前に立ちはだかりました。そのビジュアルや動きはインパクト抜群で、面長の顔立ちに軍服姿というルックスを指して荒俣宏さんの小説「帝都物語」の加藤のようだと言われたり、サイコクラッシャーアタックで画面を右に左にと往復する姿は、マンガ「炎の転校生」の主人公・滝沢昇になぞらえて「国電ベガ」と呼ばれたりしていたように記憶しています。
補足しますと、国電は日本国有鉄道の略称で、今でいうJRです。そして「炎の転校生」の滝沢は、国電(の山手線)が環状線であることになぞらえて「走りながらストレートを放ち、かわされたら壁を蹴ってUターンしてもう一度ストレートを放つ」二段構えの必殺技「国電パンチ」の使い手。サイコクラッシャーアタックを連発するベガの動きがそれに似ていたので、一部で国電ベガと呼ばれた…というわけです。
ここまででもすでに相当濃いのですが、ベガ自身を含むシャドルーの四天王がプレイアブルキャラになった92年稼働のアッパーバージョン『ストリートファイターII'(ダッシュ)』で彼の存在感はさらに増すことになりました。
サイコクラッシャーアタックで接近した(orガードされた)あと、強引に投げを狙っていく戦法・通称「サイコ投げ」や、ダブルニープレス→しゃがみ中パンチ→立ち中キック→ダブルニープレス…のループで延々と固め続ける「ダブルニーハメ」がとにかく強烈で、当時のゲームセンターでは対戦台の向こう側から灰皿が飛んできたり、ベガの使用が禁止される店舗も出てくるほどでした。(当時のゲームセンターは喫煙しながらゲームをプレイできるのが普通で、コントロールパネルの上によく灰皿が置かれていました)
こうして「ラスボスらしい」ともいえる悪評を轟かせるにいたったベガは、1994年に公開されたアニメ映画『ストリートファイターII MOVIE』でさらに輝きます。俳優・声優の日下武史さんによる、悪の総帥というにふさわしい重みのある演技、今のベガに通ずる恰幅のある体型、そして、リュウとケンが2人同時に挑んでもはねのける圧倒的な強さ! 劇場に観にいって感動した筆者は、まんまとスーパーファミコン版の『スーパーストリートファイターII』を購入してしまいました。
そして、さらにその翌年となる95年にはアーケードで『ストリートファイターZERO』の稼働がスタート。作中の時系列は『ストII』の前日譚にあたる作品ですが、上記のアニメ映画になぞらえてプレイヤー2人がリュウとケンを操作してCPUのベガと戦える「ドラマチックバトルモード」が用意されていました。アニメ映画のVHS(いわゆるビデオテープですね)まで購入していた筆者は、友人や兄弟とこのモードもニコニコ笑いながらプレイしていたものです。
今思えば、筆者にとっての「ストIIブーム」はベガが作った…ともいえるかもしれません。そして、そんな思い出話を書いていたらちょうどシリーズ最新作の『ストリートファイター6』が発表されました。まだ登場するかどうかすら明らかになっていませんが、次のベガはどんなインパクトを味わわせてくれるのだろう?と今から気になっています。