



──『.hack』シリーズでは、ゲームはもちろんアニメ化や小説、漫画、劇場版など、多岐に渡ったプロジェクトとなりました。このプロジェクトは、松山さんにとってどのようなものでしょうか。
松山氏:私が代表となったサイバーコネクトツーで、最初に取り組んだプロジェクトでしたからね。これまで手がけたタイトルにはどれも思い入れがありますが、強いて挙げるとなったら、やはり『.hack』シリーズになるのかなと思います。
──初代の2作目に当たる『悪性変異』の頃からすでに、『.hack//G.U.』に向けた仕込みが行われていたそうですが、次シリーズの構想はこの頃からすでにあったのでしょうか。
松山氏:そうですね。『悪性変異』の制作中は、TVアニメ「.hack//SIGN」の放送も行われていましたが、この頃にはすでに原型がありましたね。と言っても、私ひとりで妄想してる段階ですけど(笑)。でも『侵食汚染』制作の頃には、『.hack//G.U.』の具体的な企画に関して動き始めていました。


──では、初代シリーズの制作と『.hack//G.U.』の企画が平行して行われていた時期があったんですね。
松山氏:はい。ある意味、設計が終わったらあとは作るだけですから。もちろんそれはそれで大変なんですが、(企画を立てるのとは)労力の方向性が違いますからね。ちなみに『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』を作っている時に、OVA「.hack//G.U. TRILOGY」の制作も進めていました。70分の予定で作り始めたんですが、コンテ切ったら120分になっていたのも、今ではいい思い出です(笑)。
──倍近いじゃないですか!(笑)
松山氏:さすがに120分は、お金も体力も続かないので、削りに削って93分に収めました。それでも、20分に相当する予算は足りませんでしたが(笑)。
──その足りない分は、どうされたんですか?
松山氏:ええと……頑張りました(笑)。で、「.hack//G.U. TRILOGY」を2007年に作って、翌年から『.hack//Link』などのいわゆる第三期のプロジェクトを開始していきました。
──年表にしたら見応えありそうですね。
松山氏:「.hack」とついている作品を挙げると、30を超えますからね。
平田氏:シリーズ作全てをまとめた年表って、まだないんですよね。途中までのものはあるんですが。全部揃ったら見事だと思いますよ。
──それでは、『.hack//G.U.』に関してもう少しお聞かせください。サブタイトルに関してですが、どのような想いを込めてつけられたのでしょうか。


松山氏:初代『.hack//感染拡大 Vol.1~絶対包囲 Vol.4』の「感染拡大」や「悪性変異」などのタイトルは、脚本を手がけた伊藤和典さんのセンスだったんですよ。伊藤さんは物語を作る時、8つのブロックに分けてストーリーを考えるんです。起承転結を更に細かく分けるような感じですね。そのブロックごとにテーマをつけるんですが、『.hack』の最初のブロックには「感染」、2つ目のブロックには「拡大」と書いてあったんですよ。
──おお!
松山氏:それを順番に繋げて、四字熟語みたいな形にしてみました。ただ後半のブロックはそのままだとサブタイトルっぽくなかったので、「絶対包囲」だけは後からつけましたね。で、この四文字で現す形はもちろん良かったんですが、初代と同じルールというのも面白くないかなと思ったんですよ。
『.hack//G.U.』は成長の物語でもあったので、 セカンドシーズンが始まる意味と、「The World」における事件が再び起きるということで、Vol.1は「再誕」に。そしてサブタイトルも成長させていき、Vol.2「君想フ声」で文字数を2倍に、Vol.3「歩くような速さで」では3倍にしてみました。
──なるほど、確かに倍々で伸びています。
松山氏:サブタイトルを決めた順番は「再誕」の次に、「歩くような速さで」でしたね。口語のようなタイトルが好きなんですよ(笑)。そして真ん中に当たるVol.2は、やはり目立たないといけないので、Vol.1やVol.3とは違うルールで作りたいなと考えまして。そのいびつさも『.hack』っぽいかなと。
最初は「君想う声」だったんですが、このままだとVol.3と近い感じもあったので、エッジを効かせて「君想フ声」にしました。このサブタイトルにはいくつかの意味が込められていまして、ヒロインであるアトリがハセヲを想う気持ちだったり、ハセヲが未だに志乃を追いかけている気持ちの部分だったり、あとVol.3を遊ぶと分かるんですが、「君想フ声」の正体というのは、実はオーヴァンがハセヲを想う声だったりするんですよね。
──「君想フ声」には、Vol.3に向けたメッセージも込められていたんですね。
松山氏:サブタイトルについて今まで語ったことはなかったので、このインタビューを見て「お、そうだったんだ」と思う方もいるかもしれませんね。
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