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【E3 2015】『ストリートファイターV』に込められた思いとはーカプコン杉山P・綾野P E3インタビュー

15日に実施されたSCEプレスカンファレンスでも注力タイトルとして紹介された『ストリートファイターV』を担当する杉山、綾野両プロデューサーにインタビューを実施。本タイトルへの並々ならぬ熱意を語る2人はどのようなステージを見つめているのでしょうか。

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【E3 2015】『ストリートファイターV』に込められた思いとはーカプコン杉山P・綾野P E3インタビュー
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6月15日からロサンゼルスにて開催されていた世界最大級のゲームショウE3。海外メーカーが立ち並ぶなか、日本でもお馴染みのカプコンも大規模なブース出展を行っていました。



15日に実施されたSCEプレスカンファレンス「PlayStation E3 EXPERIENCE 2015」内でも注力タイトルとして紹介された『ストリートファイターV』を担当する杉山、綾野両プロデューサーにインタビューを実施。本タイトルへの並々ならぬ熱意を語る2人はどのようなステージを見つめているのでしょうか。(以下敬称略)

―――本日はお忙しいなか、インタビューのお時間を頂きありがとうございます。今年のE3はいかがでしょうか?

杉山:私は『ウルトラストリートファイターIV』から携わらせて頂いており、2013年のE3に来て以来なので2年ぶりに会場に訪れました。わりとファーストパーティよりもサードパーティのほうが力入れているなぁという印象を受けましたね。E3開催前にSCEさんとMicrosoftさんのカンファレンスにも参加させて頂いたのですが、サードパーティのサプライズ発表が多かったなと。特にSCEさんのカンファレンスには驚きました。キックスターターでの資金調達開始をあの場で行うとは…。今ではファーストパーティが牽引している部分もあったと思いますが、サードパーティやユーザーさんの声が強くなってきているのだなという印象ですね。



綾野:僕は『ストリートファイター X 鉄拳』以来なので、約3年ぶりくらいですね。今回のE3では『ストリートファイターV』の試遊も準備しています。会場に訪れているユーザーさんの反応だったり、発表後のユーザーさんの反応が非常に良くて悪い部分の指摘と言いますか、そういったものが現時点ではあまりあがってきていない状況でして…。手応えは感じているものの、何か落とし穴にハマっているのではないかと不安な部分も正直ありますね。



―――欧米のユーザーさんの反応はどうでしょうか?

綾野:『ウルトラストリートファイターIV』の時は前作から10年ぶりのタイトルということで非常に注目されていまして。ロケテストからはじめたのですが、ラグであったりその他諸々の部分については結構厳しい意見を頂いていたりしていました。

杉山:北米のユーザーさんに関しては、今までのストリートファイターはアーケード先行の部分があったりして「日本だけずるいっ!」という声は頂いていたりしました。今回の『ストリートファイターV』はCS機で全世界同時ということもあり、北米のフォーラムなどでも暖かいお言葉は頂いていますね。昨日3on3の試合をTwitchで行いまして、そちらも好評でした。さきほど綾野も言いましたが、ちょっとどこかで落し物というか忘れ物、見落としをしているような気持ちになりますね。

綾野:フリーメイソン(秘密結社)の罠にはめられているような気持ちです(笑)。ただ『ストリートファイターIV』からの積み重ねという部分ももちろんあると思います。『ウルトラストリートファイターIV』では多くのユーザーさんからも非常にご評価を頂くことができていましたので、そういったものが今回の『ストリートファイターV』にもうまく継承されているような気もします。『ストリートファイターIV』の際に、ユーザーさんから要望を頂いたものの実装できなかったものを本作に入れていたりするので、そういった点も評価されている要因かと思います。システムやビジュアルの変更点について、ユーザーさんにネガティブではなく、ポジティブに受け入れられているのはとても嬉しいですね。ただ、これからさらにブラッシュアップはしていきます。

―――プロゲーマーのみなさんの反応はどうですか?

杉山:おかげさまで非常に高いご評価を頂いております。もちろん、細かい部分でいうとまだまだチューンナップが必要です。例えば『ストリートファイターIV』までのデザインは、きちんと輪郭があって、トゥーン調だったのですが、今回からエンジンの特性上「フォトリアル」風なデザインとなっています。背景とキャラをくっきり分けた方が見やすいかもしれないといったご要望は頂いておりますが、操作感や新しいバトルシステムは「面白い!」と言って頂けています。

―――それだけ多くの方に評価を頂いてしまうと、ゲームを製作している側からすると、疑心暗鬼になってしまいそうですね。

杉山:はい…。今の段階でいろいろなご意見を頂ければ、都度修正をかけることが可能なのですが、現時点で直す部分が特にない、というのはちょっと怖いですね。もちろん、良いなら良いで嬉しいんですが…。

綾野:僕達褒められることに全く慣れていないんで(笑)。

―――新しいバトルシステムでもある3つのV(「Vスキル」「Vリバーサル」「Vトリガー」)について。前作からは大幅なシステムの変更があると思うのですが、そこに対しての既存ユーザーからの反発はある程度想定していたのでしょうか?

