「BRASS EXCEED TOKYO」は、関東近郊で活躍する演奏家を中心に結成された吹奏楽団です。交響組曲『ファイナルファンタジーV』、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』、『風のクロノア』、『クロノ・クロス』といったゲーム音楽が、津堅直弘氏の指揮のもと、吹奏楽の力強い響きで演奏されました。
■出演者(敬称略)
一之瀬剛、景山将太(ゲストMC)、津堅直弘(指揮)、BRASS EXCEED TOKYO(吹奏楽演奏)、コーラス・オブ・エクシード、ピコピコーラス(合唱)、吉田純也(MC)
一部にまず演奏されたのは『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』より、「タイトルデモ ~ホウエン地方の旅立ち~」「タイトルデモ2」「タイトル ~メインテーマ~」です。元気あふれる、勇壮で力強い演奏が響きます。続いての「戦闘! 野生ポケモン」「戦闘! ジムリーダー」は、アップテンポで疾走感のある、金管の勇ましい音色をメインにした演奏でした。
次に演奏されたのは、同作のフィールドメドレーです。「ミシロタウン」「カイナシティ」「ハルカ」「120番道路」「海の科学博物館」「ルネシティ」の6曲が演奏されます。木管のやさしい音色、力強い金管の音色、さまざまな表情が楽しめました。演奏途中にはサックス奏者の方が起立してのソロ演奏が披露されたのですが、演奏を終えた後に、観客から拍手が贈られたのがとても温かかったです。
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(左から)吉田純也氏、景山将太氏、一之瀬剛氏
ここで司会の吉田純也氏に招かれ、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』の作曲を手掛けた一之瀬剛氏と景山将太氏が登場します。吉田氏から「ここまでの演奏はいかがですか?」と問われた一之瀬氏は、「超感動しました! 12年前に僕がゲームボーイアドバンスでオリジナル版の音楽を作っていた時には、まさかこういう生演奏で聴ける日が来るとは思っていませんでしたから」と嬉しそうな表情で話します。景山氏も、「僕もすごく感動しました。すごく大人っぽくなってて、気品があって。やっぱり生演奏って素晴らしいなと思います」と喜びを見せます。
また、吉田氏から作曲時のエピソードを尋ねられた一之瀬氏は、「『ポケモン』はもともとゲームボーイから始まりましたけど、ゲームボーイは3音とノイズ1音しか使えなかったんですよね。でもゲームボーイアドバンスになって、PSGというゲームボーイの音のほかに、PCMというちょっとだけリアルな音を5音混ぜられるようになったんです。その環境でいかに『ポケモン』らしくするかというところが難しかったですね」と語ります。また、「当時は、ゲームの中でよく鳴ればいいと思っていたので、生演奏になることなんて全く考えていなかったんです。今回編曲を担当していただいた渡辺将也さんからも難しい!って言われて(笑)。苦労されたと思いますけど、本当に素敵な編曲にしていただいて、嬉しく思っています」と話しました。
また、次に演奏される「天翔ける幻」「天翔ける夢」について景山氏は次のように語ります。
「この楽曲はオリジナル版の『ルビー・サファイア』には入っていなくて、『オメガルビー・アルファサファイア』のために書き下ろした新曲です。ポケモンに乗って大空を飛びたい!と誰しもが思っていた夢がついにこの作品で叶ったわけなんですけど、僕自身、開発中に初めてそれを見た時にすごく興奮したんですよ。その時の気持ちを素直に音楽にしました」(景山氏)
そして披露された「天翔ける幻」の演奏は、木管をメインにしたゆったり雄大な演奏が響きます。続いて「天翔ける夢」はアップテンポな金管が高らかに鳴り響き、まさにポケモンに乗って元気良く空を飛んでいる様子が目に浮かぶような疾走感が素晴らしい演奏でした。
