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本国で正式リリースを迎えてからというものの、諸事情によりなかなかゲームプレイができなかったスマートフォン向けRPG『アッシュエコーズ-白荊回廊-』に、この度ようやく触れることができました。
本作は1月12日、中国国内にてテンセント(Tencent)が配信したタイトルです。日本でも2024年を目処に展開が予定されており、公式Xや公式サイトが登場していたのですが、記事執筆時点ではどちらにもアクセスができない状態になっています。
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しかし、これで日本上陸が絶望的かを判断してしまうのはいささか早計です。というのも、本作の開発元であるWangyuan Shengtangの経営権をテンセントが獲得したと、先日「South China Morning Post」が報じています(詳細は姉妹サイト「Game*Spark」をご覧ください)。
本作『アッシュエコーズ-白荊回廊-』は、リリースを迎える以前から多くの本国ゲームファンに注目されており、サービスが開始後もその人気は衰えることがありません。その手応えを知っているのは、本国でパブリッシングを担当しているテンセント自身でしょう。
インサイドは、1月14日時点で『アッシュエコーズ-白荊回廊-』の日本公式Xならびに公式サイトが存在しているのを確認していました。先述した経営権の報道と日本公式の消失。2つの事柄における時期の近さから考えうるに、日本版パブリッシャーが当初のRESTAR LIMITEDからテンセントに移管されたかと思われましたが、2月14日にはUjoy Gamesが日本展開の権利を承継したことが発表されました。
※UPDATE(2024/2/14 13:58):日本版の展開について正式発表があったため、該当部分の表記を修正しました。
本国における『アッシュエコーズ-白荊回廊-』のヒットを受けて、その魅力をより世界に知らしめていくのであれば、パブリッシャーは自ずとLevel Infiniteになりそうですが、果たしてこのまま日本で展開されるのかはまだ分かりません。ひとまず本稿では、そんな『アッシュエコーズ-白荊回廊-』のプレイレポートをお送りしていければと思います。
※本稿では、システム上の関係で簡体字で表記すべき部分もすべて繁体字に置換しています。
※世界観・固有名詞・ストーリーの解釈については翻訳ツールを併用しています。仮に日本向けに配信された場合に齟齬が生じる場合がありますので予めご了承ください。
◆シナリオの読み応えはバッチリ。意外な展開でプレイヤーを引き込む物語
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プレイヤーはさまざまな異世界と繋がる近未来科学都市の世界「森羅」を舞台に、「白荊研究所」(作中では「S.E.E.D」)の首席執行官“監督”として、組織の個性豊かな研究員&メンバーたちを率いることになります。
ゲーム冒頭では別世界から侵入してきたと思わしき異形のモンスターが科学都市を襲撃しており、街中は混乱を極めていました。そんな折、モンスター襲撃騒動の中で気を失っていた主人公(プレイヤー)が目を覚ますのですが、自分の記憶と現在直面している状況に大きな違和感を抱き始めます。
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組織の中で現在の自分が持っている権限レベルの高さ。そして仲間からの異様な期待感。どうにも噛み合わない会話の数々から、違和感の正体を突き止めた結果、主人公はとある仮説に行き着きます。それは自分が“似て非なる並行世界の自分と入れ替わってしまった”という、だいぶ非現実的なものでした。
本来いるはずであるこの世界の自分は、敵と直接戦える異能の力を持ち「S.E.E.D」メンバーを率いる監督なのだそうです。しかし、当の本人にそういった力はありませんし、元の世界では仲間たちを率いる立場でもありませんでした。数々の疑問を解き明かすため、度々聞こえてくる謎の声を手がかりに、敵の攻勢が激しいエリアへ突き進んいく主人公たち。果たして、そこで待ち受けていた出来事とは......?
