■スイッチの成功で、「携帯できるゲーム機器」が再加熱
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スイッチの成功は、「スマホ以上のリッチなゲーム体験を、携帯性のあるゲーム機に求める」というニーズがまだ存在していたことを証明したともいえます。では、3DSやPSVitaを受け継ぐような、専用の携帯ゲーム機が今後登場する見込みはあるのでしょうか。
実のところ、スイッチの人気ぶりが影響を及ぼしたのか、携帯性を備えた機器が徐々に展開しています。代表的な例でいえば、携帯型のゲーミングPC「Steam Deck」が大きな話題となり、新モデル「Steam Deck OLED」も登場しました。
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また家庭用向けでは、PS5のゲームを遊べる「PlayStation Portal リモートプレーヤー」が登場しています。ただしこちらは、Wi-Fiを経由してPS5にあるゲームにアクセスするという形なので、独立したゲーム機ではなく拡張機器の一種です。とはいえ、SIEが「コントローラーとモニターが一体化した携帯型機器」を展開したという事実は、見るべきポイントのひとつでしょう。
こうした機器の登場を鑑みると、ゲーム業界が「携帯性のある機器」に再注目している面があるのは間違いなさそうです。とはいえ、3DSやPS Vitaの後継機のような存在が「確実に出てくる」とまでは、まだ言えそうにありません。
■新たな「携帯専用ゲーム機」は登場するのか?
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スイッチやSteam Deck、PlayStation Portal リモートプレーヤーはいずれも、「据え置きで楽しむ規模のゲームにアクセスできる機器」です。その性能に見合った価格なので、一般的な携帯ゲーム機よりも高くつきます。また、比較するまでもなく、物理的なサイズの差も明らかです。
時代に合わせて性能の向上が見込めるとはいえ、今改めて新たな携帯ゲーム機が出たところで、リッチなプレイ体験はスイッチやSteam Deckに敵わず、手頃なゲームならばスマホで十分、と判断されてしまう可能性があります。
任天堂自身も、「統合」によりスイッチが成功した背景があるため、「新型の携帯ゲーム機を出す=統合を解消し、再度分割する」というのは、かなりの勇気が求められる選択でしょう。
加えて現時点の任天堂は、スイッチの後継機種に注力すべき時期に入っています。よほどの事情や綿密な計画がない限り、スイッチ後継機種の発表と発売、そして一定の普及に達するまで、極力集中して動くことでしょう。そこに、3DSの後継機が入り込む隙があるかどうか、悩ましいところです。
■好転した流れと立ちはだかる課題
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しかし、3DSとPS Vitaの展開以降に訪れた「携帯ゲーム機の空白期間」の頃と比べれば、「携帯性のある機器」が再注目された現状は決して悪い流れではありません。
任天堂はユニークな体験にこだわっており、スイッチ後継機と新型携帯機を連動させるような“新たな遊び”を生み出してくれる可能性もあります。また、スイッチが開拓した「スマホよりリッチなゲーム体験を携帯したいニーズ」を、SIEが新たに狙う展開もないとは言い切れません。
スマホにサブスクと、可処分時間の奪い合いは年々厳しくなるばかり。また、携帯ゲームにリッチな体験を求めると、スペックは当然高くなり、価格も相応のものになるでしょう。
ゲーム以外のライバルとの競争、価格設定と購入意欲の両立など、課題は様々ありますが、スイッチのヒットで変化の兆しを迎えたのも事実。今後、新たな携帯ゲーム機が登場することを、ひとりのゲーマーとして切に願うばかりです。