■盛り上がり、そして落ち着きを見せていた、当時のギャルゲー市場

ギャルゲー(美少女ゲームと区別して呼ばれる場合もありますが、本稿ではどちらも内包して統一)の歴史はかなり古いのですが、ADV系列でブームを起こしたギャルゲーの先駆者としては、『同級生』(1992年~)が代表格として知られています。
『同級生』はPC向けだったこともあり、遊べるのは一部のユーザーに限られていました。その状況を打破したのが、PCエンジンSUPER CD-ROM2向けにリリースされた『ときめきメモリアル』です。この作品のヒットをきっかけに、家庭用ゲームの世界にギャルゲーの大きな波が訪れます。
しかし『ときメモ』は、ADV形式のギャルゲーではなく、育成シミュレーションでした。『卒業』のように美少女を育成する作品もありますが、『ときメモ』はプレイヤーの分身となる男子学生を育成し、女の子の好みに当てはまるように自分磨きに勤しみます。
『ときメモ』の育成過程はゲーム性が高く、考えなしに日々を過ごすだけでは好きな女の子と結ばれず、バランス調整もしっかりしていました。ですが、ブームを後追いした他作品の育成シミュレーションゲームは作り込みが甘いものも多く、『ときメモ』がきっかけとなった家庭用ゲーム業界のギャルゲーブームは、徐々に勢いを失っていきます。
そんな揺れ動く時代に、物語性とビジュアルを重視したADV主体のノベルゲームが急激な盛り上がりを見せました。『弟切草』(1992年発売)から始まった、テキストと音、映像演出を軸とする「サウンドノベル」と区別するため、「ビジュアルノベル」とも呼ばれます。
特にPC版『ToHeart』は、ゲームブランド「Leaf」が贈るビジュアルノベルシリーズの3作目として登場したたため、ユーザーの認知だけでなく実質的にも「ビジュアルノベル」を代表する作品のひとつとなりました。