GDCのローカリゼーションサミットで3月18日、ファブルウェアのアーサー・プロタシオ氏、パラナ ポンティフィカル カトリック大学のアーサー・ミテルバック氏、パラナ州技術投資局でパラナ ポンティフィカル カトリック大学の職員でもあるブルーノ・キャンパゴノロ氏が、この知られざる大国ブラジルの今について講演しました。
南米の中でもポルトガル語を話すブラジルは、国土面積(日本の22.5倍)、人口(1億9千万人)が共に世界第5位、経済規模でも世界第6位を誇る巨大国家。スペイン語を話す他の南米諸国を圧倒しており、単一の巨大市場を作り上げています。
関税が非常に高く、iPad Airが499ドルから760ドルに、PS4が399ドルから1740ドルになるという点がネックですが、スマートフォンやPCを中心にユーザー層が拡大。海賊版の問題もデジタル配信でクリアされつつあります。サンパウロで10月25日から29日まで開催された、彼の地で初めてとなるブラジルゲームショウでは10万人の集客を数え、市場が沸騰しつつあることを示しました。
もっとも文化的には北米と欧州の影響が強く、ブラジル発のブロックバスター作品や巨大パブリッシャーなどは皆無です。一方でゲーム産業ではインディゲームがブームとなっており、2008年に42法人・560名だったプロのゲーム開発者が、2013年には200法人、2000人に急成長。その背景にあるのが産学連携の基盤があることで、グローバルゲームジャム(GGJ)の会場数からも明らかだとされました。
実際、2014年の会場数はアメリカの123会場に続き、ブラジル58会場、イギリス28会場と世界2位の躍進ぶり。GGJ以外にも毎月のように国内のあちこちでゲームジャムが開催されているそうです。余談ながらプロタシオ氏はIGDAリオテジャネイロ、ミテルバック氏はIGDAクリチバ(パラナ州の州都)の世話人も務めています。インディと大学と投資局の人間がグループで登壇している点からも、相互の結び付きが分かるでしょう。
さて、ローカライズで避けては通れない言語の問題ですが、「ブラジル人はポルトガル語に対する愛着があまり高くない」という驚きの報告がありました(ちなみにブラジルのポルトガル語と、ポルトガルのポルトガル語の違いは、アメリカ英語とイギリス英語の違い程度とのこと)。AAAゲームはみな英語版でプレイするし、インディもみな英語でゲームを作ってしまいます。「ポルトガル語へのローカライズは、いつも早すぎるか、遅すぎる」とプロタシオ氏は話していました。
もっともカジュアルユーザーがポルトガル語版を望むのは事実です。大前提として英語の浸透率は世界38位(日本が26位)と、あまり高くありません。そのためインディゲームではファンコミュニティがオンラインでローカライズしてしまうそうです。実際『To the Moon』『Gone Home』『Papers, Please』といった名作インディーゲームには、いずれも公式のポルトガル語版が存在するといいます。
そんなブラジルのインディゲームは世界的にも注目を集めています。ブラウザベースのFPSで、開発元のRumble EntertainmentがUnityのトップ5デベロッパーにも選ばれた『Ballistic』。IGFのStudent Showcaseに選出され、テーブルトークRPGのテイストを完全再現した『Knights of Pen and Paper』、ステルスゲームで IndieCadeのファイナリストにも選出された『Qasir: Al-Wasat 』、8ビットアクション風の『Oniken』などです。中でも『Pen and Paper』では実にダウンロード率の23%がアメリカで、日本が4%、ブラジルが3.4%という数字を記録しており、海外展開の成功例だといえるでしょう。
一方で課題として「海外と国内のユーザーバランス」「ローカリゼーションの品質向上」「海外の文化的問題への対応」が上げられました。またローカリゼーションのアウトソーシングも、今後は重要になってくるとのこと。こうしたことからもブラジルのインディゲームは力強く急成長中で、数年内での大ブレイクを予感させました。
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