杉山:バックグラウンドとして、カプコン全体とてしてe-Sportsを盛り上げていこうという動きをしており、e-Sportsを盛り上げるためのひとつのツールとして『ストリートファイター』を使ってほしいな、と。『ストリートファイターIV』では、ファンの方に楽しんで頂いて、コミュニティを形成してもらって、そういった人たちが大会などにも参加しておらって…という一連の流れを作ることを目標にしていたりしましたので、その辺りはうまく作っていくことができたかと。

また『ウルトラストリートファイターIV』から『ストリートファイターV』への移行の前に「キャラの特性を追求していくとユーザーのみなさんはどのような反応をするのかな?」という形でOMEGA EDITIONを実装しました。そういった細かい調整を行っていたこともあり『ストリートファイターV』への移行も割りとすんなり受け入れられているのはないかと考えています。

―――昨年のTGS 2014でOMEGA EDITIONの発表をしていましたね。これは『ストリートファイターV』への布石だったりしたのでしょうか?

杉山:はい。そういった部分ももちろんあるのですが、今のOMEGA EDITIONは少しだけ先行入力が入るようになっていまして、そちらもおかげさまで評判が良かったりします。

綾野:先行入力が入るようになっていたりと、細かいところで微妙な調整をかけつづけてきたことで『ストリートファイターV』は新しいバトルシステムでありながら、ユーザーさんの手に馴染みやすくなっている部分はあるかもしれません。

―――ある程度初心者の方でも手に取りやすいゲームシステムになっている印象を持ちました。

杉山氏:ユーザーの若返り、という部分はやはり重要視しています。今の若い方々って、格闘ゲーム自体をあまりやったことがない人が多かったりすると思うのですが『ストリートファイター』はきっちりとしてタイミングでコマンド入力(目押し)をしないとコンボが決まらない形になっています。もちろん、練習を積み重ねればコンボも決まるようになってくるのですが、最終的にコンボが決まるのであれば目押しじゃなくてもいいよね、そこをわざわざハードルを上げる必要がないよね、という考えがチームの中でも出てきまして。OMEGA EDITIONの際に先行入力を実装しましたが、そこまでユーザーさんから批判や反対意見はもらっていなかったので、今回から実装しています。そういった意味での、操作の簡略化は全てのユーザーみなさんに楽しんで頂くために必要なんだなぁと感じています。

―――なるほど。「ストリートファイター」を触ったこと無いユーザーにとっては、嬉しいことですね。逆に「このシビアさがストリートファイターだよね」という玄人ユーザーも多いと思うのですが。

綾野氏:コンボゲーにすることだけは絶対やめよう、とチームでも決めています。ストリートファイターはやはり「差し合い」重視のタイトルという部分はブレずにいます。

杉山:チェスや囲碁と同じように、読み合いという要素だけは絶対に無くしてはいけないと考えています。またあれだけフォトリアル風なデザインですが、2D格闘ゲームとしての操作感は絶対に守っています。「硬派なコマンド入力が『ストV』だよね」と仰る方ももちろんいますが、恐らく本心では簡単に技が出るに越したことは無いと感じているかと。

―――『ウルトラストリートファイターIV』の時とはまた違った戦い方がでてきそうですね。

綾野:はい、その部分が狙いであったりもします。3つのVを取り入れたことに寄って、戦い方の幅が非情に広がり、伸びしろがあるな、と。プロゲーマーのみなさまの戦い方も大きく変わってくると思いますよ。

―――ガード時に攻撃を受けると体力が削られていく、というのも衝撃的でした。



杉山:ゲームの展開を早くしたい、という思いがありまして。ガード時に攻撃を受けると体力が減っていく、という部分もそうなのですが、ところどころにそういった仕掛けを組み込んでいます。例えば、体力ゲージにも仕掛けを施していて、どんどんゲージの太さが太くなっていきます。目の錯覚を利用して同じ攻撃を仕掛けた時の体力ゲージの減り方が違って見えてくることによって、実際に同じ攻撃を加えた時に与えるダメージとかは同じなんですが、戦いの盛り上がりポイントができるだけ早く訪れるようにしていますね。

※次ページ: 『ストV』今後のプラットフォーム展開について
《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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