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マンガ家の種村有菜さんがキャラクター原画を手がけたことがすでに大きな話題を呼んでおり、さらにオープニング楽曲はkzさん、シナリオ脚本には都志見文太さんが参加し、豪華声優のフルボイス仕様だ。2015年6月10日にビジュアルや概要が発表されると、NHKのつぶやきビッグデータでも取り上げられるほど大きな反響を呼んだ。
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制作発表から約2ヵ月後にリリースした「アイドリッシュセブン」は、スタートから約1ヶ月経った現在も登録者数をのばしている。アプリゲームはもちろんだが、女性向けゲームの市場動向が激しくなっているなかでは、かなり好調と言っていいだろう。厳しい競争の中で、楽曲はチャートインし、メディア展開も順調に進んでいる「アイドリッシュセブン」。その誕生へのこだわりについて、バンダイナムコオンラインのプロデューサーである根岸綾香さんと、IP統括プロデューサーである下岡聡吉さんに伺った。
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「アイドリッシュセブン」が誕生する前に、男性アイドルを中心としたアプリゲームでは「アイドルマスターSideM」や「あんさんぶるスターズ!」などが立て続けにサービスを開始している。しかしプロデューサーによれば、それは“必然”であるとのことだ。
「アイドリッシュセブン」の企画スタートは約2年前に遡る。製作期間から考えれば、こうした他のゲームも企画のスタート時期は同じくらいではないかという。同じ時期に、似た環境から誕生したゲームは、ライバルというよりは“同じ市場を形成する仲間”だと思っているそうだ。
約2年前、「アイドリッシュセブン」誕生の大きなきっかけは、男性向けアイドル市場の爆発にある。さらにバンダイナムコオンラインのビジネスに女性向け作品が空白だったことであると話す。携帯市場を席巻した「IDOLM@STERシンデレラガールズ」、スマートフォン市場で大成功を収めた「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」など、男性向け2Dアイドル市場のヒットは大きくイベントや商品展開などに広がり、経済的な効果も高かった。これが男性向け二次元アイドルの先駆けとなり、多くの企業が注目し市場爆発することとなった。女性向けに同じ市場を創造していこうと考える、企業の一つがバンダイナムコオンラインであり、根岸さんや下岡さんである。
プロデューサーである根岸さんは、もともと女性向けの作品に詳しかったわけではない。むしろそれ以前は男性向け作品に関わっていた。しかし、自社のゲームを分析していた時に、人気コンテンツは多くあるが、女性向けのハイターゲット層に響くものが無いことに気づいた。
「IDOLM@STER」や「ラブライブ!」といった男性向けの女性アイドルコンテンツが広がりを見せるなか、女性向けでも同様の市場を携帯市場をメディアの中心にして新たに開拓できるのではと考えた。市場の開拓、そしてヒット作品を生み出したい、という思いが開発へつながった。
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「アイドリッシュセブン」の発表で一番インパクトが大きかったのは、やはりキャラクター原画での種村有菜さんの起用だろう。種村さんの作品の人気は、10代はもちろん30代にも広がる。さらにゲームへの関わりは今回が初めてということで、魅力的な絵の力だけでなく、想定ターゲットへのリーチ力と『初めて』というバリューを差別化のポイントに置いた。
もちろんゲームにもこだわっている。「アイドリッシュセブン」では、カードゲームとリズムアクションが一つになっている。アプリゲームの定番ではあるが、分析からカード、リズムアクションは女性ユーザーとの親和性が高いことが意識されている。大ヒットしている「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」は女性ユーザーも多く、カードなどの“コレクション”要素が受けるのは男女にあまり差はない。ゲームは難易度を高くせず、苦手な人でも普通にプレイすればシナリオの続きが読める。
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カードの収集要素があるが、ユニットに設定できるカードは5枚まで。しかしグループのメンバーは7人である。なぜ5枚なのかといえば、ユニットは“注目してほしいキャラクター”の組み合わせとのことだ。ゲーム上ではリズムアクションゲームをすることで、舞台の演出をしているという設定だ。ユニットのキャラクターは、オーロラビジョンに映して注目させているイメージ。候補生がいるのもそのため。そしてカードを育成することで、キャラクターがユーザーのプレイをサポートしてくれる。これは「キャラクターが成長すれば、主人公の演出を助けてくれるということなんです」と、下岡さんは教えてくれた。
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また「アイドリッシュセブン」の主人公は、多くのゲームと違い明確な個性を持っている。自身は舞台演出の才能があるとキャラクター設定が作りこまれている。アイドルも主人公もバックボーンがしっかりあるからこそキャラクターの物語に厚みが増す。
「一番時間がかかったのは脚本」とのこと。フルボイスで立ち絵の口も動くので「アニメみたい」という感想もあるほどの世界観を持つ。音楽にも脚本の内容は反映しており、成長を重ねていくたびに広がっていく音楽の世界も魅力となっている。
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最後に本当にライバルはいないのか?と問うと、「三次元かもしれない」との答えが下岡さんから戻ってきた。二次元と三次元では大きな壁がある。しかし近年は“2.5次元”という言葉をよく聞くようになった。今まででは三次元からのアプローチだったが、二次元側からのアプローチするのが「アイドリッシュセブン」である。そこが「三次元がライバル」とする理由だ。
さらにゲームに合わせてCDのリリースを予定、ミュージックビデオも驚きの展開を用意しているとのことだ。最後の方で下岡さんは「シナリオのとある部分で“虹”を超えてというのがあるのですが、“虹”と“二次”をかけているんですよ」とこっそり教えてくれた。それはまさに「アイドリッシュセブン」の願望であり、一つのゴールなのだろう。
記事提供元: アニメ!アニメ!