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続いて披露されたのは、『風のクロノア door to phantomile』メドレーです。この楽曲は、2011年に開催された前回の4starオーケストラからの再演となります。まずはピアノと木管をメインにしっとり奏でられる「I'M ON YOUR SIDE」。続いて、ステージ1-1 風の村ブリーガルの楽曲「THE WINDMILL SONG」が、木管のリズミカルな演奏と、鳴り響くカスタネットと太鼓のハーモニーで、かわいらしく、かつ元気いっぱいに響きます。ロンゴランゴ戦の楽曲「THE RONGO LANGO」が、打ち鳴らされるドラムと金管でアップテンポに演奏され、「GRANPA'S CHAIR」では木管のやさしく美しい音色が響きわたります。続く「WEEPING KARAL」ではカッ、カッ、と一定のテンポで入るドラムの音と木管のハーモニー。間髪を入れずに始まる「BALADIUM'S DRIVE」は不穏かつ重厚なティンパニが鳴り響き、金管が一斉に鳴り響き大迫力の演奏が繰り広げられ、ラストは、木管とピアノでゆったりやさしく美しい「RESURRECTION」で締めくくられます。全体を通して、ファンタジックで爽やかな『クロノア』の世界が、吹奏楽の巧みな演奏で存分に表現されていました。
次はゲーム音楽合唱団「ピコピコーラス」および、コーラス・オブ・エクシードによって構成されたメンバーによるコーラス隊が登場しての『クロノ・クロス』メドレーです。演奏前には吉田氏が「はじまりは何だったのだろう? 運命の歯車は、いつまわりだしたのか……」というオープニングムービー冒頭の詩の朗読を行い、雰囲気を盛り上げます。
まず演奏されたのは「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」です。コーラスによる美しいイントロから、やさしく響くフルートとギターの演奏を経て、パーカッションや金管などの他の楽器が入り、盛り上がっていきます。演奏は途中で「神の庭」に変わり、女声コーラスで神秘的かつ美しく歌いあげられた後、カスタネットの軽快な音色と勇壮な金管が印象的な「テルミナ アナザー」、木管とコーラスでゆったり落ちついた「次元の狭間」と続きます。「MAGICAL DREAMERS ~風と星と波と~」は、原曲通りエレキギターをメインにしながらも、金管ら他の楽器も入って、厚みと迫力のある演奏が繰り広げられます。続いての「時のみる夢」は、流麗な木琴と金管、ドラムが重なり、心地いい疾走感のあるハーモニーが響きます。最後は、流れるように「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」のラスト部分につながり、金管、コーラスらすべての楽器が重なり盛り上がって演奏が締めくくられます。観客からは大きな拍手が贈られました。
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休憩を挟み、第二部に演奏されたのは、交響組曲『ファイナルファンタジーV』です。吉田氏によると、このプログラムは、BRASS EXCEED TOKYO公演の「吹奏楽が奏でるゲーム音楽」シリーズで最も人気が高かったという『ファイナルファンタジーV』メドレーに更にアレンジを加え、新たに全四楽章からなる交響組曲として生まれ変わったものとのことです。
第一楽章の最初は「オープニング」。美しいコーラスと、華麗なフルートの音色で物語は始まります。一転してピアノが重苦しく響きわたり、不穏な雰囲気に。だんだんと演奏が盛り上がった後、金管とシンバルなどが大音響で鳴り響き、クリスタルが砕け散ってしまったことを暗示します。続く「ファイナルファンタジーV メインテーマ」は、軽快に響く木管とドラムの音色をメインに、爽やかに奏でられます。穏やかにゆったりと奏でられる「街のテーマ」、コーラスが入って神秘さをただよわせる「ダンジョン」と続いて、最後は「バトル1」が勇ましい金管をメインに響きました。
