Wii Uの最大の特徴であるWii U GamePadは、手元にある第2のスクリーンとして、テレビ画面と連携することによって、多くの人々と体験を共有しながら、操作性の良さを同時に実現することができます。任天堂は昨年末の発売から、ゲームソフトだけでなく、『YouTube』や『ニコニコ動画』、あるいは『Wii Street U』といったアプリケーションをリリースしてきました。これらは元々、ウェブサービスとして提供されているものですが、リビングでの体験へと変化することによって、家族や友達と容易に体験を共有するという、新しい価値を実現しています。
一方、過去のゲーム専用機における典型的なアプリケーション開発は、CもしくはC++を用いて、ハードウェアの低いレイヤーにアクセスして行うものでした。これはゲームが、ハードウェアの性能をギリギリまで追求する事が多いのに対応した作り方でした。しかし、性能自体が急速な進化を遂げる中で、必ずしもハードウェアに直接アクセスして極限まで性能を引き出さなくとも、充分なスペックを利用できるようになってきました。
島田氏はこうした作り方を加速させるのを目的とした、WebKitベースの「任天堂ウェブフレームワーク」を発表。このフレームワークを用いると、HTML5とJavaScriptというウェブで標準的に活用されている技術を用いてWii Uのアプリケーション開発が可能となり、工数を大幅に削減することができます。また、当然のことながら既存のウェブサービスとも相性がよく、実際に『YouTube』や『Wii Street U』はこのフレームワークのβ版を用いて開発されたそうです。
JavaScriptはライブラリが非常に充実しているため、ウェブ技術を用いてゲーム開発を行うケースも増えています。もちろん「任天堂ウェブフレームワーク」でもそうしたライブラリを活用してゲームの開発が可能です。デフォルトの状態でGamePadでの画面表示が可能で、数行のコードで画面の出し分けも可能。セーブデータ、ソフトウェアキーボード、ビデオ再生、MiiverseへのアクセスなどWii Uの本体機能へのアクセスも当然可能となっています。
ここからはシアトルのNintendo Software Technologyで本ライブラリのアーキテクトを務めるライアン・リード氏と、Nintendo of Americaでツール・ソフトウェアエンジニアを務めるケビン・マックロー氏がデモを行いました。
「任天堂ウェブフレームワーク」ではWindows PCにダッシュボードソフトウェアをインストールして、ネットワークで接続された開発機材を通じて動作を確認しながら開発していくことになります。幾つかのサンプルファイルが用意されていて、それを見ながら各機能に触れていくことができるようHTMLファイルなどを編集するエディターは高度なもので、編集している箇所が、実際の画面上ではどの要素に当たるのか実機で確認しながらリアルタイムの変更が可能なようです(FirefoxのFireBugのように)。ダッシュボードからはプロジェクトの全体的な設定が可能で、アプリケーションの起動時に開くファイルの指定や、テレビとGamePadの画面のどちらを最初に利用するかなどを設定可能です。
会場では『Sketch Battle』と呼ばれるアクションゲームのデモが行われ、非常にスムーズな動作で、モーションなどの操作を使ったゲームが実現していました。また、ベンチマークソフトの「Glu Mark 3」を使ったパフォーマンス計測では、700以上のスプライトを60fpsの安定したフレームレートで実現されていました。
最後に島田氏は本ライブラリのコードネームは「バンブー」(竹)であったことを紹介。ロゴにも竹のイメージが含まれています。これは竹の「根を張り巡らせて土地を丈夫にし、自身も一気に伸びる」という特性を引用したもので、「しっかりしたフレームワークを作って、皆さんのソフトウェア開発を強力にサポートしていきたいという思いを示したもの」だということ。「任天堂ウェブフレームワーク」は開発契約を結べば無料で利用できるとのこと。詳しくは「GDC2013.nintendo.com」より任天堂にアクセスください。