今回参加してくださったのは、本作のディレクターであるマット・ボゾン氏と、イラストレーターであるKOU氏のふたり。アメリカのゲーム開発者と日本のイラストレーターが、いったいどのように出会い、ともに作品を作ることになったのか。その邂逅をお届けします。
■対談参加者のプロフィール
●マット・ボゾン(Matto Bozon)氏
ゲーム開発会社WayForwardのディレクター。『シャンティ』シリーズなどを始めとし多数のタイトルを手がける。
●KOU氏(本名:矢部誠)
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フリーのイラストレーターで、『ロックマン ゼクス』シリーズのキャラクターデザインなどを担当。『シャンティ -海賊の呪い-』では各種イラストレーションを担当する。
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▲左がKOU氏、右がマット・ボゾン氏
──『シャンティ -海賊の呪い-』(以下、『海賊の呪い』)ではKOUさんが一部キャラクターのデザインなどを担当されていますが、おふたりはどのように出会うことになったのでしょう?
マット・ボゾン(以下、マットと表記):確か『シャンティ -リスキィ・ブーツの逆襲-』(シリーズ2作目のタイトル。以下、『リスキィ・ブーツ』)が出た後でしたか。次の作品を表現できるアーティストの方を探していた時、KOUさんのファンアートを見て「これは実にクールだ!」と思ったのがはじめですね。
お手伝いしていただくのは難しいかもしれないと思ったのですが、ゲーム開発会社のインティ・クリエイツさん(KOU氏のイラストをマネジメントしているため)を通して連絡をとっていただきました。
KOU:私のほうからすると、『シャンティ』シリーズはゲームボーイカラーで登場していた時から知っていました。
マット:おおっ、本当ですか!?
KOU:ただ、日本で扱っているお店がものすごく少なくて……。ようやく見つけたと思いきや、既に別の方が買われたということもありました。しかもそれがインティ・クリエイツの社員の方だったんですね。
マット:ワオ!
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『シャンティ -リスキィ・ブーツの逆襲-』
KOU:そんなわけで『シャンティ』のゲームはずっと遊びたいと思っていまして。その後、『リスキィ・ブーツ』が配信されてようやく遊べました。
マット:あのファンアートを描いてくださったのはその時ですか?
KOU:はい、遊び終えたあとに。
マット:あれを見て、「あっ、これだ!」と感じるものがありましたね。そのあと、『海賊の呪い』でイラストを描いていただけるという話になりワクワクしました。ただ、こちらからの指示などでプレッシャーを与えなかったか不安なのですが、大丈夫でした?
KOU:いえ、ひとりのファンとして参加させてもらうのが嬉しかったですよ!
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KOU氏による『シャンティ -海賊の呪い-』描き下ろしイラスト
マット:KOUさんにキャラクターのイラストを描いていただいたあとは、こちらからいろいろ赤ペンを入れたのですが……。本当はやりたくなかったんですよね。仕事としてどうしても直して欲しい点は仕方ないのですが、指示を出していいのかという気持ちはありました。
KOU:やはり、日本人の私が書くと絵のフォルムに日本っぽさが出てしまうというのはありましたね。それに、修正していただくことによって私の絵とマットさん本来のフォルムが混ざり、自分だけでは描けない絵ができあがったかなと思っています。おかげでとても勉強になりました。
マット:それならよかった。私からの修正で「何言ってるんだコイツ」と思われないか不安でした(笑) あと、キャラクターに関してはいろいろ決まっていないところもあったんですよ。
KOU:そうでしたか。
マット:たとえばゾンビの男性キャラがいて、「このキャラの背中についているものは、翼なのか背骨なのか?」という質問をいただきましたが、自分でもよくわからなかったり、すぐ答えられないものがありました。
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『シャンティ -海賊の呪い-』
マット:というのも、ドット絵ならではの特徴があるんですね。『リスキィ・ブーツ』の場合は、ロープで登り降りすると衣服の一部が変化したりしますし、現実的に考えるとありえない造形をしたキャラクターもいますから。シャンティの髪型やリスキー・ブーツの衣装である骸骨の目なども見方によって変化しますし、たとえるなら“ミッキーマウスの耳”みたいなものですね(例の耳をジェスチャーで表現)。
(一同笑い)
マット:そういう部分を、イラストでうまく見えるように描いていただけたのがとても良かったです。
KOU:イラストでもその時だけうまく見えるようにアレンジしたり、絵的な嘘は取り入れていますね。
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『シャンティ -海賊の呪い-』
──シリーズの主人公「シャンティ」の成り立ちや、本作のデザインについてお聞かせ願えないでしょうか?
