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2016年12月8日発売予定、PS4向けアクションアドベンチャーゲーム『龍が如く6 命の詩。』。9月15日から18日に幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2016」にて、本作のプロデューサーである横山昌義氏にインタビューを行いました。今回は、最新作についての気になる情報に加え、クリエイターとしてシリーズを通して得られたものや今後の抱負なども伺いました。
──『龍が如く』シリーズはどのように作られてきましたか?
横山氏:『龍が如く』のナンバリングシリーズは繋がっているようでそうではなく、1作目で桐生・錦山・由美という同じ孤児院で育った3人の友情を描ききったところからスタートしています。そして、『龍が如く2』からシリーズものとして、マンネリズムとの戦いになりました。作るうえで、小説でいう読み筋のような遊びの筋を大事にしています。小説は、読み筋を間違えてしまうとまったく異なる話になる。それと同じく、お話のコンセプトとは別に毎作遊びの筋を軸にシリーズを作ってきました。
──遊びの筋は、何を軸に考えられていますか?
横山氏:2以降のシリーズ作品における軸は、舞台やプレイスポットでした。舞台設定としての歓楽街、主人公を取り巻くキャラクター設定としての裏社会を大事に描いてきました。ただ、『龍が如く6 命の詩。』ではそういう考えを捨て、軸の中心を桐生と遥という2人の人生を描ききろうとしています。
──友情を軸におかれた1作目の作り方に近い感じがありますね。
横山氏:そうですね。そして、遥がいるべき場所として尾道仁涯町を選びました。今までは「この街で遊びたい、遊ばせたい」という狙いがあり、前作では5人の主人公に合わせてエンタテインメントとして面白くするために五大都市を選びました。一方、今回は桐生と遥の11年という歳月をかけた伝説の最終章として描ききるにはなにが必要かを考えてゲーム全体を作っています。
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──どうして物語を終わらせようとおもったのか、それはなぜこのタイミングだったのでしょうか?
横山氏:まず、桐生の伝説を終わらせると銘打つときに恐ろしさはありませんでした。本作は、『龍が如く』の終わりとして作っているのではありません。主人公になれそうな秋山や冴島、大吾など魅力的なキャラクターはたくさんいますので、例えば彼らを主人公にした『龍が如く』の外伝を同時に作ろうと思ったこともありました。ただ、どうするにせよ桐生と遥の物語を終わらせないと先に進めないと感じていました。人間は必ずどこかで区切りや節目を付けたくて、ダラダラとどっち付かずで結論を出さないでいるのは厳しい。そういう意味合いでの、桐生一馬伝説最終章です。
──ハイエンド向けになったことでグラフィックの技術が向上し、言葉に頼らない表情による細かな演出もできるようになったと思います。それによるドラマ作りに変化はありましたか?
横山氏:作り方に変化はありませんでした。ただ、モーションキャプチャーの現場で役者がやっている細かな演技を、細部まで拾って正しく反映されるようになりました。これまでは僕が現場にいるとき、モーションのデータとしては成り立っていても演技がだめならNGを出していた。身体の動きなので、尺が合っていればセリフを噛んでもいい。しかし、間違えたときに役者がビクッとするような動きをしているので、分かってしまうような気がするんです。それに、役者も後悔したまま次のシーンに進んでしまうので、しっかりドラマの舞台として成立させてから次に進めていました。
前作までもこのようにこだって作ってきましたが、現場だけのものだったのが技術の発展によりユーザーさんにも届けられるようになった。ゆえに手抜きをしたシーンはしっかり分かるので、作り手として気が抜けないということは正直作りながら分かっていったことでした。
──具体的にはどんなこだわりを持って作られましたか?
横山氏:モーションの動き1つ、街にある新聞紙のゴミまでしっかり作っています。たとえば、今までは新聞紙っぽく見えることが大事でした。しかし、本作では新聞としてそこにあるとこが分かるので、見出しまでしっかりと作っています。さらに今回は主観視点も採用しているので、ドン・キホーテやコンビニの中を主観視点で歩けばわかりますが、商品1つ1つをちゃんと作っています。そのため、みなさんが見ている神室町は同じ面積かもしれませんが、密度や濃さは2倍3倍じゃきかない世界になっています。ただ、ここを見て欲しいとは言いたくなくて、なんとなくリアリティを感じてもらえればうれしいですね。
──バトルで「戦わない」という選択をできるようになったのはなぜですか?
