◆日本競馬の「独自の進化」

ハイセイコーの競走馬引退が決定した直後、彼の相棒だった増沢末夫騎手が楽曲「さらばハイセイコー」を歌い、ヒットを記録しました。「人気競走馬のキャラクター関連商品」というのは現代では当たり前ですが、その先駆けもハイセイコーが担ったのです。
ハイセイコーの巻き起こした競馬ブームは、その後の日本競馬を独自の形に進化させました。イギリスのような階級制度の存在しない極東アジアの島嶼国家の競馬は、アイドルが鎬を削る終わりのないドラマとしてその地位を確立しました。

王室や宗教指導者といった極端な大富豪が所有する馬に対して、シルクハットの紳士とドレスの淑女が多額の賭け金を投じる……というような光景は、日本の競馬場にはありません。代わりにあるのは、平日は一労働者として働く人々がアイドルホースに惜しみない声援を送る光景です。それは「民主化された競馬」の一景色であり、ハイセイコーが我々にくれたかけがえのない贈り物でもあるのです。