■スイッチ発売以降、8年も高水準が続いた任天堂

“携帯性不要論”もある中、2017年3月に発売されたスイッチは、今現在8年目に突入しています。先日披露されたプレゼンテーション資料に、スイッチの実績が窺える中期的な業績推移が示されました。
資料によれば、「スイッチ発売以降の業績は、ハードウェアの普及とともに成長し、その後も、急激に減速することなく、健全な水準を維持している」とのこと。また、スイッチ発売時点の2017年と、発売から時間が経過した2018年のグラフを見てみると、売上高は2倍に、営業利益は数倍どころではない伸びを見せています。
資料内の説明にあった通り、2019年も目覚ましい成長を続け、2021年に最高潮に達しますが、2022年~2024年も横ばいに近く、大きな落ち込みはありません。むしろ2024年は、2023年を上回る再成長を見せるなど、スイッチの活躍が業績の成長と安定に寄与していることが分かります。
■「スイッチ」成功の秘訣のひとつは「プラットフォームの統合」

8年にも及ぶ高水準の維持について、任天堂は「当社のゲーム専用機ビジネスをとりまく構造の変化が影響していると考えています」と述べています。その変化には大きく分けて4つの理由があると提示していますが、一番最初に取り上げたのが「据置機・携帯機で分かれていたプラットフォームの統合」でした。
据置機と携帯機ではプレイスタイルや体験に違いがあり、かつての任天堂はそれぞれに向けたゲームタイトルを展開してきました。しかし携帯モードも備えたスイッチなら、その両立が可能になります。
そしてプラットフォームが統合したことで、「携帯機、据置機をそれぞれ代表するシリーズが一堂に会した」「開発体制も統合でき、切れ目なく新作が出せるようになった」といった影響があったとも資料内で提示しており、これがスイッチの人気を後押しするひとつの要因になったと思われます。

一例を振り返ると、以前の『ポケモン』シリーズは携帯機を中心に展開していました。また、『ゼルダの伝説』シリーズで頭身の高い3D系作品は据置機が主戦場でした。この両シリーズがスイッチで合流を果たし、『ポケットモンスター ソード・シールド』2,644万本、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』3,229万本と、それぞれ大ヒットを記録します。
プラットフォームの統合により、どちらのシリーズもスイッチ1台で遊べるという環境は、ユーザーにとって大きなメリットです。購入者が相次ぎ、普及が広がるのも納得の結果といえます。
■“携帯性不要論”を一蹴し、時代を先取りした「スイッチ」

また、据置機はこれまで「1家に1台」という考え方が標準的でした。しかし、スイッチが携帯性を備えたことで、「1家に1台」から「ひとり1台」というスタイルに移り変わり、“据置機なのに携帯機のような販売トレンド”を実現させました。
据置機と携帯機を両立させたスイッチは、「プラットフォームの統合で人気シリーズを集中」「据置機で“ひとり1台”のスタイルを定着させ、普及を促進」と、良好な効果を生み出します。
かつて「携帯性は不要」とも論じられていたスイッチですが、その特徴と提案は多くのユーザーに受け入れられ、任天堂の読みと時代のニーズが合致していたことを証明しました。