マット:もともとシャンティは、1994年ごろに私の妻であるエリンが作り上げました。それを元に私が設定や世界観を膨らませたのですが、妻は「髪で攻撃したらいいんじゃない?」というアイデアも出してくれました。それを「奥様は魔女」の“魔女”の動作のような表現にすれば親しみやすいと思いましたし、当時妻は髪の毛が長かったのでそれも影響していますね。
『海賊の呪い』では、新しいアートスタイルが必要になりました。特に「スカイ(Sky)」という登場キャラクターがあまり目立たなかったので、何かが欲しいということでKOUさんにデザインを依頼したわけです。
KOU:「スカイ」と「ボロ(Bolo)」というキャラクターのラフスケッチとドット絵を資料としていただきましたね。それを参考にデザインを描いて送りました。
マット:今でもそのデザインのスケッチは全部持っています。やはりそういうスケッチはイラストレーターの息使いを感じるんですよね。描いた方が何を考え、どのようにイラストへ反映されていったかがわかるんです。
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楽しげに対談を行うふたり
──ほかにも、何かおふたりで一緒にプロジェクトを手がける予定はありますか?
マット:たくさんあります!(笑)
KOU:そうですね。『マイティスイッチフォース』のほうでもイラストを使っていただけたので、それ以外でもWayForwardさんのオリジナルゲームに参加できたら嬉しいですね。
マット:いい考えですね。KOUさんのイラストは大好きなのですが、ほかのプロジェクトでも一緒にやっていいのか聞くのをためらっている部分があって。というのも、OKとなるとあれもこれもとどんどんお願いしそうなんです。
KOU:言っていただければいつでもウェルカムです(笑)
マット:KOUさんと一緒に仕事をするのであれば、『シグマ スター サーガ』や『スターイクシオン』(どちらもナムコ[現:バンダイナムコエンターテインメント]から発売されたシューティングゲーム)のような、宇宙やSFを題材にした作品がいいかもしれません。そういった作品でどういう表現をしてくださるのか楽しみですね。
KOU:自分も趣味で描くくらいにロボットやSFものは好きです。何かそういう機会があったらぜひ描きたいですね。
ここで対談の質問事項は終わりとなりましたが、しかしまだまだ話し足りない様子のマット氏。フリートークとしていろいろな話題で盛り上がりを見せました。
マット:KOUさん、一番好きなゲームはなんですか?
KOU:好きなゲーム……。いっぱいありますね! うーん。
マット:では、嫌いなゲームは?(笑)
KOU:えっ!? えーと、好きだけど苦手なゲームといえばパズルですかね。
マット:『テトリス』みたいな?
KOU:ええ、好きなんですけどうまくなれなくて。
マット:じゃあ、『テトリス』でバトルを申し込んでいいですか?
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『テトリス』バトルを申し込まれた時のKOU氏
(一同笑い)
KOU:ええ~!!(笑)
マット:ところで、私が好きなゲームというと……。『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』『スーパーメトロイド』『ロックマン2』『悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲』あたりでしょうか。あとは『ストリートファイターII』なんかももちろんですし、『ロックマンX』も好きですね。
KOU:今出た日本製のゲームは僕も全部好きですね。海外のゲームなら『アサシンクリード』とか『ゴッド・オブ・ウォー』とかああいうアクションゲームが好きです。
マット:なるほど。逆に、KOUさんから私に何か質問はありますか?
KOU:私はたまたま繋がりがあって声をかけていただいた感じですが、ほかに日本のイラストレーターやデザイナーなどで気になる方などはいますか?
マット:そうですね。『ハードコア アップライジング(Hard Corps: Uprising)』のアニメ(※この作品のアニメはSTUDIO 4°Cが担当)や、アニメ制作会社で言うと「トリガー」なども好きですね。線が力強くてシャープな色使い、たとえば影を真っ黒に表現するだとか、独特なスタイルとして確立されているようなものが好みです。
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記念撮影
このほかにも、『シャンティ』シリーズの動画を見ながらキャラクターについていろいろ語ったり、仲良く記念撮影をしたりと、とにかく楽しげな雰囲気で対談は終わりを迎えました。
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『シャンティ -海賊の呪い-』は2015年11月19日発売予定で、価格は4,200円(税別)です。