ご多分に漏れず今作を遊んでいる僕は、プレイしていると圧倒されるばかりです。豊かな自然に囲まれて心癒され、時に自然に牙を向かれる日々です。このような目を見張る自然描写の中、とくに目を引かれたのは「博物館」です。
博物館は『フータ』に自分が採取した動物、化石を寄贈することで建造されます。この施設の中でも特に注目したいのは「化石展示エリア」です。島で採取した化石の展示が行われているこのエリアの特徴は、なんといっても地面に鮮やかに描かれた「進化系統樹」です。
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このような系統樹は、博物館に行ったことのある方なら一度は目にしたことがあると思います。系統樹は生物の進化を表すのに用いられ、この世界に存在するほぼ全ての生物を系統的に分類し、視覚的に分かりやすくまとめられたものです。この系統樹を詳しく見ていけば、気になっている生物がどう進化してきたのかを知ることができます。
この進化系統樹を読み解きながら、島の住人たちが生物学上では一体どのように分類されているのか見ていきたいと思います。
まずは、系統樹の把握から行います。化石展示エリアに入ってすぐに目に見えるのが共通祖先を示す大きな円です。この共通祖先は、展示内容を考えると全生物共通の祖先にあたる「原核生物ないしそれ以前の生物」をさしていると考えられます。
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ここから動物が系統分けされていきますが、住人に関係のある部分まで飛ばしていきます。
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さて、次は鳥類をみてみましょう。過去作も含め『どうぶつの森』シリーズに現れる鳥類は、ペンギン、アヒル、ダチョウ、ツル、ニワトリ、ワシ、フクロウと多岐にわたります。これら全てを紹介してはバードウォッチング入門になってしまうので、博物館で展示されている「ワシ」を紹介することにします。
ワシは、脊椎動物門脊椎動物亜門鳥網タカ目タカ科に分類されます。分類を見ると、ワシなのになぜタカ科なのかと思われるでしょう。これはタカとワシの分類が体の大きさで行われているためです。大型の物がワシ、小型をタカと分けられています。『あつ森』に出てくるタカ目の鳥類がワシなのは人間ほど大きさからなのかもしれません。
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ここからは博物館の展示順に哺乳類を紹介していきます。最初に展示されているのは「コアラ」と「カンガルー」です。「カンガルー」は哺乳綱有袋上目カンガルー目カンガルー科、「コアラ」は哺乳綱有袋上目カンガルー目コアラ科に分類されます。
分類を見て分かるように、「コアラ」と「カンガルー」は共に有袋類で近縁です。彼らの特徴としては進化の過程で胎盤を発達させるのではなく、子供を育てる袋、育児嚢を持つことにしたことです。有胎盤類の方が種族として優勢であったようで、有袋類の分布は地形的に偏ったものになりました。
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ここから先は胎盤を有する真獣類に分類され、大きく2つに分かれます。まず、最初はアフリカ獣上目です。これはアフリカ大陸で発展した動物を指し、「ゾウ」と「アリクイ」が該当します。これら2つも、それぞれ近蹄類とアフリカ食虫類に分類されるため系統樹が分かれているのがみてとれます。
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次は、北方真獣類です。この分類はローラシア大陸で進化したローラシア獣類と真主齧類に分けられます。ローラシア獣類に該当する動物は、この展示だと「ネコ」、「イヌ」、「クマ」、「キリン」、「サイ」、「ブタ」、「カバ」、「ウシ」、「シカ」が該当します。その中で「ネコ」、「イヌ」、「クマ」はネコ目に分類され食肉目とも呼ばれます。
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その横の分類は「キリン」、「サイ」、「ブタ」、「カバ」、「ウシ」、「シカ」を含む鯨偶蹄目となっており、そこから更に各種身体的特徴によって分類されています。また、鯨偶蹄目は文字通りクジラからウシまでひっくるめた分類というのが特徴的です。
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そして最後の分類が真主齧上目です。「ウサギ」、「ネズミ」、「サル」、「ヒト」が含まれるこの分類では「ウサギ」、「ネズミ」を含むグリレス大目と「サル」、「ヒト」を含む真主獣大目に分けられています。この系統分けの特徴は、未だにしっかりとした定義を得られていない部分があるほど難解です。
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さて、ざっくりと駆け足ではありましたが『あつ森』で関わる住人達の種族がどのように分類されているのかを見てきました。大容量なボリュームだと感じるのですが、恐ろしいことにこれでもまだ哺乳類の部分にしか注目していないのです。
他の化石展示に目を向ければ1時間どころか4時間はしっかりとした勉強ができるでしょう。パラサウロロフスに代表されるハドロサウルス類の化石が見つかった某県でも、ぜひ入場時間に制限など設けず知的好奇心を満たして頂きたいです。