横山氏:龍が如くの三大要素は「バトル・アドベンチャー・ムービー」で、開発チームもそれぞれの班に分かれて独立した存在でした。だから、バトルが終わって暗転してアドベンチャーに戻ってくるというのはシステム的な都合。しかし、新しい道に進むためには、これを変えようと考えました。過去作品で「飯を食っていたらバトルになる」というシチュエーションをやるなら、そういうシーンを作らなければいけなかった。しかし、本作では自然発生できるようにしたかったのですべてがシームレスになっています。敵を全員倒して暗転しないので、戦わないで逃げられるということもできて然るべきだと思い実現しています。
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──アンダーグラウンドな世界に触れられるのが神室町の魅力ですが、尾道仁涯町のコンセプトはなんですか?
横山氏:『龍が如く5 夢、叶えし者』の後に、僕がずっと探していた街がありました。栄えていた妖艶な感じがありつつ、朴訥さもある。さらに、桐生をストレンジャーとして飛び込ませるという次回作の骨子はあったので、余所者が入りにくい雰囲気。もちろん、桐生が神室町で赤ん坊を抱えていても違和感はあると思いますが、神室町は誰がいてもおかしくない街なのでそういう存在が浮く街にしたかった。土着の人が生まれて死んでいく外からの流入があまりない街で、神室町が持たない自然の魅力があり、『龍が如く』っぽい妖艶と淫靡さも欲しいと。
──すべての条件を満たすには、妖艶さや淫靡さがむずかしいですね(笑)
横山氏:余所者が浮く自然がある街なら田舎にすればいいのですが、遥がいく理由にならないのでだめでした。そしていくつかある候補のうち、ジャストで見つかったのが尾道でした。実際に尾道を訪れると、営業中なのか分からないスナックがたくさんあります。東京に住んでいる人が歌舞伎町にあまり行かないように、現地の人が訪れない場所です。観光地と麓に広がる入りにくい雰囲気、それがコンパクトにまとまって共存している奇跡の街が尾道でした。
──廃れた雰囲気の表現を作るのは苦労しましたか?
横山氏:まず、今まで僕らが作ったことがない一軒家の塊だったので大変でした。尾道は歴史の古い街で、仁涯町の辺りは昔は花街でいまはスナックに姿を変えて残っている。本来なら区画整理で建て壊されてもおかしくない場所なのに、建物と建物がどんどん増築を繰り返しており、隣家同士が上層階でつながっているというのが山ほどありました。
──今までの作品では、ビルが中心でしたからね。
横山氏:坂道も初挑戦でした。過去作品では、実は戦える場所の制約が多かった。たとえば、桐生が誰かを投げたときに跳ばせる距離が決まっているため、それに合わせた道幅のところでしかバトルができませんでした。今回は、人が通れる道幅であるぐらいしか制限がありません。坂は右足と左足が異なる高さで立てるという仕組みを作ったからできましたし、キック当てられた所をちゃんと痛がることなどもできたので、複雑な街並みである尾道を容赦なく選んでいます(笑)。
──今作では敵キャラクターを投げると海に沈んだりしますよね。
横山氏:これまでも蒼天堀の川に敵を投げ落とせることはできたのですが、ヒートアクションによるカットシーンでアクションをぶった切っていました。今回は一連の流れのなかでアクションをやっていて、こうした技術の積み重ねで遊び心地が変わるのかなと思っています。
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──神室町では中国・韓国マフィアが台頭していますが、街にはどのような影響が出ていますか?
