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『ファイナルファンタジーVll リメイク』(以下、『FF7 リメイク』)は、オリジナル版の『ファイナルファンタジーVll』(以下、オリジナル版)よりも、ミッドガルのディテールが作りこまれています。それは本作までにリリースされた派生タイトルや映像作品と比べても段違いと言えるでしょう。
では『FF7 リメイク』の細やかなディテールから、どのような社会状況や文化が垣間見えるでしょうか? そこにはオリジナル版よりも生々しく、恐るべき状況が広がっているのです。
本記事には半分くらい妄想が含まれていますが、「そういう風に世界観の広がりを想像させる作りこみがある」ということでよろしくお願いします。また『FF7 リメイク』のネタバレを数多く含んでおります。特に2ページ目からはクリア後推奨の内容があります。ご注意ください。
プレートの上層部と下層のスラムからうかがえる社会状況
まずは「ミッドガルの社会状況はどのように捉えられるか?」という点についてご紹介しましょう。
オリジナル版ではクラウドやエアリスたち主人公がクローズアップされがちで、あまり社会状況については分かりませんでした。しかし『FF7 リメイク』では、名もなき人々ひとりひとりに注目することで、様々なミッドガルの姿が浮かび上がってきます。
◆神羅社員になれば富裕層というわけではない?
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アバランチが魔晄炉爆破を成功させた後、列車へ乗り込んだ際に神羅社員と出会うシーンがあります。
オリジナル版では些細だったこのシーン。しかし『FF7 リメイク』の神羅社員はわずかな登場ながらも、ミッドガルの複雑な社会状況を想像させる人物へと仕上がっています。
ミッドガルではプレートの上層部と下層部とで経済格差が圧倒的に広がっているというのが、オリジナル板での基本的な社会状況の認識でした。ということは、ミッドガルを統べる神羅の社員になれたのであれば、富裕層になれる足がかりになったのではないか? と、私は思うわけです。
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ところがアバランチのみんなと同様、電車内の神羅社員たちもプレート下層部のスラムの駅へ降りてくるではありませんか。なんと彼らもスラムに暮らしているのです。どういうことでしょうか? オリジナル版ではまだローポリゴンで漫画的だったからスルーできた描写でしたが、『FF7 リメイク』では不思議な印象が残ります。
スラムにはモンスターも生息していますし、ひどい環境であることは確か。神羅に就職したとしても、プレート下層で暮らさざるを得ないという状況がうかがえます。皆さんは一流企業に就職が決まったら、治安も環境も最悪な場所に住み続けますか? すぐさま引っ越しますよね。
彼らは「神羅魂」なんて威勢よく言っているので、ネームバリューや企業理念にほだされ、就職時にかなり低賃金な契約内容でサインしてしまったのでしょうか。でなければスラムで暮らしている理由の説明がつきませんからね。実際、社員たちは「プレート上に引っ越したい。でもこの給料じゃ無理」と言っていますし。
現実世界におけるスラム街の暮らしは、地域によりますが働いたとしても一日1,000円前後しか貰えないそうです。月給に換算すればおよそ2~3万円。そんなリアルを想像すると、神羅のような大企業に採用されたのであれば例え低賃金だとしても、舞い上がるのも無理はありません。スラムに住む他の住人よりは、きっと稼げてるでしょうからね。
とはいえ、神羅社員のように世界を支配する企業に就職しながらも、プレート下でスラム生活をしている層が存在するのか。続いて、その理由も考察していきます。
◆プレートの上層部もどうやら富裕層ではない
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プレート上層で暮らす人々は、みんなタワーマンションや高級住宅街に暮らしているような人々なのだろうなあ、とオリジナル版を遊んでいた当時は想像していました。しかし『FF7 リメイク』をプレイしたところ、残念ながらそうとは言い切れないようです。
プレート上層の環境は、オリジナル版では壱番魔晄炉、八番街、神羅ビル本社しか描かれていませんでした。『FF7 リメイク』ではそれらに加え、オープニングムービーにて街の様子が見受けられるほか、七番街のプレート上層へ向かうイベントが追加されています。
その七番街プレート上層を見ると、どうやら決して富裕層とは言えないことが発覚。神羅の社員区画住が広がっていますが、派手な暮らしがあるようには見えません。概ね中産階級の暮らしであるといえるでしょう。
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あるイベントでは住宅のひとつに入ることになります。そこではなんとベッドに横たわり、医療機器に繋がれている人がいるではありませんか。
情報を集めると、どうやら魔晄炉の作業員だったとのこと。それが勤務中の事故で寝たきりになってしまったそう。ということは、この暮らしはとんでもなく危険な仕事に従事している人間がなんとか得たものである、ということが見えてくるのです。
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さらに住宅街を見渡すと、神羅兵を募集する看板もあります。神羅カンパニーは兵士をスラム街からではなく、中産階級に属している人々から雇用しようと考えているのでしょうか。
前述の神羅社員はスラム暮らしでありながら本社で勤務しているのに対し、中産階級であるプレート上層の住人が魔晄炉作業員や神羅兵といった、危険な仕事に関わっている可能性が垣間見えるわけです。
スラムにはアバランチのような反体制思想を持つ人間がいるから、兵士や魔晄炉に関わる仕事には雇用できない。しかし、スラムから抜け出したい、成り上がりたいという野心も同様に持ち合わせているだろうから、その心の隙を突くかたちで低賃金で雇用する。
反対に、神羅の関係者として中産階級になった人間は本社に従順な可能性も高く、兵隊や魔晄炉作業員として雇用しやすい。そんな社会状況が見えてくるのではないでしょうか。
◆神羅本社にアバランチと協力していいと考える人間がいてもおかしくない
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ストーリーが進むと七番街のプレートは落とされ、中産階級~貧困層が一度に抹殺されてしまう展開となります。神羅カンパニーの公式声明ではアバランチの仕業であるとされていますが、ある程度リテラシーのある人間であれば「神羅カンパニーがプレートを落としたのでは…?」と考える可能性もあるでしょう。
クラウドたちが神羅ビルに侵入するシーンまで進めると、裏で協力してくれる社員に出会います。しかしなぜ彼は危険なテロリストに手を貸してくれるのでしょうか?
前述の通り、神羅社員の中にはスラム出身の人々もおり、貧困層の暮らしも当然知っています。そこから出世するなどしてプレート上層に引っ越せたとしても、せいぜい中産階級止まりでしょうし、状況によってはプレートを落とされた七番街のように会社の都合で切り捨てられるということも、なんとなく感じ取ってはいるでしょう。
そんな現実を目の当たりにしたのならば、暗に造反を考えている社員がひとりやふたり生まれるのも、おかしくはありません。