パネラーは「中国レンレン上級副総裁(SVP)兼レンレンゲームジャパン代表取締役社長の何川(カ・セン)氏」「インドネシア・アガテスタジオCOO、シェニー・アプリリア氏」「韓国NHN・スマートフォン事業部理事のチェ・ユラ氏」「日本からディー・エヌ・エーの代表取締役・小林賢治氏」の4名です。モデレーターは日経ビジネスの浅見直樹氏が務めました。
■アジアを代表する4社のプロフィール
レンレンはMMORPGが主流の中国ゲーム業界で、ブラウザゲームとモバイルゲームに注力して2007年に設立された新興企業です。設立後わずか4年でニューヨーク証券取引所に上場するなど、中国最大級のスマートフォン向けゲーム開発会社兼プラットフォーマーにまで成長しました。日本国内でも『乱世キング』『戦国ブレイド』『ロストウォーズ~鋼の大戦争~』といったタイトルをリリースしています。
アガテスタジオは2009年に設立。設立当初こそ月給が5ドルでしたが、今では社員数77名とインドネシア最大級のゲームスタジオに成長しました。これまで120作以上のゲームをリリースしており、中でもブラウザゲームの『FOOTBALL SAGA2』は最大同時接続者数11万人を数えるフラッグシップタイトル。シンガポールに営業所を設立するなど、早くも海外進出をはたしています。
1999年に設立されたNHNは、韓国最大の検索エンジン『NAVER』と、日本でもおなじみの『ハンゲーム』が二本柱。韓国トップ30位企業の中で第15位にランクインされています。全世界のIT系企業トップ20位にもランクインされており、世界的企業に成長しました。昨今ではNHN JAPANが開発したコミュニケーションアプリ『LINE』が全世界で6100万アカウントを達成したことでも話題を集めています。
最後にDeNA小林氏は日本のソーシャルゲーム市場について、2009年の『怪盗ロワイヤル』をきっかけに、わずか数年でゼロから3000億円以上の市場に急成長した点を強調しました。また北米で『進撃のバハムート』が大ヒットしたことや、日本と同じように定期的なイベント運営を続けることでARPUが急上昇している点を紹介。海外においても、これから本格的な市場の拡大時期に入ったと解説されました。
■地域別のスマートフォン事情とは?
さて、パネルディスカッション第一のテーマは「スマートフォンの各国別OSの違い」についてです。ワールドワイドではAndroidが59%、iOSが23%とAndroidが急成長していますが、地域別にみると事情は異なります。インドネシアでは最も普及している端末は未だにフィーチャーフォン。スマートフォンではAndroidが1位ですが、2位はBlackBerryとなっています。そこから大きく溝をあけられて、iOSが第3位と紹介されました。
これに対して中国・韓国・日本では多少の違いはありますが、1位がAndroidで6-7割、2位がiOSで2-3割というポジションは変わりません。ただし国によって数字以上の違いがあるようです。まず中国では、iOSのARPUがAndroidより4-5倍も高いという特徴が指摘されました。中国では公式のGoogle Playが存在せず、100種類以上のAndroidマーケットが乱立しているため、Android向けのサポートコストが重くのしかかります。端末の種類が他国に輪をかけて多い点もコスト要因とされました。
韓国では端末の乗り換え比率が高く、新製品が登場する度に買い換える層が多い点が、Androidのシェア拡大に貢献しているそうです。特にゲーム市場ではAndroidの人気が高くなっています。これは韓国ではiTunesのギフトカードが存在しないため。クレジットカードを所有できない若い世代にとって、iOSはアプリを購入しにくい端末なのです。ただし若い女性向けアプリならiOSなど、ターゲット層にあわせた選定が重要とのことでした。
Android向けの市場が断片化されすぎている点は、日本でも大きな問題となっています。iOSとAndroidのマルチ対応を唄うミドルウェアも数多く存在しますが、端末によって処理速度が遅く、事実上ゲームにならなかったり、非対応端末があったりと、さまざまな問題を抱えているのが実情。HTML5でもこの問題は変わりません。ただし世界市場では両方のOSを同時に攻めざるを得ず、標準化技術を整備している途中とのこと。中でも日本のSAPが大量に保有するFlashコンテンツの自動変換ツールを、早急に提案したいとされました。
■端末性能が上がるとゲームの開発費も高騰する?
続いてのテーマは「スマートフォンの高機能化に伴い、ゲームの開発コストも高くなるのか」という点です。まずDeNA小林氏は「コアゲーマー向けにリッチなゲームを作ることを否定はしないが、本当に全てのユーザーから求めているのかは疑問」と釘を刺しました。開発工数が上がると、現在のように小回りのきく運営を続けることも難しくなります。開発費自体はフィーチャーフォン時代から考えれば確かに上がっているが、ここは意思を持って抑える必要があるとしました。
アプリリア氏はインドネシアは他国に比べ人件費が安いため、開発コストの問題はしばらく直面しないといいます。ただし「すべてのゲームがリッチになる必要はない」という点は同意とされました。韓国でもコアゲーマー向けのリッチなゲームと、カジュアルゲーマー向けのシンプルなゲームは市場で両立すると回答。「それぞれの分野で、ユーザーの楽しみたいという欲求をうまく満たすことが大切です」(チュ・ユラ氏)
中国においても、単にPCゲームやブラウザゲームをスマートデバイス向けに移植すれば良いというものではなく、そこにはイノベーションが必要だと強調されました。その上でカ・セン氏は「スマートフォン向けのゲームはシンプルでなければならない。それによって新しいユーザーを獲得できる」と続け、端末の高機能化とゲームの開発コスト増大は別の話だと整理しました。
■人気を集めるソーシャルゲームの条件は?
