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2020年7月に兎咲ミミさんと空澄セナ、8月に英リサさんと橘ひなのさんの2人がデビューしたのに続き、如月れんさんは2020年10月18日にデビューを果たしました。5人を合わせて「同期」として括られることも多くあります。
黒のショートボブで、毛先に向かってボルドー~ワインレッドに変化していくグラデーションが特徴的で、それに合わせるように服装や瞳の色も黒/赤というツートーンで揃えています。落ち着いたトーンかつ女性としては低めの声、身長も165cmと高身長ということもあり、「ぶいすぽっ!のイケメン枠」という声もあがっています。
「先輩や同期と違って、そんなにゲームをやってきていない。『Apex Legends』とかも友達と合わせてプレイするくらいしかやってきてないし、基本エンジョイ勢と言っていいんだろうなと。これからの成長枠だと思ってください。」
彼女は初配信でこのように話しました。
この連載の中でも書いてきましたが、「ぶいすぽっ!」はe-Sportsとの関わりが深く、FPS~サバイバル系ゲーム配信やそれらに類する様々な大会への出場を主な活動とするVTuberグループ、この軸は改名後から現在に至るまで大きくブレてはいません。
ですが、「大会のために真剣にプレイする」「プロ顔負けのプレイを見せ続ける」ことは、あくまでリスナーを楽しませる要因であり、ゲームを楽しむ手段というわけではありません。そのことも重要視しているのが、如月れんさん含めた5人のデビューによって方向づけられたように思えます。
「成長枠」と自分を評しつつ、その成長をリスナーとともに楽しんでもらいたい。そのような目線のなかで彼女は配信を続け、『Apex Legends』『VALORANT』を中心にプレイ配信し、すこしずつ上手になっていく自分自身を届けてきました。
リスナーから「このあとのVCT見る?(VCT:VALORANT Champions Tourのこと。『VALORANT』での世界規模大会)」と聞かれると、「もちろん見るよ!」としっかりと返事するほど、もともと彼女はe-Sports大会を観戦することが趣味。
それゆえ、細かい戦術などのゲームへの理解は深く、プレイスキルがあがることで徐々にこなせるようになっていきました。両ゲームとも複数人チームで勝利を目指すゲーム、「あたしは配信者向きの性格ではなくて、裏方のほうが性に合っている人間」という自己評価も相まってか、れんさんはサポート役に徹することで勝利をもぎ取っていきます。
ぶいすぽっ!メンバーと配信を共にする時は、ボケにボケが重なっていくような特有のムードのなかでもしっかりツッコミし、時には解説をするという役回りを務めており、ぶいすぽっ!内でも随一の常識人ポジションとして、なによりぶいすぽっ!メンバーのなかでほぼ唯一「急に狂人にならない」という謎の安心感すら感じさせてくれる存在です。
どこか冷静に、どこか俯瞰し、ぶいすぽっ!メンバー一人一人のキャラクターを捉えていた彼女。2021年9月に「ぶいすぽっ!秋の抜き打ちテスト~抜け出せ学力ブロンズ帯~」を自身の放送枠にて配信しました。
「ぶいすぽっ!メンバー全員が『ファンのみんなが学力テストを待ってる』というのは分かっていた。でもどういう風に作っていくのか?進めていくのか?そもそも普段なずなさんが企画して進めるけども、なずなさんが企画側に回ってしまうのはどうなのか?と思って中々踏みだせてなかったことだった」
「あたしはFPSをやってこなかった代わりに、クリエーターとの繋がりがあったので、彼らに頼らせてもらった」
「ありがたいことに企画を任せてもらえたから、自分の面白いようにやりたいし、面白いと思えるものを作りたい」
ということもあり、企画・台本・配信・ロゴマークなどを外部スタッフやクリエーターに任せ、自身は実際の問題作成と採点を担当。個人チャンネルとしての配信としては突飛なほどの、「一つの番組」といっても差し支えないクオリティの配信となりました。最大同時視聴者数 (同接数) は約5万5000人を記録し、「ぶいすぽっ!」のファンダムの強固さ・幅広さを一目に示しました。
「あたしは箱から恩恵を受けているけども、あたしは箱に貢献できていることは特になかった。VTuberになる前には裏方の経験もあったので、自分のやり方で貢献したいと思った。」
「正直なところ、配信の中で『これを伝えたい』『これが面白い』ということを伝えきれてなかった。自分の中で『何が面白いのか?』が定まり切ってなかった。かなりフワっとした状態で配信してしまっていたと思う。」
抜き打ちテスト配信を振りかえる30分ほどの雑談枠で、彼女はこの企画についての反省のみならず、1年ほど続けてきた自身の配信について、さまざまな感情を吐露しています。
ですがこの企画が示した波紋は、ぶいすぽっ!というグループに大きな波となって帰ってくることになりました。
先の配信から約2か月後、2021年11月27日にニコニコ動画にて「リモートビストロクイーン決定戦」が配信され、翌月からは公式番組「ぶいすぽ激ロー」(正式名称:ぶいすぽっ!激烈かしましロード)として1月に1度ペースで番組放送がスタートすることになったのです。
口達者かつ漫才のノリも理解しているメンバーが、それぞれの個性・キャラクターを活かし、さながらテレビ番組のパネラーとなって存分に力を発揮していくという座組。これはまさに「抜き打ち学力テスト配信」と同じ格好です。
ホロライブ、にじさんじ、774 inc.、のりプロといったVTuberグループでは、YouTube上での配信だけに留まらないバラエティ豊かな放送を多数企画し、リスナーやファンに届けています。
ぶいすぽっ!でも以前にはアニメ作品やマンガ作品を一度は制作していましたが、時間経過とともに道を閉ざしていました。そんななかにあって、ふたたび公式主導のもとに「YouTube外での活躍の場」を設けることになりました。
直接的な影響がどれほどあったかは不明ですが、「ぶいすぽっ!のメンバーはゲームをするだけでは勿体ないタレントや魅力を持っている」ことをしっかりと示していたという点で、如月れんさんによる「抜き打ち学力テスト配信」は一つの試金石となり、現在へと繋がる起点となったと捉えることもできます。
公式アナウンスではないもの、2022年 (令和4年) 2月23日には所属タレントのYouTube合計チャンネル登録者数が262万2400人を記録し、日本国内のVTuber事務所・グループにおいてホロライブ、にじさんじに次ぐ3位に浮上したというニュースもありました。
いちタレントとして「自分にとって何がやりたいのか?」という自己言及や悩みは、そう簡単に決めきれるものでありません。自身のポジションやそのキャラクターをどのように活かしていくのか?如月れんさんらしい活躍を期待したいところです。
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