横山氏:ストーリーの冒頭で、神室町の亜細亜街で火事が起きてしまいます。街の変化としては、これをキッカケに亜細亜街の辺りが再開発で異なる街に生まれ変わっている。そこに、勢力として入り込んできたのが中国マフィアです。一方、韓国マフィアは狡猾で、街の中でどこに潜んでいるか分かりません。
──それぞれのマフィアで立ち位置がちがうということですね。
横山氏:中国マフィアはいかにもという出で立ちで、東城会と住み分けをしています。しかし、韓国マフィアは風俗産業に入ってきているのであまり表立っては分かりません。ただ、神室町で商売をやっている秋山たちはこうした状況を全部知っています。神室町は、遊びに来ている人たちには何も変わっていませんが、『龍が如く』で描く裏社会の部分は大きく変化しています。東城会も勢力図が塗り替わりつつあり、2年半という短い期間で大きく様変わりしています。そこに桐生はプチ浦島太郎状態で帰ってくるのですが……結構どうでもいいと思っています(笑)。
──東城会の跡目争いなどに巻き込まれがちだったので、そうした桐生のスタンスは新鮮ですね。
横山氏:本作は桐生と遥の人生を描ききる話なので、東城会や神室町の勢力には興味がありません。今までは誰かのためにやってきた桐生ですが、今回は本当に遥のため……すなわち自分のためですからね。遥が事故に遭い、その現場にいたハルトという赤ん坊。彼は遥の子かどうかも分からないのですが、すべてを無条件で受け入れ、父親を探しに行ってしまうのが桐生一馬という男なんです。
──遥との出会いを彷彿とさせますね。
横山氏:桐生は10年というときを超えて、また同じことをやるんですね。『龍が如く6 命の詩。』では、本編だけでなくサブストーリーやプレイスポットを含めて、男が人生で味わえる喜びを全部入れているつもりです。子育てやお世話、ときに戦い、そして女遊び。本作をプレイして、もう1つの人生を味わって欲しいという思いがあります。
──山下達郎さんを主題歌に選ばれたのはどうしてですか?
横山氏:総合監督の名越が動いて決めました。僕自身は山下さんの大ファンだったので、自分の作品に起用するとは考えたこともありませんでした。そのため、この話を聞いたときはは震えましたね。でも、本当に自分の作品でも良いのかいう複雑な気持ちもあります。当然、緊張もしますし……それぐらい好きですね。山下さんは曲も歌詞もすべてがパーフェクトな方で、トレーラーで流れた「蒼氓」という曲も、1曲であれだけ雰囲気がちがいます。世代を超えて届く彼の曲を自分のゲームで使えるなんて本当に光栄です。
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──個人的に、ポケサーファイターがとても好きだったのですが、本作でも登場するのでしょうか?
横山氏:彼は時を超えて、「クランクリエイター」に登場します。彼の時給は上がったのか気になりますよね(笑)。「クランクリエイター」では、桐生を頂点として若頭や若頭補佐などを配置した組を作っていくアナザーストーリーのような要素です。構成員はバトルやイベントで知り合いますが、それぞれに特徴があって手下を持っています。彼らをデッキで組織して、敵の組と集団で戦うリアルタイムストラテジーのようなゲームです。もちろん、桐生が育てば役職は増えていきますよ。
──『龍が如く』をプレイしていると、いつか自分の組を持ってみたいという願望はありますよね!
横山氏:そうかもしれませんね。また、ネットにアップロードしておくと、他のアップロードされた組をダウンロードして戦えるといったシステムも用意されています。
──ところで、「猫カフェ」を提案されたのは、どなただったのでしょうか?
横山氏:僕ですね(笑)。尾道は猫の街で、あちらこちらにいるのでせっかくだから使いたいなと。
──猫好きなのですか?
横山氏:僕は別に好きというわけではないのですが、名越が猫を飼っていて大好きですね。猫を捕まえるだけではつまらない。そこで、尾道で猫を捕まえて、神室町の潰れそうな猫カフェにリクルーティングするという2つの街をまたにかけるような遊びとして考えました。また、名越は猫が大好きなので、動きや毛並みなどに何度もダメ出しをしており、渾身の猫になっていると思います(笑)。
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──キャバクラのシステムを変えたのはなぜですか?