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メインシナリオはフルボイスで収録されており、そのシナリオテキストもボリューム満点です。プロローグを終えた後、最初の第0章から長めな導入が差し込まれ、オートプレイでも約10分間のアドベンチャーパートが展開されます。
昨今は、スマートフォンゲームであってもストーリー部分に大きく力を入れる傾向がありますが、本作もその流れを汲んだ一作と言えそうです。飽きさせないようスチルイラストも適度に挿入される上、シナリオ展開はプレイヤーが先へと読み進めたくなる伏線を張り巡らしていました。物語の没入感としては忘れた頃にバトルパートが始まる『リバース:1999』に近いものがあります。
ストーリーをスキップしても、後からギャラリー機能で読み返せるので、空き時間にストーリーをスキップ込みでサクッと進めておき、落ち着いたタイミングで後からまとめて読み返すことも可能です。
本作はスマートフォン以外にもPC版が展開されているため、自宅であれば大きな画面でプレイするのも選択肢の一つでしょう。グラフィック設定は詳細に変更可能で「レイトレーシング機能」も利用できます。とはいえ、スマートフォン版でも3Dグラフィックは十分綺麗な印象でした。
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◆リアルタイムに臨機応変な戦術が求められるバトル
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バトルシステムは“リアルタイムに進行するシミュレーションRPG”とでも表現すべきでしょうか。決して広くはないバトルフィールド上で四方から出現する敵を迎え撃つのが基本ですが、このスタイルはどこかタワーディフェンス的でもあります。
リアルタイム進行のため、戦闘中はキャラクターの行動用リソースが溜まったタイミングで各自行動していきます。フィールド内はキャラクターの移動も可能となっており、敵を攻撃範囲内に捕捉したのち、スキルの放つ方向を自分で決めて攻撃していく流れです。
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ターン制のRPGではないので「少し忙しいな」と感じるところはありました。ただ、その時々に自分のパーティ編成で駆使できる戦術を臨機応変に活用するのは奥深くて面白い部分です。
また、同じステージ&同じキャラクター編成であっても攻略方法に多様性が生まれやすく、リアルタイムならではの忙しさが良いスパイスになっています。
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バトルで攻略の難易度を左右するのが、フィールド内の地形効果でしょう。例えば、水たまりのある場所では雷属性の攻撃スキルで敵を感電させたり、氷属性のスキルで凍らせたりと、その場で発生した現象を上手く活用することが重要になります。敵も属性攻撃を行うことから、先手を打つかあえてそれを利用するかもプレイヤーの判断に委ねられるところ。
編成においてはキャラクターが持つそれぞれの役割も考慮しなければなりませんでした。空中の敵には、通常の近接攻撃スキルが当たらず、射撃武器を扱うキャラクターが有効打となり得ます。かといって「なら射撃武器持ちだけでいいじゃん」と、極端に偏らせると今度はシールド持ちの敵に全く歯がたちません。
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ゲームシステムの特性とチャレンジするステージのギミックを巧みに利用し、敵を効率的に倒していけると戦術がハマった感じがして気持ちがいいです。ただし、プレイするステージ次第ではそこそこ思考を巡らす必要があるので、カジュアルプレイヤー層は苦戦する場面が出てくると思われます。
とはいえ、オートバトル機能のAIがかなり優秀で、敵が集まらないと広範囲系スキルは使用しないなど、痒いところに手が届く賢さに調整されていました。オートバトル機能を上手く利用すれば、キャラクターの育成度合い&編成の組み方次第で、難しいコンテンツも自動的に攻略できるのではないでしょうか。あえて効率的なオートプレイを突き詰めていくのも1つの遊び方になりそうです。
◆ハウジング要素からドリンクづくりにミニゲーム。色々遊べそうなサブコンテンツ
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ホーム画面には拠点を自由にカスタマイズできるハウジング要素のほか、プレイヤーの作ったドリンクをキャラクターにプレゼントして、そのまま会話が楽しめる交流要素、ダーツといったミニゲームなども確認できています。
ドリンクづくりはグラス選択から砂糖の量、温度に味つけ、デコレーションと、多岐にわたってこだわれる本格志向。上手くキャラクターの好みに合わせたドリンクを作れれば、好感度が大きく上昇します。
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このキャラクターとの交流においてもボイスはしっかり収録済みですが、驚いたのは交流中におけるキャラクターアニメーションの異様な細かさでした。
喋っているときのリップシンクはもちろんで、プレイヤーの選択に対して不服そうな表情を浮かべたり、目を細めて呆れたりするのが、ものすごく伝わってきます。喋っているときの頭の揺れ具合、視線の小刻みな移動、身体の動かし方など、全てを含めてキャラクターの感情がしっかりと感じられるのです。
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『アッシュエコーズ-白荊回廊-』は、もはやトレンドというか1つのジャンルとして確立されている、いわゆる“アニメ調”の3Dモデルに寄ったビジュアル表現。
厳密に言えば、人気の高いトゥーン系のアニメイラストよりも劇画調のバランス感であり、フォトリアルとアニメイラストのいいとこ取りといった風合いになっています。その独自のバランス感ゆえに、表情の細かな変化に人間的なリアリティが強く感じられるのかもしれません。
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本作は日本ウケしやすいキャラクタービジュアルと断言できませんが、日本国内で展開している人気スマートフォン向けタイトルでは、まず見られないビジュアルのタッチです。男性向け・女性向けと、ユーザー層をキッパリ分けるデザインではなく、幅広いユーザー層に対してアプローチしているように感じられました。
メインコンテンツ以外にも多数のコンテンツがあり、まだまだ本稿でもその魅力を紹介しきれていないというのが正直なところです。今後本作が日本展開されるのであれば、ぜひともさらに深掘りしてその魅力をお届けしたいと思います。中国での人気の高さを感じられるクオリティなので、もし興味と機会があれば、一足早く本国版に触れてみても時間を無駄にすることはないはずです!