10年後の今回は、未来をテーマに、ヴァーチャルリアリティ、インディーゲーム、ゲーム実況をテーマとしたカンファレンスや体験コーナー、イベントが実施されました。その最後に開催されたのが今回フィーチャーする位置情報ゲーム『イングレス』に関するカンファレンス「INGRESS UNITES KYOTO」です。登壇者は、ナイアンティック・ラボの創業者であるジョン・ハンケ氏と、同UX/Visual Artistの川島優志氏、そこにゲームデザイナーでメディア芸術祭の『イングレス』展示を監修した飯田和敏氏が加わる形となりました。ちなみに飯田氏は、オキュラス・リフトコーナーに、本誌、「TGS インサイド x Game*Spark Award 2014」のインディーゲーム部門で受賞した『水没都市』も出展しておりダブルでの登場。会場を更に沸かしていました。
ちなみに、前日に公式大規模イベントであるShonin~証人~が京都で行われていたこともあり、来場者のほぼ全員が『イングレス』のプレイヤーで更にShonin~証人~参加者。しかもそのほとんどが京都外からの参加ということでファンの熱狂ぶりをあらためて確認する形となりました。今回は、カンファレンスの中でもジョン・ハンケ氏による講演内容をリポートします。
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■PCに張り付く子供を外に出したかった
まず、本作を説明するうえで、ハンケ氏は、単純にゲームと言うべきか否か迷うとし、その理由としてゲーム内で提示した目的を果たすためにはフェリーにも乗る、山にも登るなど、プレイするうえでアウトドアでの活動を数多くしなければならないからと説明しました。つまり、ビデオゲームともモバイルゲームとも違う体験を『イングレス』は提供するということです。ゲームデザインのコアがこのようになったのには明確な理由があるとハンケ氏。それは自分の子供たちに家の外に出て遊んでもらいたかったからとのこと。教育目的でPCを買い与えた途端、ずっとコンピューターに張り付く我が子を見て悲しくなったというのです。
したがって、現行の携帯電話とスマートウォッチといった未来のウェアブルデバイスを活用してなぜ、家族みんながアウトドアを楽しめるエンターテインメントがないのだろうと考えたのが開発のきっかけとなったとのこと。そこで、ジョン・ハンケ氏のチームが開発してきた『Google Earth』及び『Google マップ』をベースに、世界全体を1つのボードゲームへと変換することにしたのです。机の上のボードゲームで遊ぶように、世界を舞台にそこに住む人々を使ってゲームをプレイするというコンセプトです。
ゲームをデザインするにうえで最重要項目として考えたのが「どこを遊びのポイントにするか」という点。大手コーヒーショップのように世界中に拠点のある商業施設を選ぶことも出来ましたが、歴史的並びに文化的に意義深い場所をピックアップしたほうがずっと面白いゲームになるはずと思ったとハンケ氏。ここでハンケ氏は、歴史の効果的な学習方法について持論を展開しました。それは、意外性であるとのこと。無理に学ぼうとするのではなく、ある場所にいって、不意にその場所に歴史的意義があることを知るほうがエンターテインメントとして面白く、且つ学習効果もあるというのです。これに関連し、京都市長との会見内容について振り返りました。市長は京都の歴史をゲームの中に取り込むというアイデアに大変喜んでいたとのこと。またShonin~証人~のアフターパーティのスピーチの際に市長が「京都は『イングレス』のために千数百年待っていた。そのために歴史都市を築いてきた」と言われたことを改めて思い出したとし、観客の笑いを誘っていました。
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ジョン・ハンケ氏 |
■登録者数は全世界で1000万人。しかしそれ以上の興奮がコミュニティから生まれた