第二楽章の始まりは、船の墓場の楽曲「呪いの地」が重苦しい金管とドラムで響きます。間髪を入れずにつながる「ハーヴェスト」は、軽快なハンドクラップも入ってにぎやかに演奏されました。妖しく不穏な木管の「幻惑されて」の後は、ボス戦の楽曲「バトル2」が壮大な金管とドラムをメインに、大迫力の演奏で響きます。華やかなファンファーレから始まる「王家の宮殿」は、金管が非常にマッチしていて、高貴かつ気品にあふれた演奏を堪能できました。
第三楽章の始まりは「暁の戦士」です。金管とコーラスをメインに、戦いに挑む戦士たちを鼓舞するかのような、勇壮な演奏が披露されます。続いては「はるかなる故郷」が木管メインで響き、途中からルルル……とコーラスが入って盛り上がった後、間髪を入れずに次の楽曲「思い出のオルゴール」に。この楽曲は、最初は鉄琴のみで演奏され、オルゴールのイメージにぴったりの繊細な音色が会場にやさしく響きわたります。続いて木管とコーラス、さらにシャンシャンという鈴も入ってワルツ調になったかと思えば、最後はまた鉄琴のソロで締めくくられました。『FFV』の主人公・バッツの思い出のシーンがまざまざと目に浮かぶような、感動的な演奏でした。
第四楽章の演奏前には、吉田氏から『FFV』のラストダンジョン・次元の狭間でのシーンについて解説された後、ギルガメッシュがクルル、ファリス、レナ、バッツに向けて言った名ゼリフを吉田氏がすべて披露し、場を盛り上げます。特に最後のバッツに向けてのセリフは、「バーーーーッツ!!!」と絶叫しての熱演のあと、「お前とは一度、1対1で勝負したかったぜ……!」と指揮者の津堅氏のほうを向きながら言い、会場からは笑いが巻き起こります。
そして始まる第四楽章。まず「光を求めて」の勇ましい行進曲風の演奏に続いて、「ビッグブリッヂの死闘」はイントロのすさまじいマリンバ早弾きから、力強い金管が鳴り響きます。「決戦」では荘厳なコーラスが入って演奏に迫力が増し、打ち鳴らされるティンパニとドラムが緊張感をあおります。ラストバトル「最後の闘い」はアップテンポかつ大音響が響きわたり、手に汗にぎる死闘のような壮絶な演奏が繰り広げられます。演奏が落ち着いた後は、「親愛なる友へ」が、ピアノソリストの安田結衣子氏によるソロ演奏でしっとり美しく奏でられます。最後の「エンドタイトル」が金管をメインに元気よく響き、壮大に締めくくられると、観客からは大きな拍手が送られました。
アンコールには「ファイナルファンタジー」が、安田氏の情感あふれる美しいピアノソロで披露されます。さらに奏者全体で『FFVI』の「蘇る緑」バージョンによる「ファイナルファンタジー」が演奏され、改めてフィナーレを迎えると、会場は再度割れんばかりの大きな拍手に包まれ、公演は幕を閉じました。
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(左から)吉田純也氏、コンサートマスター 福井健太氏、ピアノソリスト 安田結衣子氏、
指揮者 津堅直弘氏、景山将太氏、一之瀬剛氏
「BRASS EXCEED TOKYO in 4star2015」では、吹奏楽の力強い演奏を存分に堪能できました。津堅氏の指揮のもと、やさしく繊細に奏でられる木管楽器、勇壮に力強く奏でられる金管楽器、打ち鳴らされるパーカッション、美しく響くコーラス……それぞれの楽器で織りなされるハーモニーと音の厚みは素晴らしく、非常に聴きごたえのあるものでした。機会があれば、ぜひ皆さんもBRASS EXCEED TOKYOの演奏を聴いてみてください。
また、吉田純也氏の個性あふれるMCも、『FFV』のギルガメッシュの名ゼリフを熱演するなど情熱的に盛り上げていて、コンサートのよいアクセントになっていたように感じました。
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物販コーナーで笑顔を見せる、景山氏と一之瀬氏
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景山氏と一之瀬氏のサイン会も開催されました!
(C)Yutaka NAKAMURA