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――日本メディア向けの説明会も開催されましたが、改めて「GeForce GTX 1080」はどのようなものかお聞かせください。
Justin Walker氏(以下Walker): 「GeForce GTX 1080」は沢山の技術が1つになったものなのですが、Pascalアーキテクチャを組み上げるというのは非常に大きな挑戦と投資でした。10億ドルの投資と、何千人もの技術者が何年もかけたからこそ作り出すことができました。
16nm(ナノメートル)の製造プロセスにより、トランジスタの小型化による高速化と消費電力の低減を実現しています。今回使用している「GDDR5X」というメモリも、これまで最も高速だった「GDDR5」に比べて40%速いものです。加えて、技術者がこれらを調整していって初めて「GTX 1080」は生まれました。
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さらに、全く新しいSMP(Simultaeous Multi- Projection)という機能を入れています。これにより、レンダリングを様々な形のディスプレイに適応させ、負荷も軽減することができるようになっています。今までの3Dレンダリングではプロジェクションが1つの平面に対して行われていましたが、SMPを利用すると複数の平面の向きを調整できるようになります。
VRでは、ジオメトリと呼ばれる3Dの世界を構成する形状を最初に作り上げるのですが、まず左目用のものを作り上げてから右目用にそのプロセスをやり直します。SMPを使うと、1度で作ったジオメトリの画を左目と右目の両方同時に投影できるので、負荷の軽減へと繋がっています。
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VRの画というのは最終的に目の前にあるレンズを通して見ることになるのですが、ここに正しい画を表示するとレンズの特性上歪んで見えてしまうんです。そうならないように逆に画をあらかじめ歪ませてあげる必要があります。歪めた画というのは魚眼レンズを通したような感じなのですが、この画をいきなり作ることはできないので最初に大きめの画から周辺部分を圧縮したイメージを作ります。
問題は、描いている画の周辺部分がほとんど圧縮されるのでピクセルを大きく無駄にしてしまうことです。SMPを使えば1つの大きな平面をプロジェクションするのではなく、最終的な歪んだ画に合う形で平面を分割して凹面になるように配置し、それによって無駄になるピクセル数を減らすことができます。
「GTX 1080」は前世代の最高峰GPU「GTX Titan X」と比較しておよそ1.3倍の性能を持っています。それに加え、VRアプリケーションでは先ほどのSMP機能を利用することで約2倍の性能、さらに電力効率では3倍にもなるのです。
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――5月27日に世界同時発売されましたが購入者の反応はいかがでしたか。
Walker: 「GTX 1080」の反応ですが、世界中で良く受け止められています。様々な国で購入の列ができたそうで、2時間待ったという声もありました。発売が金曜日でしたので、土日には購入した方が「GTX 1080」でゲームプレイを楽しんでいただけたようです。
矢戸 知得氏(以下矢戸): 日本では秋葉原で22時の発売開始に対して18時から列ができており、20時には売り切れになっていたという話も聞いています。
――5月30日のメディア向けイベントでCEOジェンスン・ファン氏が未発表の「Tegra」をチラ見せしていましたが…
矢戸: あれは「Tegra」がどういった領域で使われているかという例として紹介したものです。自律運転を研究しているようなお客様には今年のCESで発表された「Drive PX 2」という、Pascal GPUを搭載した「Tegra」2基とディスプレイGPUが2基搭載されている非常に高性能な車載コンピューターがありますが、それ以外で自律運転を高速道をだけで利用するレベルで使用できるものとして名刺サイズの新型「Tegra」を紹介しました。こちらもPascal GPUを搭載した「Tegra」のボードですが、GPUが1つだけのSoCですので「Drive PX 2」とは異なることがわかると思います。新しくなったのはチップではなく形だけですね。これはNvidiaが発表しているモジュール型スーパーコンピューター「Jetson TX1」に搭載されているものに似ています。
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CES 2016で展示された「Drive PX 2」
――名刺サイズということですが、Shieldシリーズのようなゲームデバイスへの転用はあるのでしょうか。
矢戸: それについては、すみませんが今はお答えできません。
――本日はありがとうございました。