
みなさん、ホラーゲームは好きですか?私は苦手です。ゾンビに追いかけられるのも怖いし、物陰から幽霊が飛び出すのも嫌だし、振り返ったら急に誰かいるのも無理です。
そんな怖がりなプレイヤーである筆者の目に、ふと入ってしまったタイトルがありました。それがホラービジュアルアドベンチャー『アパシー 鳴神学園七不思議』です。
本作は、数々のホラー作品を世に送り出してきた飯島多紀哉氏の最新作。1995年にスーパーファミコン向けとして発売された『学校であった怖い話』の世界観や登場人物を踏襲しつつ、新たなシナリオやエンディングを多数収録したタイトルです。

さて、ホラーゲームが苦手な私ですが、『アパシー 鳴神学園七不思議』にはグッと惹かれるポイントがありました。それがキャラクターイラストです。耽美系イラストレーターの倉馬奈未氏が手がけているのですが、幻想的なビジュアルの登場人物たちは怖くもあり美しくもあるという不思議な印象を与えており、彼らの紡ぐ物語にとても興味が湧いてしまったのです。
というわけで、本記事では『アパシー 鳴神学園七不思議』のプレイレポをお届けします。一部文章やイラストにネタバレとなる表現が掲載されているので、ご留意ください。
没入感の高い語り演出と、豊かな文章表現による不気味さが魅力

プレイヤーは鳴神学園新聞部の新人「坂上修一」となり、学校新聞の怖い話の記事を書くために七不思議の集会を行います。しかし、現れた語り部は7人ではなく6人……。ずっと待っているわけにもいかず、癖のある学生たちから怖い話を聞いていくという物語です。
この時点で怖い。予定されていた人数が揃わない定番のシチュエーションが怖い。
筆者のボヤキは置いておいて……主人公の状況は、部室で怖い話を聞くだけです。そう考えるとあまり怖くないような気もしますが、話が始まってすぐに感じたのは、雰囲気づくりが巧妙であること。彼らの話に合わせて、背景グラフィックや登場人物が変化するので、プレイヤーの気持ちはあっという間に、教室から各物語にどっぷり。語り部による一人称視点の文章もシチュエーションへの没入感を高め、徐々に空気が重たくなり陰鬱さを感じられました。

文章表現では、五感に関する描写の生々しさが印象的でした。なかでも、においに関するリアリティはプレイヤーのメンタルにダイレクトに影響を与え、見た目のグロさよりも響く、絶妙な気持ち悪さを演出していたと思います。詳細はぜひプレイしてほしいのですが、とにかく後味に残る怖さが体験できるでしょう。
怪談だけじゃない!個性的な語り部によって紡がれる多彩な七不思議

また、語り部たちによるお話のバリエーションがとても豊富でした。いわゆる怪談話や伝承、妖怪のようなオカルトだけでなく、SF要素のある話や流血描写の多いスプラッター系ホラーなど、多岐に渡る物語が展開します。
筆者は舞台が学校であり、学生たちが集まって話をするというシチュエーションだったので、トイレの花子さんやメリーさんのような怪談がくると身構えてプレイをスタートしました。しかし、いきなり田舎でバイトすることになったり、怪しいクラスメイトの話を聞かされるなど、怖いだけでなく後ろ髪引かれるようなお話もあり……。まったく毛色の異なるエピソードが楽しめるので、ひとつ終わるとすぐに次の人の話を聞きたくなりました。

語り部というシステムもストーリーの多様さに寄与していました。本作で七不思議を話すメンバーは、ノリの良い生徒・ナルシストな生徒・ちょっと暗い生徒など、とても個性が強いのです。そのため、語り口調にばらつきがあり、軽いテンションで話すのが逆に怖さを生んだり、淡々と事実を告げられるので背筋がぞわぞわしたり、といった雰囲気の違いが楽しめました。なかには少しコミカルな七不思議もあるので、箸休め的な意味でホッとしたりもできました。
なお、話の途中に入る選択肢によって結末が分岐。周回プレイによって新たな選択が選べるようになり、異なるエピソードが楽しめます。語り部たちの話には100名を越える登場人物が現れ、結末も500以上と膨大。6人の語り部の話が終わった時に何が起こるのかは、あなた自身の目で確かめてください。
続編『アパシー 男子校であった怖い話(仮題)』は2023年発売

なお、本作が気になっている方に向けて、現在ニンテンドーeショップにて体験版が配信中です。6人の語り部が紡ぐ物語、そして選択肢によって分岐する15以上の結末を楽しめるボリュームたっぷりの内容となっています。ぜひプレイしてみてください。
また、先日続編である『アパシー 男子校であった怖い話(仮題)』がニンテンドースイッチ向けに2023年にリリースされるとの発表もありました。こちらは2010年に発売されたPC向けアドベンチャーゲーム『男子校であった怖い話』で、本作と同じく人気ホラーゲーム作家の飯島多紀哉氏が、倉馬奈未氏がキャラクターデザインを手がけるとのこと。

というわけで、ビビリな筆者でしたが「アパシー」シリーズが持つ、独特のメンタルに響く文章表現や、じわじわと不気味な雰囲気を感じるキャラクターたちの魅力にどっぷりハマってしまいました。続編が発売されるまでは、『アパシー 鳴神学園七不思議』に収録された膨大な結末をひと夏かけて味わい尽くしたいと思います。ホラーが苦手な方はぜひお昼に、得意な方は薄暗い部屋でイヤホンを着用しながら楽しんでくださいね!