No.4 風景バーテンダー
(酒豪/北陸先端科学技術大学院大学 宮田研究室)
カクテルを作るように「風景の元」をシェーカーに注ぎ、激しくシェイクすることで風景画を作り出す作品。細部に渡って数多くの修正が加えられた。カウンターに液晶ディスプレイを埋め込み、アクリル版などで覆って、作成されたCG画像を手元で鑑賞できるように変更。あわせてスクリーンにも投影し、体験者も周囲も共に楽しめるようにした。シェーカー内に加速度センサー、グラスのコースター部分に磁気センサーを埋め込み、シェーカーの振り終わりと画像の表示を自動で検出。雰囲気を壊すことなく、自然な操作を可能にしている。CG映像の解像度も格段の向上を見せており、「風景画」と呼べる内容になった。ただし早朝にシステムトラブルが発生してしまい、充分に力が発揮できなかったのが残念だった。
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仏チーム タイムマシーン:ヴェルダン1916(タイムマシーン/ESCIN・ESIEA Ouest)
フランスのVRコンテスト、ラバル・バーチャルからの学生招待作品。タイムマシーンに乗って第一次世界大戦の激戦地、ヴェルダンの戦場を訪れるという内容だ。長椅子に寝そべって振動機能のついたストラップで体を固定し、眼鏡型ディスプレイとサラウンドヘッドフォンを装着して、4分間の映像作品を体験する。ディスプレイにはモーションセンサー機能があり、頭を動かすと周囲が見渡せる。CGはVirtoolsS社製のステレオ立体映像技術で製作されており、映像の奥行きがうまく表現されていた。体験者は戦場で負傷した一般兵という設定で、体の上をネズミが歩き回ったりする。仲間の兵士によって塹壕内に運ばれるが、そこに砲弾が落ちてきて、最終的にみんな死んでしまうというものだ。題材の特殊性から、12歳以上推奨となっていた。
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以上が団体部門の作品だ。どれも東京予選から向上していたが、最も驚かされたのはフランスチームの作品だった。古典的なVR作品のように感じられるが、映像効果を初めとしたアプリケーションの作り込みが秀逸で、FPSなどでは味わえない、ユニークな内容になっていたのだ。立体視によるリアルタイムCGも自然で、解像度も高く、目が疲れない。戦場を俯瞰するだけでなく、負傷兵の立場になるという設定や、ストーリー性が含まれている点も良かった。やはりVR作品は、体験しなければわからない。
学生チームの一人、ジェレミー・アウトローさんに制作動機について聞いたところ、「第一次世界大戦の凄惨な記憶や体験をVRで残したかった」という答えが返ってきた。ヴェルダンの戦いは仏独あわせて25万人以上の死者を数える、大戦でも最大級の激戦地だった。しかし仏軍兵士の高齢化が進み、今では存命者も4人しかいないという。日本では戦争といえば第二次世界大戦を連想するが、欧州では二つの世界大戦が争われたことを、改めて感じさせられた。
ちなみに製作上で最も苦労した点を尋ねると、間髪入れずに「コミュニケーション」という返答がきた。本作品はインタラクティブデザインを学ぶESCINと、エンジニアリングを学ぶESIEAという2校の共同製作となっている。プログラムとグラフィックには摩擦がつきものだが、本作品では学校から異なるため、摺り合わせが大変だったとのこと。ポイントとなるのはどこも同じようだ。
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■個人部門・招待作品