横山氏:コンパと一緒で、全体として楽しかったかどうかというのものを目指しています。従来は、選択肢の中から正しいもの選ぶ局面突破のような感じでした。本作では、流れのなかで場が楽しいかを考えながら、会話のやりとりを楽しんでもらいたいなと思っています。
──『男たちの挽歌』などの香港ノワールがお好きと伺ったのですが、『龍が如く』にも影響しているのでしょうか?
横山氏:僕が創り出すものは、この先も永遠に型があると思っています。それはいくつかの作品から形成されていて、『男たちの挽歌』以外にも『エヴァンゲリオン』などもあります。だから、脚本を書いていると「いまあの作品のあのシーンを思い浮かべているな」と思ったりしますね。
──横山さんの型は、ゲーム以外のエンタテインメントによって形成されているのですか?
横山氏:そうですね、ゲームは1個もないです(笑)。型は、何にも誰にも強制されずに好きで観ていたものから作られていると思います。クリエイティブは自分の人生のアウトプットですから。あとは、型を引き出しとして活用できるかどうかです。自分を通して濾過したものはまったく異なるクリエイティブになるので、例えば僕が宮藤官九郎さんのキャラクターを描くと冴島になり、ルパン三世を描くと秋山になります。
──1つの区切りを迎えましたが、横山さんは『龍が如く』を通じてどのようにレベルアップされましたか?
横山氏:そういうことを振り返るタイミングがなかなかなくて、結局何も変わっていないなと思ったり、10年前のインタビューを見るとこいつなんにもわかってないなと思うこともあります。劇的に自分が変わるポイントは分からなかったのですが、昨年『龍が如く 極』を作って実感できました。1作目で自分が初めて書いたシナリオを改めて読むとまるで別人で、逆にいまの僕じゃないと書けないものもある。来年の僕がどんなものを作るかは、今の僕にはまったく想像はつきません。しかし、1年単位で作品を作れるチャンスを下さったファンの方へ向けた感謝の気持ちはとてもあります。
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──横山さんが10年を重ねたように、『龍が如く』のキャラクターも年齢を重ねていますね。
横山氏:桐生も遥だけでなく、『龍が如く』自体ちゃんと歳をとらせてあげたいということは意識しています。『龍が如く6 命の詩。』では、TGSで放映したトレーラーの内容についてとても強い反応が返ってきています。ただ、それはすごく良いことで……気になっていただけてるんだなと、エンタテインメントは気にされなくなったら終わりです。だから、こうして気にしていただける人を作れたことは、今までの10年が成功で報われたと感じました。もちろん、騒いでほしいからあのような設定にしたわけではなく、人生で起こり得ることを正しく起こしたいだけです。それが彼らの人生を描ききるということかなと。それをリアルタイムで正しく描けたのは、作り手としては誇らしいと思っています。
──『龍が如く』シリーズの社会への受け入れられ方は変わってきたと感じますか?
横山氏:それはとても変わっていると感じます。キャスティングひとつとっても出ていて、こんな豪華なキャストは10年前ではとても想像できませんでした。ゲームのためにこういうことができるんだと、常に一歩先に行き続けて証明していきたいと思っています。名越が言っている、「ゲームはもっと踏み込めないのか」と「ゲームに飽きてしまった大人たちへ」というコンセプトにとても共感できたので、いまでもそれをどうしたら実現できるか考えています。
──今後挑戦したいことはありますか?
横山氏:10年を経て時代が変わってきているので、技術だけで次の時代を目指すのではなく、ゲームに限らず色んなものを見て、新しい時代にアジャストしたものを生み出さないとゲームは滅んでしまうと感じています。時代を読む力や時代を先取りする力を持って、『龍が如く』の新しい魅せ方を考えたいですね。
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──ファンの方へメッセージをお願いします。
横山氏:今回の発表で様々な反応が返ってきていていますが、どれも『龍が如く』を愛してくれているからのリアクションなので僕は肯定的に受けて止めています。ストーリーのなかではすべての人の期待どおりにはならないかもしれませんが、感動しないものを作ったつもりはありません。エンディング観てボロボロ泣いたのは、本作が初めてでした。それを含めて自信があるので、楽しみにしていただけたらと思います。
──本日はありがとうございました。