■ジャンルを活性化させ、モチーフに再び光を当てた存在に

その完成度と心に刺さるプレイ体験が多くのユーザーを動かし、こぞって『ToHeart』を賞賛しました。この動きがきっかけとなってビジュアルノベルやギャルゲーに再び注目が集まり、それを察知したメーカーが追従して様々な作品を生み出します。その結果、新たな名作が続々と飛び出し、業界がさらなる盛り上がりを見せました。
主だった例では、PC版『ToHeart』が発売された1997年以降、『ONE ~輝く季節へ~』(1998年)、『Kanon』(1999年)、『AIR』(2000年)、『CLANNAD』(2004年)などの作品が、ギャルゲー業界を大いに盛り上げます。また「Leaf」も、『WHITE ALBUM』(1998年)でさらなる人気を獲得しました。
『ONE ~輝く季節へ~』の主要スタッフを中心に作られたゲームブランド「Key」が、『Kanon』『AIR』『CLANNAD』を手がけており、『ToHeart』を生み出した「Leaf」と並ぶ2大巨頭として名を馳せました。この2つのブランドはあまりに強く、「葉鍵」(各ブランドの通称をかけ合わせた造語)というジャンル名が、俗称としてまかり通ったほどです。

「Key」の作品も素晴らしい名作ですが、『ToHeart』のヒットで恋愛系ADVが活気づいていたのも、成功を後押しした大事な要因のひとつといえます。『To Heart』は自身のヒットだけでなく、恋愛モノや学園モノ、メイドにロボットといったモチーフを再注目させ、改めて飛躍させる礎ともなったのです。
そして冒頭で触れた通り、PS版『ToHeart』がアクアプラスより発売されました。PC版発売から2年後の1999年、今度は誰でも遊べる全年齢版として、家庭用ゲーム向けに登場。しかも、一部キャラクターのルートはほぼ書き下ろしという、予想を上回る嬉しい仕様での再デビューでした。
そのため、『ToHeart』未経験者だけでなく、PC版を経験済みのユーザーも見逃せず、新規・従来のファンともにPS版『ToHeart』に手を伸ばし、それぞれが心行くまで恋愛と青春を満喫しました。
もちろんPS版『ToHeart』も、恋愛ADVとして異例の大ヒットを遂げます。こうして『ToHeart』は、PC向けのみならず家庭用ゲームにも上陸を果たし、その影響力をさらに広げたのです。

1990年代に盛り上がり、そして落ち着きを見せ始めたギャルゲーというジャンルに、新たな衝撃として登場した『ToHeart』。その活躍と成功が、1990年後期から2000年代に続く恋愛ADVブームを招く起爆剤となり、後の作品にも大きな影響を与えました。
そんな功績を残した名作の復活が決まった時、四半世紀程度の時間では『ToHeart』の存在をかき消すには至らなかったのだと、実際に証明する形となりました。25年の時を経てもなお、盛り上がれるコンテンツである──それを、『ToHeart』自身が明らかとしたのです。
奇しくも『同級生』はひと足先にリメイクされており、PC版が発売されたほか、2024年4月にスイッチとPS4向けに登場したばかり。また、リマスター化を遂げる『ときめきメモリアル~forever with you~ エモーショナル』が、2025年に発売されます。
まるで示し合わせたかのように、ギャルゲーを盛り上げ、ブームとなった名作たちが次々と復活します。新生する『ToHeart』も、その一翼を担い、この令和に蘇ります。
発表内容の詳細はまだ不明ですが、2024年11月9日・10日にわたって行われる「大アクアプラス祭 -30th Anniversary-」にて、『ToHeart』に関する続報も明かされる模様です。一時代を築いた名作が、どのような形で蘇るのか。新情報にご期待ください。