第3のテーマは「ソーシャルゲームのトレンドについて」。チュ・ユラ氏は「日本のソーシャルゲームはブラウザゲームでヒットし、フィーチャーフォンに飛び火したが、韓国ではスマートフォン時代になって初めてソーシャルゲームがブレイクした」と言います。これによってOLや主婦などがプレイするようになりました。ゲームジャンルも古典的なパズルゲームのリメイクや、最近では釣りゲームなども人気があるそうです。
インドネシアでも一番人気があるのはPCオンラインゲームで、FPSやRPGなどが人気ジャンル。中心ユーザーは10-20代の男性でした。これがジンガの一連のタイトルや、『アングリーバード』のヒットで、ユーザー層が女性や子どもにまで拡大したといいます。
中国で最も人気があるのはアクションMMORPGで、App StoreとAndroidのランキング上位を独占しています。戦略SLGも人気の高いジャンルです。逆に日本のようなカードバトルはあまり人気がありません。もっともカードバトルにはRPG要素も含まれています。これと同じように、今後は中国でも他の要素と組み合わさった、よりカジュアルなRPGが人気を集めるようになるのでは、と分析されました。
小林氏は平均的なモバゲーユーザーは「1回のプレイ時間が7分間で、1日5回アクセスする」と紹介しました。もっとも、同じ35分でも5分ずつプレイするのと、まとめて35分間プレイするのでは、生活に与える影響が大きく異なります。社会人が余暇に費やせる時間は決まっており、これはグローバルでも同じなのではないかと推測しました。
また、小林氏はモバゲーで人気のチームバトル形式のゲームは、FPSのチーム戦にプレイ感覚が似ているといいます。「小集団同士での戦いであること」「バトルを通して、上級者にリスペクトが集まるところ」などが理由です。同様にコンシューマゲームなどで人気ジャンルのエッセンスを、いかにユーザーにとって負担の少ないプレイスタイルに置き換えられるかが、成功の秘訣だと解説されました。
■優秀な人材をどのように確保する?
成功する企業に優秀な人材が集まるのは国の違いを問いません。しかし企業が重視する点は異なるようです。カ・セン氏は中国では「良質な企業文化と、社員に対するインセンティブが重要で、ストックオプションなども効果的。優秀な人材を発掘するには、それなりの給与が必要」だと言います。一方韓国では「情熱」がキーワード。そのため「NEXT」という専門学校をグループ企業として開校し、開発業務をカリキュラムに取り入れながら、同時に人材育成と発掘を行うシステムを作り上げました。
小林氏は技術や情熱もさることながら、一番重視しているのは「一般ユーザーに対する想像力をどれだけ持っているか」だと言います。クリエイターは自分が創りたいゲームを作ってしまいがちです。そこで一般ユーザーの気持ちを、どれだけ推し量って創ることができるかどうかが重要だというわけです。
ここで小林氏が例に挙げたのがNHNの「LINE」でした。最初に特徴を聞いた時に「Skypeからログイン機能を削除して、デコメを加えただけ」と勘違いしてしまったとのこと。ところが使ってみると、細部の作り込みが丁寧で、まったく違うユーザー体験が感じられました。「ソーシャルゲームも同じで、誰でも作れると思われがちだが、ちょっとした差が最終的にすごい違いとなって現れる。一般ユーザーに対して、最大限に敬意を払える人でなければ、こうした作り込みはできない」(小林氏)。
アプリリア氏は会社にゲームの世界観を持ち込んでいると説明しました。プログラマーはナイト、アーティストはウィザードと呼ぶなど、多くの人に愛される会社にするよう努力しているそうです。もちろん給与やストックオプションなどを組み合わせて、短期的・長期的に社員に報いるシステムも構築中。産学協業による人材育成も行っています。
■日本そしてアジア市場は互いにどう見える?
最後の質問となったのが「各国から見た日本市場(アジア市場)の意味」です。小林氏は少子高齢化に伴い日本市場が縮小する一方で、すぐ近くにアジアという成長している市場があるのは事実だが、これまで海賊版やコピー問題などの障壁があり、近くて遠い存在だったと語りました。これがスマートフォン市場の拡大で、一気に攻める余地が出てきたと言います。その上でこれまでは各社がバラバラに攻めて各個撃破されていたが、今後はみんなで協力して攻めていき、勝利をつかみたいと抱負を語りました。
一方、NHNがはじめて海外に進出したのは日本市場でした。そのためチュ・ユラ氏は、日本は特別な国だと言います。アプリリア氏は「日本はゲーム業界の伝説的な国」で、自分たちの世代は子どもの頃、みな日本のゲームを遊んで育ったとコメント。多くのインスピレーションを受けており、成功のロールモデルだと語りました。カ・セン氏も日本はオンラインゲームで最大級の市場で、長いゲームの歴史があると賞賛。日本と中国のゲーム産業界が互いに協力して、共に成功したいとまとめました。
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