■『メタファー:リファンタジオ』:PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC
◆『ペルソナ』クリエイター陣が作り上げた『メタファー:リファンタジオ』
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アトラスは、『真・女神転生』シリーズに『世界樹の迷宮』シリーズと、様々なターン制RPGを手がけ、数多くのヒットを生み出した。『真・女神転生』シリーズの外伝として始まり、独自のスタイルを確立した『ペルソナ』シリーズをきっかけに、アトラスを知ったという人も少なくありません。
そんなアトラスの35周年を記念するタイトル『メタファー:リファンタジオ』が、2024年10月11日に発売されました。本作は『ペルソナ』チームが中心となって開発にあたり、その実績と経験による完成度が、良質なプレイ体験に繋がっています。
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しかし、本作に触れていないユーザーの一部は、「『メタファー:リファンタジオ』は『ペルソナ』っぽい」といった印象を受けている人もいます。
両作品に共通するクリエイターが多いため、近しい感触を覚えるのも無理のない話ですが、実際に本作と『ペルソナ』は似ているのか。その比較を通して、『メタファー:リファンタジオ』の特徴や魅力を紹介します。
◆比較で浮き彫りになる『メタファー:リファンタジオ』の個性
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一見したイメージで“似ている”と感じるのは、キャラクターデザイナーが共通している点が大きいでしょう。『メタファー:リファンタジオ』のキャラデザを手がけた副島成記氏は、ナンバリング3作目以降の『ペルソナ』シリーズも担当しているので、印象が近いのは当然の話です。
もちろん、現代劇で学生を中心とした『ペルソナ』シリーズと、ファンタジー世界で様々な種族が暮らす『メタファー:リファンタジオ』では、デザインのコンセプトも異なりますし、その違いは明確にビジュアルから伝わります。
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また、『ペルソナ』シリーズの主人公たちは、大きな活躍をするものの、その世界に生きる人々に直接知られることはなく、スケールとしては比較的“ミクロ的な物語”です。一方『メタファー:リファンタジオ』は、次代の王を決める選挙に挑み、国の命運を左右する立場となります。
そのため本作が描くのは“マクロな物語”で、『ペルソナ』シリーズとは趣きが異なっており、多くの人々に直接影響する壮大さを持ち合わせています。
そして主人公たちの目的も、両作品で大きな違いがあります。『ペルソナ』シリーズは、起きた異変や事件に対処すべく戦いますが、『メタファー:リファンタジオ』は次代の王を決める選挙へと乗り出し、支持を集めるために国中を駆け巡ります。前者が「日常を取り戻す」行為だとすれば、後者は「新たな日常を作り出す」行為と言えるかもしれません。
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『ペルソナ』シリーズは、日常の延長線上にあるため、行動範囲もある程度決まっています。特に『ペルソナ3』以降は、学校に通いながら日々を過ごすため、住まいと学校の往復が基本です。
『メタファー:リファンタジオ』の場合、各地を巡って問題を解決し、その行動を通して支持を集める必要があります。そのため、地上を走る「鎧戦車」に乗り、日々様々な地方へと出向きます。シンプルにまとめるなら、『ペルソナ』シリーズは日常の中に、『メタファー:リファンタジオ』は旅の中に、物語や仲間との絆がちりばめられているのです。
◆共通点は進化の証のひとつ
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物語や目的、プレイ感などの違いがある一方で、『ペルソナ』シリーズと共通する要素もあります。例えば、どちらの作品にもゲーム進行に時間の概念があり、ある程度予定を立てて日々を過ごさなければなりません。ただしスケジュール管理はそれほど厳しくはなく、そのやりくりが楽しい点も共通しています。
また、形式こそそれぞれですが、仲間や支援者との交流を通じ、絆を深めることで様々な効果を得られる点も同じです。もちろん、彼らの人となりを知る貴重な機会でもあるので、より深く世界に没入するための手助けにもなります。
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戦闘面でもっとも分かりやすいのは、弱点などを突くことでターン内の行動回数が増える「プレスターンバトル」の導入や、自分の内なる力(『ペルソナ』では「ペルソナ、『メタファー:リファンタジオ』では「アーキタイプ」)を駆使して戦うところでしょう。
しかしこうした点は、単に『ペルソナ』を踏襲しているだけではありません。行動回数が増減する「プレスターンバトル」というシステムは、元を辿れば『真・女神転生III-NOCTURNE』で生まれたもので、そこから『ペルソナ』シリーズに継承されたものです。
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また近年の『ペルソナ』作品では、自由に「ペルソナ」を付け替えられるのは主人公のみ。しかし「アーキタイプ」は他の仲間と共有することが可能で、より自由で幅のある編成を構築することができます。加えて「ペルソナ」というシステムも、原点を遡ると『真・女神転生if...』の「ガーディアンシステム」に辿り着きます。
バトル関連で共通する要素が多い一方で、それらは『ペルソナ』だけのものではなく、他のシリーズの影響を受けている面もあります。また、『メタファー:リファンタジオ』はそうした要素を受け継ぐだけでなく、ターン制RPGながらアクションだけで敵を倒す「ファスト」といった独自要素も加えており、新たに昇華してる点も見逃せません。
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確かに『ペルソナ』シリーズと共通している面もあるものの、それは『ペルソナ』と『メタファー:リファンタジオ』が近いというよりは、アトラスが積み上げたRPGの経験を集大成したもの、と捉えたほうが正確かもしれません。
『ペルソナ』に似ているから……という理由だけで回避するのは、あまりにもったいない話だと個人的に感じます。むしろ、アトラスが提案する“より進化させたターン制RPG”を味わいたいなら、この『メタファー:リファンタジオ』が現時点の最適解といえるでしょう。