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生み出す作品のことごとくが注目を集め、アニメ化を始めとするメディアミックス展開を辿ることも多々。近年では、iOS/Androidアプリ『Fate/Grand Order』(以下、FGO)の成功にも大きく貢献した、有限会社ノーツのゲームブランド「TYPE-MOON」。
『FGO』の躍進には、開発を担当しているディライトワークスをはじめ、多くの方々の尽力も要因となっていますが、「TYPE-MOON」きっかけで始めた方も少なくありません。これまで数多くの代表作を生み出したその手腕と経験が、『FGO』で描かれる物語やキャラクターの魅力を大いに引き出し、今日の人気へと繋がりました。
ですが、その人気の高さゆえに、『FGO』を楽しんでいるものの、『Fate』シリーズや「TYPE-MOON」のことはよく知らない、という方も少なくないでしょう。商業メーカーとしてのTYPE-MOONは2003年からスタートしましたが、その前身となる同名の同人サークルは1999年に結成。すでに18年もの歩みを経ており、ここ数年で『FGO』や『Fate』を知った方の中には、TYPE-MOONの歴史よりも若い人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、TYPE-MOONの代表的な作品や動向を遡る形で紹介し、その歩みに迫りたいと思います。
◆“異例”の大ヒット作『Fate/Grand Order』
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多彩な形で展開している『Fate』シリーズに名を連ねる、スマホ向けRPGとして登場した『FGO』。焼却されようとしている人類史を守るべく、主人公はマスターとなり、マシュを始めとする「英霊」と呼ばれるサーヴァントたちと契約し、異変の起きた7つの時代の歪みを正す「グランドオーダー」の完遂を目指します。
そのグランドオーダーの節目となる第1部は、2016年末に無事幕を閉じました。その時点でのメインストーリーとイベントシナリオを合わせると、文字数はなんと200万超え。スマホ向けにリリースされる基本無料のゲームは、休み時間や電車待ちの間でも気軽に楽しめるように、1回のプレイが短くてさくさくと遊べるような設計が多くあります。しかし『FGO』は、物語を濃密に描くという方向性に梶を切り、標準的なスマホアプリとは異なる路線を進み、その結果大きなヒットを記録しています。
また『FGO』は、『Fate』シリーズという視点から見ても異質な作品とも言えます。シリーズの原点となる『Fate/stay night』をはじめ多くのシリーズ作は、「一人のマスターが一騎のサーヴァントを召喚して契約する」「マスター7名がそれぞれのサーヴァントを駆使して戦い合い、最後に残った一人が願望機である“聖杯”を手にする」という「聖杯戦争」をベースとしていますが、『FGO』はこの基本構造から大きく離れています。
未来の人類史を保証する「人理継続保障機関フィニス・カルデア」は、2016年より先の未来が観測できなくなったことを知り、その異変の原因が過去にあると特定。人理の焼却を行う存在の妨害で人類最後のマスターとなった主人公は、カルデアのサポートを受けることで複数のサーヴァントと契約し、人理焼却へと立ち向かいます。
具体的なゲームシステムで言えば、サポートを含めて最大6騎のサーヴァントを編成してターンバトルに挑む『FGO』。複数のサーヴァントを同時に駆使し、またそれぞれの長所が噛み合うような戦略を立てて戦うというのは、これまでの『Fate』シリーズのゲームにはない刺激的な切り口でした。また、『FGO』で初めて『Fate』を知った方は、過去作に触れた際、その違いに驚いたことでしょう。
スマホアプリとしても異例、『Fate』シリーズとしても異例だった『FGO』は、だからこそ唯一無二の魅力を放ち、今もユーザーを惹きつけて離しません。先日、第2部のプロローグがいよいよ配信され、2018年にはその展開も本格化することでしょう。2018年も、熱い年になりそうです。
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