やたら釣れるアフリカ出身の魚
『あつまれ どうぶつの森(以下『あつ森』)』で釣りをしていると、「またコイツか…」とつい思ってしまうような頻出魚種がいくつかいますよね。
池や川のブラックバス、海のスズキあたりが筆頭格ですが、この夏秋にはこの魚もよく見かけたのでないでしょうか?
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はい。池や川で釣れまくる「ティラピア」です。
露骨にカタカナな名前にトロピカルな体色。
みなさまお察しのとおり、もともと日本にはいない海外、アフリカ大陸原産のお魚です。
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もともと、と書いたのは現在ではバッチリ日本国内で野生化してしまっているから。
養殖が簡単で味が良いため、食用目的で輸入されたのです。
味と魚体のシルエットがタイに似ていることから「イズミダイ」「チカダイ」などという商品名で売りに出されたりしたようですが、残念ながら川魚を食べる文化があまり濃くない日本ではイマイチ受け入れられず…という悲しいデビュー失敗秘話があるのです。
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『あつ森』に出てくるのは「ナイルティラピア」
ちなみに、一口に「ティラピア」と言っても複数の種が含まれています。
体色や体型から見るに、『あつ森』に登場するティラピアはナイル川水系原産の「ナイルティラピア」だと考えられます。
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低水温に弱いナイルティラピアは日本だと沖縄や高知などの温暖な地域で野生化しているほか、別府のような温泉地でも見られます。
食材として受け入れられていれば、温泉宿の新名物となっていたでしょうに…。
恐ろしいほど頑丈!
なお低水温に弱い反面、高水温には異常なほど強く一定の期間であれば40度近い、まさしく「お湯」の中でも生存できます。
さらに酸欠や水質の汚染にも強い耐性を持っており、他の魚たちが住めないようなドブにもしたたかに棲みつくのです。
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さらにさらに!ティラピア類はご先祖様が海水魚であることもあって、塩分への耐性まで保持しています。
それが「ちょっとした塩水でも平気~」とかいった次元ではなく、ナイルティラピアではなんと「海水の二倍の濃度」の塩水でも生存できるのです。……ふつうの海水魚より海水に強いとか…。
この特性ゆえ、いったん河川に侵入すると、海を経友して分布を広げることも可能。オーストラリアの一部地域では海に棲みつくナイルティラピアまでいるとか…。
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もはやちょっと怖いんですけど。なんなんでしょうね?このタフネス…。
この頑強さがそのまま養殖のしやすさにも繋がっているわけですが…。
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強さの理由は原産地であるナイル川水系の過酷さにあります。かの地では乾季に池や湿地の水が煮詰められて淀み、ほぼ酸欠状態になるのですから、生半可な生命力では淘汰されてしまうでしょう。
そんな環境であらゆるバイタリティーのパラメータを高めまくる進化を遂げたティラピアからしてみれば、比較的安定した南日本の川など楽園同然に違いありません。
実際に沖縄の川で釣りをしてみると、『あつ森』の比でないほどたくさんのティラピアが釣れまくります。入れ食いです。
そうそう。
さきほどティラピアは美味しいと書きましたが、一つ注意点があります。それは野生の個体を食べる場合は漁獲する場所を選ぶこと。
とんでもないドブや汚水溜まりでもバンバン釣れますが、そういった水域で採れたティラピアはやはり臭くて食べられたものではありません。
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もし試食する場合は、できるだけ清浄な水辺で採れたものでトライしましょう。さらに10日ほど清水で泥抜きしてからならなお良し!
あ、ちゃんと火も通しましょうね~!
そうそう。そういえば『あつ森』のティラピアは北半球では10月いっぱいでひとまず年内の出現期間が終了するそうです。どうぞ釣り逃しなく!
『あつ森』博物誌バックナンバー
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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