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乙女ゲームの元祖といわれる、コーエーテクモゲームスの恋愛シミュレーションゲーム『アンジェリーク』。女王と9人の守護聖が宇宙を総べる世界で、主人公のアンジェリーク・リモージュは、次の女王候補に選ばれます。そして女王になるための試験として大陸を育成し、守護聖たちの信頼を得るために奔走。その過程で恋愛に発展することもありますが、好きな人と一緒にいるための「恋」か、宇宙を総べる女王となる「使命」のどちらかを選ばなくてはなりません。
今回発売となった『アンジェリーク ルトゥール』は、1994年に登場したスーパーファミコン向けソフトのリメイク作品となります。ベースとなるキャラクターやストーリーなどはオリジナルを踏襲しつつビジュアルを一新し、新キャラクターも追加。また、キャラクターを演じるキャストもほぼ当時そのままという徹底ぶりです。ちなみにこの頃のゲームには当然ボイスは付いてないので、キャストはドラマCDからのスタートとなったそうですね。オリジナルを遊んだプレイヤーには、ちょっと懐かしい要素も含まれてますよ。
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さて、本作は最近の乙女ゲームによくある「シナリオを読み進め、選択肢によって個別ルートに分岐」とか「あらかじめ攻略キャラクターを選択」といったものではありません。まして恋に落ちる予定の守護聖たちも、最初は良くてビジネスライクな反応、ヒドイ時にはろくに相手にもしてくれないというドライぶり。そこで、きっちり使命をこなしたり、好みを聞いたり、プレゼントを贈ったり、デートに誘ったりなど、コミュニケーションを図って少しずつ親密度を高めていくこととなります。
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大筋としては、1日のうち限られた行動回数の中で大陸の育成、または守護聖と交流。主人公もしくはライバルの育成が完了した時点で女王試験は終了となるので、それまでに目当ての守護聖と仲良くなりましょう。まずは目当ての本命1人だけに集中したいところですが、仲が良いほど育成にも協力的になってくれるので、できるだけ全員と仲良くしておきたいところ。親密度が低いとお誘いを断られることもあるので、めげずに何度も挑む鋼のハートも求められます!
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守護聖と交流し、親密度を高めるには大陸の育成のため力を送ってくれるようお願いする、聖殿や主人公の部屋で会話を重ねる、公園・森の湖にでかけるといった日常イベントのほか、定期的に開かれるお茶会や舞踏会、大陸への視察同行などを行う必要があります。一見楽しそうなイベントばかりですが、実際のところ油断できないものも結構あります。
例えば公園でのデートは一緒にお弁当を食べたり自然と触れ合ったり、ほのぼのとした展開の合間に「大陸の育成はどうなってる?街の数はライバルとどっちが多いか把握してる?」とか、前に守護聖とどこでデートしたのか聞かれるとか、相手と仲の良い守護聖を選ぶような選択肢とかが出るため、常日ごろから色々な情報をしっかり整理しておく必要があります。ある程度はデート中でも交流の記録から再確認できますが、できない要素もあるので下準備はしっかりと。
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また、お茶会で良い反応をもらうためのお菓子作りでも、食べてもらいたい守護聖のパーソナルデータをしっかり覚えておくのは基本。舞踏会でもロマンチックなひと時を過ごすべく、好みの香水をつける、相手の趣味に合わせた返答ができるよう日頃から話を聞いておく、大陸の収穫祭で購入するプレゼントも相手の好きそうなものをチョイスして……と、考えることは山ほどあります。
こうしたシステム的な部分は「ちょっと大変そう…」とか思うかもしれませんが、交流を重ねていくうちに守護聖の態度が少しずつ変化し、労いや親愛の言葉をかけてくれるようになる嬉しさは、手間と時間をかけるからこそ味わえるもの。ちゃんと頑張れば頑張った分だけ報われるので、その点は安心してください。
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同じ場所を訪れても親密度によって異なる反応をみせるのはもちろん、プレゼントを渡せば後日どれだけ嬉しかったのかを改めて伝えてくれたり、デートの時の話題を別のタイミングで切り出せば「あの時の話題だね」と覚えていてくれたり、きちんと成功した舞踏会の後に会えば機嫌が良かったりと、プレイヤーの行動次第であらゆるものが変わります。周回しても全く同じプレイにはなりませんし、遊ぶたびに新たな発見が生まれるのは間違いありません。大変だからこそ、守護聖との恋愛が成就した際は深く思い出に残ります。こうした部分も、20年にわたり作品が愛され続けた理由の1つでしょう。
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攻略対象となるキャラクターは、女王を支える9人の守護聖。責務をしっかりと果たしているようにみえる彼らも、内心では複雑な思いや迷いを抱えています。親密度が高まれば、やがて心の内を明かしてくれるので頑張りましょう!
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それぞれの司る力や守護聖としての在位期間、推定年齢、アンジェリークへの接し方などはキャラクターによってだいぶ違うので、誰と仲良くなりたいかしっかり見定めてくださいね。
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光の守護聖・ジュリアス(CV:速水奨)
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闇の守護聖・クラヴィス(CV:田中秀幸)
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風の守護聖・ランディ(CV:神奈延年)
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水の守護聖・リュミエール(CV:飛田展男)
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炎の守護聖・オスカー(CV:堀内賢雄)
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緑の守護聖・マルセル(CV:優希比呂)
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鋼の守護聖・ゼフェル(CV:岩田光央)
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夢の守護聖・オリヴィエ(CV:子安武人)
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地の守護聖・ルヴァ(CV:関俊彦)
また、本作では新たに謎の青年・ブライアンも攻略キャラクターに加わりました。他の守護聖とは全く違う視点となっており、オリジナルを遊んだ方にとっても興味深い展開です。それと、生活感のあるイベントが多くてちょっと意外でした。
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ブライアン(CV:逢坂良太)
新キャラクターには、ジェラールとシルヴァンという双子の兄弟も。執事として女王候補をしっかりサポートしてくれます。毎日予定を教えてくれたり、アドバイスをくれたりするほか、守護聖同士の鉢合わせなんていう修羅場も上手いこと言いくるめてくれる有能ぶり。ストーリー内にはどちらも登場するものの、プレイヤーの執事として選べるのは1人だけなのでお好みで。
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右側・ジェラール(CV:堀江瞬)、左側・シルヴァン(CV:菊池幸利)
さらに女王候補のライバルとなる存在、ロザリアも登場。大陸の育成だけでなく、守護聖の心を掴むという部分でも負けるわけにはいきません。こちらがためらう妨害もガンガン行ってきたり、デートで鉢合わせして気まずくなったりとかもありますが、なにかとアンジェリークの世話を焼いてくれます。彼女ととことん友情を深めるプレイもまた一興ですよ。
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ロザリア(CV:三石琴乃)
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スチルやイベントの回収だけでなく、トロフィーにもかなり難易度が高いものもあるので、そのやり応えはさすが元祖乙女ゲームといったところ。なかでも1周のうちにすべての守護聖と恋愛イベントを起こしたうえで女王になる、なんてものは至難の業でしょう。でも「オリジナルのプレイヤーは、これ以上の難易度を超えて来たんだよな…」と、尊敬せずにはいられませんでした。
シュミレーションゲームとしての完成度はいうまでもありませんので、一筋縄ではいかない展開をじっくり楽しみたい方におすすめです!