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2022年12月で発売30周年を迎えた『ファイナルファンタジーV(以下FFV)』は、主人公・バッツたちがクリスタルに選ばれた光の戦士としていくつもの世界を冒険する姿を描く物語です。
最終パーティーはタイクーン城の王女レナ、海賊に育てられたレナの生き別れの姉ファリス、異世界にあるバル城の王・ガラフの孫娘クルルの3人で、シリーズを通してもめずらしい男性主人公+王女3人というロイヤルパーティーが完成します。
しかし、このパーティーには浮いた話がほとんどありません。カラッとした王道冒険モノであることは本作の大きな魅力のひとつですが、レナたちはヒロインになりえないのかをあらためて振り返ってみましょう。
◆今だったら「おもしれー女」認定されそうなレナ
王女という身分をまったく鼻にかけない優しさと慈愛の心を持った清楚な少女…というと聞こえはいいですが、実際のところは「思い込んだら一直線」な面も強いレナ。
無謀に思えることや危険を伴うことも、それが必要だと思ったら躊躇なく実行する芯の強さや決断力も備えているのが印象的です。
もし本作が今初めて世に出ていたら、少女漫画でいうところの「おもしれー女」枠になっていたかもしれません。
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ゲーム冒頭では、風の神殿に行くために単身で城を飛び出したところ近くに隕石が落下してきた衝撃で気を失い、ゴブリンに拉致されかけるという抜群の「ヒロインムーブ」を披露。それがバッツとの出会いでした。
気ままな旅をしていた彼もさすがにその無鉄砲さが心配になり、レナと共に風の神殿に行くことを決めます。作中ではそのことをガラフに「本当はこの子にホの字じゃないのかい?(※「ホの字」は「惚れている」という意味)」とからかわれるシーンもありましたが、バッツは基本的にお人よしなので実際に恋愛感情を持っているかはわからずじまいでした。
◆最有力候補!?バッツが一番ドキドキしたファリス
海賊のファリスはナメられることを危惧して普段は男性のように振る舞っており、ゲーム序盤のバッツとガラフは、彼女を「美形の男性海賊」だと思い込んでいました。
しかし、バッツは彼女を男性だと思っていた頃も「寝顔を見てドキドキしてしまう」描写があり、ファリスは彼にとってかなりのストライクゾーンであることがうかがえます。
レナと共にタイクーン城に戻った彼女が王女らしいロイヤルな装いをしたシーンでも、バッツがハートマークを飛ばしまくっていたのが印象的です。ヒロインレースで一番先頭を走っているのは彼女かもしれません。
また、話はさかのぼりますが、ファリスが実は女性だと判明したシーンでガラフは「男というには美しすぎると思っていた」と驚きをあらわにしますが、バッツはすぐに気を取り直し「どっちでもいいさ。ファリスはファリスだ!」と口にします。
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性別ではなく人柄を見ているすばらしい感覚だと思いますが、見方を変えると「仲間として大事に思っている一方、女性として意識はしていないのでは?」とも思えてしまいます。ヒロインレース的な観点ではちょっともどかしい…!
◆クルルはヒロインというより「妹」成分が強め!?
幼くして両親を亡くしたクルルはガラフの愛情を一心に受けて育った少女で、ゲーム中でもガラフに懐いている言動を確認できます。
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バッツ、レナ、ファリスと行動を共にするようになってからは彼らにも心を開きますが、設定を紐解くと彼女はこの時まだ14歳。バッツとファリスは20歳、レナは19歳ですので、ちょっと年齢に開きがあります。作中ではレナを「お姉ちゃん」と呼ぶシーンも何度かありました。
その割にはバッツのことは呼び捨てで、「(以前は)チョコボのボコと旅をしていた」という彼に半信半疑で「飛竜に乗るのもうまくないのに?」と返すなど、言動に遠慮がありません。その直後にドツきあいを始めてもバッツがすぐに「クルルにはかなわないな」と折れるくだりも含めて、「年が離れた仲のいい従兄妹」という雰囲気が強い2人でした。
クルルはヒロインというよりも「パーティーみんなの"妹"枠」という方がしっくりきますね。エンディングからさらに数年ほど経ったら、そんな2人の関係性にも変化があるかもしれませんが!
しかし、「誰ともフラグが立っていない」のは「誰とフラグが立ってもおかしくない」ともいえます。その辺を自由に想像して楽しめるのも本作の魅力のひとつでしょう。
そんなわけで、筆者にとっての『FFV』ヒロインは「リックスの村でバッツの帰りを待つ幼なじみ(?)の女の子」ということでお願いします。自分(バッツ)の帰郷をずっと待ってくれていた子が「いつか旅が終わったら聞いてほしい話がある」というだけで当時の筆者は勝手にドキドキしたものです。
ピクセルリマスター版を再プレイしても、やはりヒロインはこの子だよなぁと再確認するばかりでした。いいですよね。リックスの村の幼なじみ(仮)ちゃん。みなさんにとってのヒロインは誰でしたか?
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